田口善弘のレビュー一覧
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著者の考えるAIは、「現実世界のシミュレーター」。物理学者であり、バイオインフォマティクスを専門であった著者の、近年の人工知能についての見解が述べられている本。
実は、「知能」の実態はつかめていないらしく、どんなに発達しても、人間の持つ知能と同じにはならないだろうと予想している。例えば、脳細胞がどんな形をしていて、どんな物質をやり取りしているか、は既知である。一方、知能はどんな反応によるものか、そもそも何をもって知能があるといえるのか、言葉の定義すら決められないのだそう。言われてみれば、知能とはぼやっとした概念に聞こえる。
膨大なデータで世の中の事象を予測するAIに対して、人間はもっと少数 -
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高校では物理を選択していなかったので、ざっくりとした体系だけでも掴みたいと思い、この本を手に取りました。
本書は、力学編、電磁気学編、熱力学編、波動編、原子・分子編の5部構成です。
5部に分けられてはいるものの、これらが相互につながっていることを教えてもらえました。
私は物理学について前提知識のない読者ではあるものの、本書は身の回りの現象から例をたくさん引っ張ってくれるので、あたかも1つの理論体系を使って様々な前提知識を脳内でつなぎ合わせているかのような読み心地でした。
例えば熱力学編では、科学史(熱素説)をはさみながら、雲、水圧、熱機関、冷房を取り上げます。
文系人間も、空は見るし、車は乗 -
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入門書、とひとくちに言うが、私は大きく二つのパターンがあると思うのだ。
一つは文字どおりの入門、これを学ぼう、とおもったときにとりあえず最初に読んで輪郭を掴むためのもの。
もう一つが、あれこれ読んでみたがどうも全体像がわからんなー、というときに立ち返って読んでみるとやたら頭が整理されるもの。
私にとって本書は明らかに後者であった。
機械学習が、乱暴に言えば「予測の精度」を上げることを目的にしているとして、特に近傍法や線形回帰、決定木など、なんだかんだ言ってもロジックが背後にある手法から、深層学習という「なぜかできてしまうが、最終的に理屈は不明」な世界へのジャンプは、わからないなりにこれまでと -
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遺伝情報の保存庫DNAから特定のRNAが読みだされる。RNAの核酸3文字からなるコードをアミノ酸に読み替えそのアミノ酸を順番につなぐことでプロテインができる。つながれたアミノ酸がもつ電荷などのため、できあがったプロテインは特定の3次元構造をとり立体的な構造物として生体分子として働く・・・いわゆるセントラル・ドグマ。
たとえば音楽CDにおいて、デジタル化して保存された情報を読み出し出力変換して最終的に人間が聴くことのできる音として出力しているメカニズムのアナロジーとしてとらえてみれば、セントラル・ドグマはまさにデジタル―アナログ変換に他ならない。
そういうデジタルな処理系として分子生物学を眺 -
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古典力学の矛盾を量子力学との比較で説明した本。
「力」や「(加)速度」は存在せず、量子力学的理解においては「エネルギー」と「運動量」が正しい。力や加速度は、現実世界を人間の脳で観測した時の、力がかかる、早い・遅い、というような動物的理解から定義されてしまっている。もし人間が量子力学的に現実世界を観測する器官を有していた場合、古典力学は生まれなかった。
では、古典力学と量子力学の違いはなんなのか?量子力学では「質点」は存在せず、量子力学の単位である電子や光子は「(確率密度の)波」である。そのため、局在性が崩壊している。古典力学がマクロスケールで利用可能であるのは、「たまたま」マクロスケール -
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なぜ物理学者が「知能とはなにか」を問うのか?
物理学者の書いた本を普段読むことはないのだが、取り合わせの妙というか、「なぜ?」という思いがぬぐえず、読むことにした。
結論として、筆者によれば「知能とは現実世界のシミュレーター」。
人工知能は「意味」を理解していないが、事物の関係の地図=世界を構築することができる。
膨大なデータが利用できるようになり、一時はとん挫していたAI研究が一気に進み、今や実用化した。
著者によれば、「現実世界のシミュレーター」である点では、人間の脳もAIも等価である、と喝破する。
もちろん、仕組みの違うシミュレーターであるとも言っているので、同一視はすべきでないのだが -
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この肉体を守りたいとか、この肉体を満たしたいという、個々に与えられた身体に帰属するミッションが自我であり個性だが、その上層で思考する(最適解を検討したり、推理したり)部分は能力差や経験差はあるものの、査定可能で大差はない。大差はないから、相手の思考をある程度見抜く事が可能なのだ。
だとしたら、自我と知能は区別すべきである。本書もズバリ言い切るが、我々が「知能」として特別視してきたものは、既にAIが代替出来ていて、チューリングテストには軽く合格するし、人知の応用を必要とする問いにも答えられるレベルだ。
人間と人間以外を区別するのは「知能」ではない。まあ、直観的にも分かる気はする。人間と同じ言 -
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AIの歴史や概要について掴むのにわかりやすい本。人工知能の研究に、人間の知能から進めていって行き詰まり、全く異なるアプローチが今の人工知能に繋がるというとは面白い。
そういう観点で見ると、今の生成AIはスカスカで、自我に繋がるものでなく人間の脅威に当たらないというのは論理的にすっきりしている。
また、人間の脳も現実のシミュレーションの一種に過ぎないというのもなるほどと納得できる。
しかし、今後のAIの進歩についてはどうなるのかという点はあまり書かれていない。
画像と深層学習の組み合わせを考えれば、現実社会への浸透はどんどん進んでくるだろう。
そもそも人間の生活のほとんどは知能ではなく、習慣とル -
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知能とは非線形非平衡他自由度系によるシミュレーションである、という主張はともかくとして、近年のDL, AI の進展が要領良くまとめられている。1990頃までのneural network の研究と本質的な違いが無いのに、コンピュータ性能の向上によって莫大なデータを扱えるようになったことにより、パラメータ数も格段に増やしたにもかかわらずoverfittingの問題が何故か回避されてしまった、その理由は分からない、という専門家としての見識がこの本から得られる最も貴重な情報であろう。さて、知能というのもこの宇宙で起きている自然現象の一つであるから、非線形非平衡他自由度系で起きている現象であるという主
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【いくつかのポイント】・非線形系非平衡多自由度系
・実は、私たちは「そもそも知能とはなにか」ということですら満足に答えることができずにいる。
・生成AIも人間の脳も現実のシミュレーターに過ぎず異なった限界を持っている。
・生成AIと脳という二つの別の「知能」があり、それらは全く異なった形で現実を解釈するシミュレーター。今後も無限個の「異なった現実シミュレーター」としての知能が出現する。
【目次】
第0章 生成AI狂騒曲
第1章 過去の知能研究
第2章 深層学習から生成AIへ
第3章 脳の機能としての「知能」
第4章 ニューロンの集合体としての脳
第5章 世界のシミュレーターとしての生成AI
第