白川静のレビュー一覧

  • [白川静の絵本] 風の道

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    白川静の世界を言葉と視覚で理解できる、まさに大人のための絵本といえる素晴らしい作品。漢字の成り立ちから人類の歩みが紐解かれていく白川静の作品は、とてもワクワクすると同時に、とてもドキドキする。自分の生涯の本棚に残したいアートとしても価値のある本です。

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    2026年08月27日
  • 漢字 生い立ちとその背景

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    昨年から外国人や日本・ヨーロッパミックスの子供たちに日本語を教え始めた。漢字が苦手という14歳の子に漢字を教えるための準備運動のつもりで購入した白川静先生の本だが、恥ずかしながら、日本語を教える機会がなければ手にとって読むことはなかったと思う。漢字はけっこう面白いんだなと思い始めたのが漢和辞典を引っ張り出して読むようになってから。漢字を学ぶのも教えるのも、反復よりほかに方法がないのでは・・・と思っていたが、なんと狭量で浅はかな考えだったのか。私が受けてきた国語教育、適当に参加して適当にやってきたのは間違いだった!と40代半ばをすぎで気がついた。というか、漢字を学ぶ楽しみがあったはずの小学生から中学生までの学習時間を惜しいと思った。

    右と左が、祝詞を入れる箱と呪術に使う道具からきているとか、「白」が髑髏の白だったとか、目と耳は神を見て、聞くという大切な器官だったとか。私の名前は聡子だけど、素晴らしい字じゃないかと感動した。漢字が古代の人々の生き方、神との向き合い方を表しているなんて、中学生の私だったら絶対夢中になったと思う。もしかして国語便覧には書いていたんだろうか。見逃していたのか。
    漢字が語りかけてくる。その声を聞くために、「彼らの正しい形を知らなければならない」。だから、甲骨文や金文を仔細に調べ、整理し、体系的に組織していく。そこに一定の法則を見つけ出すことで、そこから生まれてきた字をさらに知ることができる。また、当時の文化や風俗習慣がその文字一つ一つに現れ出ていくる。「文字は、その成立の当初においては、神とともにあり、神と交通するためのものであった」という言葉には感動した。文字は人間の理性を表現するためではなく、神の言葉を記すために生み出された。人間の王は神のことばの代弁者として、その権威を記述できる文字を通じて確立した。歴史の始まりがそこにある。漢字は当時の文化、歴史自体が文字に現れているため、文化財ともいえるのである。

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    2023年04月13日
  • 孔子伝

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    ここ数年、「学習する組織」との関連性みたいなところから、「論語」関連の本をときどき読んでいるのだが、これは「孔子」像をかなり根源的なところから転倒してしまうすごい本。

    「孟子」をよんだときの印象で、この人(孟子)は、なんだか、政治経済の政策コンサル会社のシニア・パートナーみたいだなというのがあった。

    考えてみれば、この時代の中国は、たくさんの国があって、勢力均衡したり、戦争したり、クーデターがあったりしていたわけで、そういうなかでいろいろなコンサルが諸国を回って営業活動、政策提言活動をしていたというのもおかしなことではない。

    そして、孔子もそういうコンサルの一人であった。

    だが、コンサルといっても、政治にかかわる以上、命がけである。国の事情が変われば、亡命生活を余儀なくされる。また、政権側に採用されても政変で殺されたりする。(実際、孔子の弟子の子路は殺されて、塩漬けにされている)

    とくに「孔子」は、当時の反体制の革命家的コンサルなので、危険がいっぱい。

    そういう厳しい亡命生活のなかで、そして、結局のところ現実の政治にはたいした影響を与えることができないという厳しい状況のなかで深まっていく思想があって、それを一緒に学んでいく弟子たちがいる。

    そして、孔子の死後は、その弟子たちは分裂して、実質的に孔子の思想は分からなくなってしまう。さらに、時代が変わって、中国の体制が安定したときに儒学を統治のための思想として政治利用することになって、ますます、なにがなんだか分からなってしまう。

