田口善弘のレビュー一覧
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頑張って少しずつ読んだが、段々と難しくなる。提示される例えや図はありがたかったが、数式が出てくるとたちまち???となる。
そういえば高3で理系のクラスにいたが、物理はさっぱり理解できなかった。化学や地学などは好きだったのに物理は大きな壁だった。理由は数式。
授業はどこかの入試過去問プリントが配られ教師はいなくなることが多かった。酷いよね。それでも県下一の公立進学校だからポケットから出した計算尺を使ってさっさと取り組むようなクラスメートが何人もいた。彼らは東大、京大、阪大などに進学したが、授業がなくてもできたのだから塾や家庭教師などで学んでいたのだろう。私は落ちこぼれだった。
本に戻るが、視覚的に表現できる物理は好きな方だったと思う。それを作者は古典的力学といい、結局は間違っていると言う。人間の認知力が都合よく作り上げた解釈で、正しい相対性理論や量子力学でなければわからないのだと説明する。
古典的力学から量子力学へと物理が進化してきたことはわかるのだが、彼の説明がわからない。小難しいことは省略し、読者に寄り添ってくれていると感じるのに。
使われる例示も難解になり、数式がいくつも提示されると???
先を読むまいかとさえ思ったが、ここで「テミスの不確かな法廷」で松山ケンイチが演じる裁判官が度々口にする言葉「わからないことをわからないと、わからないことがわかりません」を思い出し、最後まで読んだ。朝日新書だから読まないのももったいない。
私は本を選ぶとき、内容、作者だけでなくどこの出版社かを必ず見る。出版社についてはどんな本を出してきたか、ネトウヨ本の供給元でないかと気にするし、時には資本関係の系列まで調べる。もちろん普通の出版社は玉石混交の本を出して稼いでいる。
私はこの先どこまで好きな本を読めるか、若くないから何もかも読んでいる暇はないと考えると、自分の生き方にそぐわない本は避けたいのだ。
もちろん読んでみてもうこれで勘弁となる本もある。作者には悪いがほんとにもう勘弁なのだ。
田口さんの「物理は存在しない」はそんな本ではない。
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著者の考えるAIは、「現実世界のシミュレーター」。物理学者であり、バイオインフォマティクスを専門であった著者の、近年の人工知能についての見解が述べられている本。
実は、「知能」の実態はつかめていないらしく、どんなに発達しても、人間の持つ知能と同じにはならないだろうと予想している。例えば、脳細胞がどんな形をしていて、どんな物質をやり取りしているか、は既知である。一方、知能はどんな反応によるものか、そもそも何をもって知能があるといえるのか、言葉の定義すら決められないのだそう。言われてみれば、知能とはぼやっとした概念に聞こえる。
膨大なデータで世の中の事象を予測するAIに対して、人間はもっと少数のサンプルから本質をつかむことができるという。このことから、どんなにAIが発達しても人間の知能とは異なる仕組みによるもので、機能が同じとは言えないのでは、との立場。
感情論と理論的側面の2つで記述されている。
機械学習に疎くても読みやすく、納得感があった。 -
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高校では物理を選択していなかったので、ざっくりとした体系だけでも掴みたいと思い、この本を手に取りました。
本書は、力学編、電磁気学編、熱力学編、波動編、原子・分子編の5部構成です。
5部に分けられてはいるものの、これらが相互につながっていることを教えてもらえました。
私は物理学について前提知識のない読者ではあるものの、本書は身の回りの現象から例をたくさん引っ張ってくれるので、あたかも1つの理論体系を使って様々な前提知識を脳内でつなぎ合わせているかのような読み心地でした。
例えば熱力学編では、科学史(熱素説)をはさみながら、雲、水圧、熱機関、冷房を取り上げます。
文系人間も、空は見るし、車は乗るし、自家発電機や空調設備の発注はするので、案外、物理学の成果を避けて生活することはできません。
その都度生じては棚上げにしていた「これってどういう原理なんだろう」を、背後にある熱力学でつなぎ合わせる。読書の醍醐味ですね。