    白川静は、そこをテキストを選り分けていくことで、孔子の思想のコア部分を掘り当てていく。

    孔子は、超越的なものに頼らない、人間的合理性を重視した人というイメージがあるのではないかと思うが、白川さんによると、孔子は巫女の庶生子で、呪術的な要素があるとのこと。と言われれば、孔子が礼儀とか、儀式とかにうるさいことが、すんなりと理解できてくる。

    そして、亡命生活の末に孔子が到達した境地は、「荘子」に近いところにあるという。さすがにそこまではと思いつつ、そんなにおかしくもないような。。。。

    もちろん、この孔子像を評価することはわたしにはできないし、この1972年にでた白川説がその後どういうふうな評価になっているかもわからない。そもそも、「論語」の内容を理解していることが前提になっている本なので、内容自体、ちゃんと理解できているかもあやしい。

    でも、この孔子には、とてつもないリアリティを感じる。

    そして、聖人ではない、血の通った人間として、悩みながら、失意のなかでも前に進み続ける人として、尊敬できる人だな〜。

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    2021年01月31日
  • 孔子伝

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    素晴らしい研究者がいらっしゃったんだな。
    孔子がどのように生きたのか、彼の思想がどのように受け継がれていったのかについて述べられている。ソクラテスやイエスを比較の対象にしているところもあり、中国学者ながら西洋の思想にも詳しいよう。郭沫若という中国人もこの本を通して初めて知った。
    巫祝集団から儒教が、百工集団から墨家が生まれたと考えられ、思想は社会的階層のイデオロギーとして生まれた。批判は自他を区別することで、批判と再批判を通じて諸子百家お呼ばれる多彩な思想家の活動が展開された。荘子は孔子の思想的系譜の正統な継承者であり、ノモス的な世界の否定を通じてイデアを回復した。儒教のノモス化は孟子が促進し、荀子に完全されてしまった。孔子の精神がちゃんと反映されている論語の形成について考察する。

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    2020年05月22日
  • [白川静の絵本]サイのものがたり

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    ネタバレ

    とてもよかった。太古の昔を感じる、長い時の流れを感じる絵本。
    ことば(漢字)の解説なのに、「こう生きるべし」と言われているような厳かな気持ちになる。廿=口 の部首や一部をもつ漢字を取り上げて、その成り立ちを紐解きながら、おもに、古代の人たちの考えを解説。

    この本は、白川静の文章から解説を抜き出し、絵をそえて、再構成したという。白川静の漢字の世界に魅せられた、という作者の根底の想いだけあって、その世界観にぞくぞくしながら読める。始まりはシンプルで、どんどん複雑になっていく、その構成が見事。

    「絵本」という媒体で再構成されていて、絵のイメージ(白と黒の、影画のようなコントラスト)が、その漢字にこめられた人々の営みの理解の助けになる。文章は少ないが、行間をたっぷりとっている効果が十分に出ていて、じっくりと読みたい、考えさせられる本。

    また、解説の文章では、その説明として出てくる漢字と、見た目的な表示としてでてくる漢字の、二種類があって、幾通りにも文章が読めるのがおもしろい。
    そのこともあって、シンプルだけど時間をかけたい本。紙の中に、コトバの中に閉じ込められた時間に思いをはせたくなる。

    古の祈りや祭りの精神、漢字の意味、中国の思想などに興味がある人におすすめ。

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    2020年03月30日
  • [白川静の絵本]サイのものがたり

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    白川静さんの絵本

    「サイのものがたり」

    おすすめです。漢字の理解、楽しさを知ってもらうなら、この本から入るのがいいかと。 「もし文字の背後に、文字以前の、はかり知れぬ悠遠なことばの時代の記憶が残されているとすれば、漢字の体系は、この文化圏における人類の歩みを貫いて、その歴史を如実に示す地層の断面であるといえよう。またその意味で漢字は、人類にとっての貴重な文化遺産であるということができる」

    漢字の成り立ちや意味付けは、専門家によってかなり異なるのだが、白川静さんの「口」は、ものすごく納得がいく。暦を掲示したり、熟語を紹介したり、、白川さんの本を手にしたからといって、漢字の指導は成り立ちだ!と傾きがちですが、多様な切り口が必要で、そうでないと、こどもは、飽きてしまう。だって、漢字は、記号じゃなくて、文化だからさ。そんなとき、この絵本を少しでも紹介すれば、かなり効果はあると思う。

    梅原猛さん、市原悦子さん、日本語の、大和言葉について、語れる人が旅立ってしまった。ことばは時空をこえる。白川さんの文には、まさにそう感じる刹那がある。ぼくも、紹介されたときは、気づかなかったけど、この本は、すごい。ぜひ、手にとって読んでほしい。金子さんの絵と合わさると、また格別なのだ。すてきな本を手にとることができたと、感謝しまくりだろう。ありがとう!!

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    2019年08月28日
  • [白川静の絵本]サイのものがたり

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    2018年、いちばん心に留まってます。
    晴天の霹靂でした。
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    わたしたちの遠い祖先の「祈り」のものがたり。
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    この本は「文字がまだ無かった時代のはかり知れぬ悠遠なことばの時代の記憶」を漢字から体系的に解き明かしていった、白川静先生の学問に金子都美絵さんの絵が加えられたアンソロジーです。
    ・
    漢字のかたちの中には、それぞれとても多くの物語が籠っています。
    できたのは3,000年以上も昔、中国の殷の時代。森羅万象に霊が宿り、自然が恵みでも、畏れでもあり、人間は自分たちの願いを文字に込めました。
    ・
    「口(くち)」という漢字は、祝詞を入れる器の形がもとになっていて、「サイ」と読みます。
    ・
    「告」「右」「問」「聖」など、どれもこれも「おおおおー!」と納得いく成り立ち。
    むっちゃシビれる。
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    親子でお気に入り。
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    2019年01月14日
  • [白川静の絵本]サイのものがたり

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    「サイ」とは、神への祈りの言葉を入れる器のことで、この文字をテーマに美しい絵でその意味を表現しています。文字の意味を絵で伝える。この本は絵本のカテゴリーに分類されていますが、むしろ学習書、大人のアート本とも言えそうです。漢字について、いろいろ勉強になりました。

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    2018年10月10日
  • 孔子伝

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    漢字の生い立ちに立ち返って論語を読むと、新しい世界が見えてきます。白川静先生のこの本は、論語だけでなく、論語とそれに連なる経書、曽子、孟子、荀子、荘子と儒家の成立過程もよくわかります。これまで、四書五経といえば、論語、大学、中庸、孟子と薄っぺらい知識でしたが、この本を読んで、それらの関係がよくわかりました。孔子の言葉と、論語とは別物であると。のちになって孔子学派の子弟たちによって、かなり恣意的に創作された部分があることもよくわかりました。それでも孔子は偉大な人格であったと白川静先生は述べておられます。大変におすすめです。ここで書ききれなかった話が、「文字遊心」に書かれているということなので、次に読むべきは「文字遊心」です。最初に「狂」について述べられてます。

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    2015年07月26日
  • 孔子伝

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    ネタバレ

    『論語』の名を知らない人はまずいないと思いますが、きちんと全
    文を読んだことがある人になると、それほど多くはないかもしれま
    せんね。かくいう私もその一人です。どうにも堅苦しい印象があっ
    て、どうしても読む気にならなかったのです。

    しかし、そんな印象を一変させてくれる一冊が、今週おすすめする
    白川静著『孔子伝』です。白川氏は2年前に96歳の生涯を閉じた、日
    本が世界に誇る漢字・東洋学者です。

    私がこの大学者の仕事の一端に触れたのは、娘の命名のために漢字
    の起原を調べようと『常用字解』『人名字解』を買ったことがきっ
    かけでした。この2冊の字典は、大袈裟なようですが、それまでの世
    界観を覆すほどの衝撃をもたらすものでした。漢字がこんなに呪術
    と結びついたものだとは全く知りませんでしたし、白川氏の解説を
    読んでいると、文字にこめられた呪能が、古代の人々の世界観と共
    に立ち上がってくるのです。それは、めくるめくような体験でした。

    こんな仕事を一人でやり遂げた白川静という人間はただ者ではない、
    と思いました。それから彼の著作を読み始めたのです。

    『孔子伝』は、漢字に関する著作の多い白川氏の著作の中で、唯一
    の評伝です。これがまた従来の孔子像に挑戦する、大胆な仮説を提
    示している書物なのです。