また、物理学の考え方が分かると、多少の応用も効きます。
例えば、近年の猛暑でよく耳にするフェーン現象ですが、あれの説明、前から物理法則のバグなんじゃないかと思っていました。湿った空気が山を上って下ると、山を上る前に比べて温度が上がっているなんて、「エネルギー保存則はどこにいったの」って感じがするので。
本書にはフェーン現象は出てきませんが、水蒸気が雲になる際の潜熱(液化熱)について教えてくれます。
空気中の水蒸気が雲になるとき液化熱(発熱)が発生するものの、その水が雨になって地表に落ち、気化熱(吸熱)が生じないから、山を上る前に比べて温度が上がるのであって、大気の上昇・下降による膨張・圧縮に伴う温度変化とは区別する必要があったわけです。
潜熱の考え方が頭に入った途端、今まであったバグ感がなくなり、むしろ「空調設備で使っているやつ!」になるので、認識の変化というのは楽しいものです。
酷暑はやっぱり嫌ですけど。
本書では、法則やそれを表現した数式も出てくることは出てくるのですが、文章での説明が主です。
物理学の難しさの1つは、例えば重力、質量、重力加速度みたいに単位のバラバラな変数たちを、1本の式として関係づけるところにあるように思います。
本書では計算問題を解くわけではないので、深い理解に到達することはないのですが、「ちゃんと物理学を勉強してみたい!」と思わせるには十分でした。
正月休みで仕事を頭から追い出せていたこともあって、本当に面白い読書ができました。 -
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入門書、とひとくちに言うが、私は大きく二つのパターンがあると思うのだ。
一つは文字どおりの入門、これを学ぼう、とおもったときにとりあえず最初に読んで輪郭を掴むためのもの。
もう一つが、あれこれ読んでみたがどうも全体像がわからんなー、というときに立ち返って読んでみるとやたら頭が整理されるもの。
私にとって本書は明らかに後者であった。
機械学習が、乱暴に言えば「予測の精度」を上げることを目的にしているとして、特に近傍法や線形回帰、決定木など、なんだかんだ言ってもロジックが背後にある手法から、深層学習という「なぜかできてしまうが、最終的に理屈は不明」な世界へのジャンプは、わからないなりにこれまでとは違う手触り感で納得できた。
まったくもってこの領域は、少なくとも文系軍団にとっては、体系的理解への「終わりなき旅」ですなー
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遺伝情報の保存庫DNAから特定のRNAが読みだされる。RNAの核酸3文字からなるコードをアミノ酸に読み替えそのアミノ酸を順番につなぐことでプロテインができる。つながれたアミノ酸がもつ電荷などのため、できあがったプロテインは特定の3次元構造をとり立体的な構造物として生体分子として働く・・・いわゆるセントラル・ドグマ。
たとえば音楽CDにおいて、デジタル化して保存された情報を読み出し出力変換して最終的に人間が聴くことのできる音として出力しているメカニズムのアナロジーとしてとらえてみれば、セントラル・ドグマはまさにデジタル―アナログ変換に他ならない。
そういうデジタルな処理系として分子生物学を眺めてみると・・というのが本書。言われてみれば確かにそうだと思うことばかり。さらに、少しでもプログラムをバグると動かなくなるコンピューターの繊細さ(Fragile)に比べて、少々の読み間違いやバグ(SNP:1塩基が入れ替わった状態)があってもなんとか動かす頑強さ(Robust)、そればかりか、バグもまた進化のタネになったりする。
ゴミみたいなものと思っていたmiRNA(マイクロRNA)がまさにデジタル信号としてDNA→RNA、RNA→プロテインの制御にさまざまにかかわっている。さらにlncRNAや環状RNA、そこからプロテインの3次元構造(ここらが最先端でなかなか解明されなさそう)と読み進めば、なるほど生体とは複雑すぎて人間の理解を凌駕したデジタル構築物なのだ。
読み終わると、赤血球や細胞や細菌のイメージからくる生もの感から離れて、何とも自分の中に広がるデジタル世界を感じて不思議。 -