    「孔子は巫女の私生児であった」というところから白川氏は孔子像
    の転覆をはかります。孔子の前半生は暗くけわしいもので、世に認
    められたのは40歳をかなり過ぎてから。しかし、社会的な成功とは
    程遠く、死の直前まで亡命と流浪を繰り返す日々であったと言うの
    です。

    「四十にして惑わず」どころではないです。実際の孔子の人生は、
    彷徨の人生だったのです。しかし、現実の世界では敗北者であり、
    失敗者であったからこそ、逆に孔子の思想は輝きを増したのだ、と
    白川氏は論じます。

    実は白川氏自身が遅咲きの花でした。岩波新書で『漢字』を書いて
    一般に知られるようになるのが60歳のことです。88歳で文化功労者、
    94歳で文化勲章を受賞されますが、それでも、常に異端者と見られ、
    学界では少数派であったようです。そんな世俗のことはどこふく風
    と、ただひたすら文字の世界と向き合い続けた96年の人生は、現実
    に敗れながらも自らの理想を追い続けた孔子の74年の人生とどこか
    重なるものがあります。

    『孔子伝』が世に出たのは1972年のこと。学生運動が教育の現場を
    荒廃させ、中国では文化大革命の嵐が吹き荒れていた頃です。そう
    いう世情の中で、白川氏は孔子について書いてみようと思ったのだ
    そうです。「多分孔子も、このような時代に生きたのであろう。哲
    人孔子は、どのようにしてその社会に生きたのか。孔子はその力と
    どのように戦ったのか。そして現実に敗れながら、どうして百世の
    師となることができたのであろうか。私はそのような孔子を、かき
    たいと思った。社会と思想と、その人の生きざまと、その姿を具体
    的にとらえたいと思った」と当時の心境を振り返っています。

    『孔子伝』は、そういう意味で、極めて個人的な著作だと思うので
    す。孔子の生き様を通じて、我が身を振り返る。そういう白川氏の
    思いが随所に溢れているように思えます。それがまた孔子の人間像
    に精彩を与え、この書物を魅力的にしているのです。

    自分の人生を生きるとはどういうことか。そういうことを深く考え
    させてくれる好著です。是非、読んでみて下さい。

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    ▽ 心に残った文章達(本書からの引用文)

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    孔子は、たしかに理想主義者であった。理想主義者であるゆえに、
    孔子はしばしば挫折して成功することはなかった。世にでてからの
    孔子は、ほとんど挫折と漂白のうちにすごしている。

    哲人は、新しい思想の宣布者ではない。むしろ伝統のもつ意味を追
    求し、発見し、そこから今このようにあることの根拠を問う。探求
    者であり、求道者であることをその本質とする。

    孔子は、巫女の庶生子であった。いわば神の申し子である。父の名
    も知られず、その墓所など知る由もない。

    孔子がようやく世上に姿をあらわすのは、おそらく四十もかなり過
    ぎてからであろう。その頃には多少の弟子ももっていたようである。
    (中略)このような孔子が、一躍にして世人の注目をあびるように
    なるのは、魯に内乱的な状態が発生した時である。(中略)孔子も
    行動を起こそうとする。しかしそれはたちまち挫折するのである。
    しかし、その挫折は孔子を救ったと私は考える。政治的な成功は、
    一般に堕落をもたらす以外の何ものでもない。

    孔子がいくらか得意であった時期は、ものの三年もつづかなかった。
    孔子はなぜ失敗したのであろう。それは孔子が、革命者ではあって
    も、革命家ではなかったからである。

    事実は必ずしも真実ではない。事実の意味するところのものが真実
    なのである。

    孔子はえらばれた人であった。それゆえに世にあらわれるまでは誰
    もその前半生を知らないのが当然である。神はみずからを託したも
    のに、深い苦しみと悩みを与えて、それを自覚させようとする。そ
    れを自覚しえたものが、聖者となるのである。

    伝統とは民族的合意である。儒教は少なくとも、中国における旧社
    会の伝統であった。しかしわが国の場合、そのような意味での伝統
    は、はたしてあったであろうか。またそれにかわりうるものがあっ
    たであろうか。

    それにしても、孔子がかつてその現実の行動のうちに示した、あの
    はげしい求道者的な精神、また道への献身は、どこから生まれてき
    たものであろう。(中略)そこには理想に生きるものの、かがやく
    ような美しさがある。

    絶対は対者を拒否する。しかし対者の拒否が単なる否定にとどまる
    限り、それは限りなく対者を生みつづけるであろう。対者の否定と
    は、対者を包みかつ超えるものでなくてはならぬ。

    思想は本来、敗北から生まれてくるもののようである。

    現実の上では、孔子はつねに敗北者であった。しかし現実の敗北者
    となることによって、孔子はそのイデアに近づくことができたので
    はないかと思う。社会的な成功は、一般にその可能性を限定し、と
    きに拒否するものである。思想が本来、敗北者のものであるという
    のはその意味である。

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    ●編集後記

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    3月から区民農園を借りました。たった6畳ほどの小さな敷地ですが、
    自ら食べるものを自ら作る。私の母はそういう人でしたが、その母
    の真似事を一家で始めました。

    昨日、初めてその畑地を耕しに行きました。まずは土づくりです。
    鍬とスコップですっかり堅くなった地面を掘り起こしました。が、
    これがなかなか大変。6畳なんて小さいな、と思っていたのですが、
    すぐに息が上がってきます。こんな時こそ父親の威信を見せようと
    頑張るのですが、ぜーぜーと肩で息をする有様で、全然、格好よく
    ありません。

    おかげで今朝は筋肉痛です。1日で筋肉痛が出てくるところを見ると
    思ったほど肉体は老化していないのかもな、とちょっと嬉しくなり
    ました。

    さて、孔子と言えば、ソクラテス、キリスト、釈迦とあわせて、し
    ばしば世界の四聖と言われますね。

    ある日、はたと気づいたのですが、この4人は、誰も自分で著作を
    残していませんね。弟子達が「子、曰く」の形でそのことばを残し
    ている。聖典とされる『論語』『聖書』『ブッダのことば』は皆そ
    ういう構造で書かれていますし、ソクラテスの思想も、弟子であっ
    たプラトンが対話編の形で残したものです。

    しかも、孔子と同じく、聖人達は生前は決して社会的には成功して
    いません。ソクラテスとキリストは処刑をされています。釈迦は最
    初は王族として豊かな人生を送りましたが、出家後は苦労続き。悟
    りを開いた後はよくわかりませんが、栄華を極めたという人生でな
    かったことは確かです。

    もしかしたら、聖人達というのは、土づくりや種蒔きをすることに
    その本質かあるのかもしれませんね。自分が開花することを願って
    いるのは所詮小人で、自分が耕した土地、撒いた種で、人々が開花
    することを願う。それが聖人を聖人たらしめたものなのかもしれま
    せん。筋肉痛で重い腕をさすりつつ、ふとそんなことを考えました。

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    2011年12月29日
  • 孔子伝

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    孔子を「聖人」としてではなく「歴史的な人格」として捉えなお
    そうとする書物。
    作者・白川静の研究業績についてはもはや贅言を要さない
    だろう。
    多くの資料を引用することによって、孔子の人となりを現代に
    蘇らせることに成功している。
    孔子の生涯を知りたい方は、まず本書に目を通すべきだと考
    える。

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    2011年12月28日
  • 漢字 生い立ちとその背景

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    ネタバレ

    漢字の著作が豊富な白川静の知見の一部を見ることができる新書の一つ。
    漢字への興味を持ってもらうのに適した一冊。

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    2013年01月21日
  • 孔子伝

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    ネタバレ

    とてもおもしろい。碩学の著者の見解を批判するだけの見識は私にはないが、非常に説得力のある孔子像が展開される。儒が巫儒であり呪であることは、この本を元ネタにした諸星大二郎の「孔子暗黒伝」、酒見賢一の「陋巷に在り」で奔放に展開されたが、著者の分析と数々の根拠の提示には自然に納得させられる。単純な孔子伝ではなく、当時の時代背景の把握、墨家、荘子との比較も非常に興味深い。これだけの深い考察が、中国ではなく日本の学者によってなされたことには感動を覚える。手元に「論語」を置いて読まれることを薦める。白川さんの解説で、漢文の時間に習ったものと、まったく違った論語が見えてくるのが楽しい。