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ネタバレ田口善弘先生の「知性とはなにか」を読みました。まずこの本の第一の主張は、「大規模言語モデルLLMの構造は非線形非平衡多自由度系と何も変わらない」ということ。結構人工知能の歴史について触れている。中でなるほどと思ったのは人工知能に常識を持たせることの難しさ。専門的なロジカルなものは教えやすいのかも知れないけど、常識は確かに定義するのが難しい。第三次のAI革命はディープラーニングから始まったと思うけど、ニューラルネットワークはそれまで局所解に落ち込んでしまう、汎化性能も低いモデルという評価だったが、①既存の文章を隠して当てさせる穴埋め問題と②二つの文章が続いているかを判定する問題を学習することで、ChatGPTに代表される大規模言語モデルが生まれた。これは漠然とした学習を大量にやらせた基盤モデルと追加の個別学習である転移モデルの組み合わせで、文脈依存の単語の類似度を測れる高精度の単語の地図の作成に成功したことが要因。これは論理演算ではなく、単語の並びを予測させるモデル。現在人工知能と呼ばれるものは、現実の情報そのものを論理的に学ばせたのではなく、人間の脳というフィルタを通して、言語化された情報を言語の並びとして理解しているということ。さて、最初に戻る。つまり非線形非平衡多自由度系は現実を表現するシミュレータモデル。脳も現実を表現するシミュレータモデルで、シミュレーションした結果は同じような結論を導くけどモデルとしてまったく違うもの。LLMは現実を論理的に理解しているのではなく、現実を表現する言葉を予測するもの。だから、人間の脳と現在のAIの代表であるLLMは違うもの。もちろん、LLMの発展形には知性も感情もないというのが結論なのかな。とりあえず、自分はそういう風に理解した。
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・一回通読。日常的に使う道具や出会う出来事に絡めて、ロジカルかつわかりやすく説明してくれるので、楽しく読める。数式をなるべく排除してるが、コラムや巻末で復習させて欲しかったというのが正直なところ
・忘れてたり、目から鱗だったりしたこと。電磁波はエネルギーを運ぶ。有限の温度をもつものは赤外線を発している。液化熱。湿った空気は乾燥した空気より温度が下がりにくい。夏と冬の雲の出来方の違いにも影響。熱力学的には冷却の方が加温より容易。日常生活では燃焼が簡単に起こせて吸熱は難しいので直観とズレる。燃焼が連鎖反応的であることも拍車をかける。粒子は局在化した波束であり、人も例に漏れないが、波長が極小
・この本で頭を整理した後に、教科書や良問参考書に取り掛かると、学び直しとして良さそう -
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著者は物理学者。大規模言語モデルは、著者が研究していた非線形非平衡多自由度系の亜種だという。
脳は、限られた情報から外の世界を脳内で再構成しているという意味で、現実世界のシュミレーターである。生成AIも、現実世界のシミュレーションを実行している機械システムと考えることができる。
脳の動作原理は、ニューラルネットワークや深層学習とは別物であり、その延長上にある生成AIとは異なるものである。 脳と生成AIはどちらも世界シミュレーターであるが、世界を全く異なったように解釈している。
ジェフ・ホーキンスは、「1000の脳理論」の中で、知能とは事物の地図を脳内に作ることだと断言している。「1000の脳理論」とは、脳が、いろいろなあり得る現実を記述する可能性の中から適当なものを選んでいるに過ぎないという意味。
深層学習は複雑なモデルを導入しているにも関わらず、過学習せず高度な般化性能を獲得する。トランスフォーマーは、文章中の単語の関係の理解込みで単語の地図を作る機能を実装するアルゴリズムだが、穴埋め問題を解かせると文中の単語の関係を学習してしまう機能を持っている。
Google DeepMind社のAlphaFoldは、タンパク質がどのように折りたたまれてどのような立体構造をとるかをニューラルネットワークの手法で解くもので、2024年度のノーベル化学賞を受賞した。創薬の分野では、疾患の原因となっているタンパク質を作る遺伝子が特定されているものもあるため、そのタンパク質と結合する化合物を探すために機械学習を用いる試みが始められている。マテリアルズインフォマティクスの分野では、化合物の組成から物性を予測する機械学習が行われている。 -
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古典力学の矛盾を量子力学との比較で説明した本。
「力」や「(加)速度」は存在せず、量子力学的理解においては「エネルギー」と「運動量」が正しい。力や加速度は、現実世界を人間の脳で観測した時の、力がかかる、早い・遅い、というような動物的理解から定義されてしまっている。もし人間が量子力学的に現実世界を観測する器官を有していた場合、古典力学は生まれなかった。
では、古典力学と量子力学の違いはなんなのか?量子力学では「質点」は存在せず、量子力学の単位である電子や光子は「(確率密度の)波」である。そのため、局在性が崩壊している。古典力学がマクロスケールで利用可能であるのは、「たまたま」マクロスケールでは局在性を近似して計算可能であったから、にすぎない。古典力学では、量子力学で示される確率分布の「ピーク」や「平均」を観測しているにすぎないという説明は興味深かった(エーレンフェフトの定理)。そしてF = maひとつをとっても条件が揃っていない(右辺と左辺で近似や仮定がズレている成立しない)ケースがあるという。
量子力学で「質点」に類する実在は、「波束」である。波束は波の重ね合わせであるため、複数の運動量を持ってしまう。したがって、「質点」すなわち「位置」を決めようとすると運動量が決まらない。逆に、運動量が単一(1つの波)の場合、位置は決まらない。このタイプのハイゼンベルグ不確定性原理の説明は初めて見たが、わかりやすい。 -
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なぜ物理学者が「知能とはなにか」を問うのか?
物理学者の書いた本を普段読むことはないのだが、取り合わせの妙というか、「なぜ?」という思いがぬぐえず、読むことにした。
結論として、筆者によれば「知能とは現実世界のシミュレーター」。
人工知能は「意味」を理解していないが、事物の関係の地図=世界を構築することができる。
膨大なデータが利用できるようになり、一時はとん挫していたAI研究が一気に進み、今や実用化した。
著者によれば、「現実世界のシミュレーター」である点では、人間の脳もAIも等価である、と喝破する。
もちろん、仕組みの違うシミュレーターであるとも言っているので、同一視はすべきでないのだが。
知能とは何かという問題に関しては、脳科学者も、人工知能研究者も取り組んできたけれど、きちんとした答えはまだ出ていない状況なのだそうだ。
脳から知能を研究するアプローチでは、部位と機能の関係についてのデータは蓄積されているが、知能の定義には至っていないのだとか。
人工知能研究はこれとは違った知能についてのアプローチ法を提供した。
複雑な知的作業も、単純な論理演算で実現できるのだから、脳の機能がわからなくても、それを再現できると考える「古典的記号処理パラダイム」が生まれる。
ところが、論理では導き出せない「常識」の学習でつまずき、頓挫する。
これを打開する二つのアプローチがさらに考え出され、その一つがニューラルネットワークだったのだが、花開かずに消えたもう一つのアプローチが面白い。
人工知能に身体を持たせてしまえ、というものだ。
ちなみに、このアプローチが進展しなかったのは、一つは残存する「古典的記号処理パラダイム」との対立と、ロボット研究との境界があいまいであったことだそうだが、この考え方が将来また芽を吹いたりしないのかな、なんて夢想したりする。 -
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AIの歴史や概要について掴むのにわかりやすい本。人工知能の研究に、人間の知能から進めていって行き詰まり、全く異なるアプローチが今の人工知能に繋がるというとは面白い。
そういう観点で見ると、今の生成AIはスカスカで、自我に繋がるものでなく人間の脅威に当たらないというのは論理的にすっきりしている。
また、人間の脳も現実のシミュレーションの一種に過ぎないというのもなるほどと納得できる。
しかし、今後のAIの進歩についてはどうなるのかという点はあまり書かれていない。
画像と深層学習の組み合わせを考えれば、現実社会への浸透はどんどん進んでくるだろう。
そもそも人間の生活のほとんどは知能ではなく、習慣とルールで成り立つものであり、自我のないAIで十分対応できるもの。
効率的な社会の実現により、ますます多数の人間が不適合になるのではないかと危惧している。