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    2011年06月08日
  • 漢字 生い立ちとその背景

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    日本語の表記にとって漢字は不可欠の文字である。
    にもかかわらず、文字としての漢字がどのようにして生まれ、本来どのような意味を持つものであったかを知る人は少ない。
    中国古代人の生活や文化を背景に、甲骨文や金文、および漢字が形づくられるまでの過程をたずね、文字の生い立ちとその意味を興味深く述べる。

    [ 目次 ]
    1 象形文字の論理
    2 神話と呪術
    3 神聖王朝の構造
    4 秩序の原理
    5 社会と生活
    6 人の一生

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

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    2011年04月24日
  • 中国の神話

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    神話好きの私にはたまらない一冊。
    とは言ったものの、、やはり専門的なのでついていけない部分が多い。
    それでも世界各地の色々な神話が出てくるのでとても面白いです。
    神話についての知識が確実に増える一冊。

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    2010年02月01日
  • 漢字 生い立ちとその背景

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    記念すべき1冊目は私が最も尊敬している学者、白川静先生の著作から。白川先生は甲骨文字や金文の字形を丹念に整理・分類し、その形と古代中国人の思惟構造とを突き合わせ、いわゆる「白川漢字学」を大成されました。この本はその「白川漢字学」の入門書です。古代中国の人は神を畏れ、神に祈り、神の言葉を残すために漢字を創造しました。したがって当時作られた漢字一つ一つには神の言葉を伝える役割があり、そのために字形には彼らの考え方や行動が表れているのです。そんな字形と思惟構造との関連性を具体的に分かりやすく書いており、漢字をより深く知りたいと思っている方へ是非お勧めしたい本です。

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    2009年10月04日
  • 漢字 生い立ちとその背景

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    若松英輔さんが、一番に推薦していた本なので読んでみた。
    漢字の語源をドラマチックに読み解いていて、とてもおもしろい。
    しかし、批判があることも知った。この本の出版後に、新しい発見があり、この本の内容に間違いもあるようだ。
    白川静さんは梅原猛の立ち位置と似ていると思った。どこが、というと、既存の学問の枠にとらわれず、古代の「呪(まじない)」や宗教的・霊的な精神世界を独自の視点で解明し、なにより学会と対峙した点である。
    二人の対談もあるのを知った『呪の思想 神と人との間』どんなに内容なんだろう。

    P54のヒルコに関しての説明で「古くは、初生児を捨てる習俗」があったとは、びっくり。「わが国の神話でも、二神の初生児である水蛭子は、葦舟に乗せて流し棄てられている。初生児を流棄することは、宗教的に深い意味のあることであったようである」とある。
    ツクヨミが「何もしない」というのが河合隼雄さんの中空構造の説明の中にあるが、実際は、捨てられてあの世からアマテラスとスサノウを見守る立場だった、だから、「何も行動できない」のでは?そうなると神話は中空ではない。北山修さんの中空構造の批判とも異なる「民俗学的な切り口」でも中空構造は批判ができることがわかった。

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    2026年08月15日
  • 中国の神話

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    本書によれば、中国神話は主に西方の羌人、南方の南人(苗人)、中原支配王朝(四夷出身)の三者に端を発したようだ。殷朝を最後に、それら神話が統合もしくは体系化される事はなかったが、後に古帝王の系譜を補強する(国家の正当性を高めるための)ツールに変化し、経書などにその血脈を残していったらしい。

    地理的、文化的にも中国神話は日本神話と切っても切れない縁にあるという事をしみじみと感じた。少々古い本だが、貴重な読書体験ができたと思う。

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    2026年04月07日
  • 漢字百話

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    ネタバレ

           -20090630

    太古の呪術や生活の姿の伝える、漢字の世界-厖大な資料考証によって、文字の原始の姿を確かめ、原義を鮮やかに浮かび上がらせる、10章各10話、100話の短章集。

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    2022年10月20日
  • [白川静の絵本]サイのものがたり

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    白川ワールドの魔力にはまる・・・そうだね。
    「漢字は人類にとっての貴重な文化遺産である」という白川先生の言は悠遠だ。

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    2021年02月24日