【感想・ネタバレ】生命はデジタルでできている 情報から見た新しい生命像のレビュー

あらすじ

科学出版賞受賞作家の書き下ろし最新作
「全生物に読んでほしい!」人気YouTuber・ヨビノリたくみ氏絶賛

いま、生物学の分野で静かな革命が進行しつつある、と言ったら読者の皆さんは驚くだろうか? その生物学の分野とは、ゲノム科学である。ゲノム科学に関する新しい知見がネットに流れない日の方が珍しい。
「寿命を伸ばす遺伝子発見!」
「『がんゲノム医療』検査に保険適用」
なんだがすごいことがこの分野で起きているっぽい。だが、なぜ、「突然」こんなことになっているのか? その疑問に答えてくれる報道は少ない気がする。本書の目的はそれを少しでもわかりやすく説明することにある。
そのために、本書ではDIGIOMEという造語を導入した。DIGIOMEとは何か? それは、デジタル信号処理系としてゲノムを捉える考え方だ。ゲノムを構成するDNAが、ゲノム情報という意味で、われわれ生命の設計図たる情報を担っていることは、ワトソン=クリックによるDNAの二重螺旋構造の発見の頃から知られていた。だが、本書ではそこを一歩踏み込んで、ゲノム自体をデジタル情報処理装置として捉える見方を提案したい。
我々人類が、デジタル情報処理装置の恩恵を日常的に享受できるなったのは、わずかにここ数十年のことに過ぎない。だが、生命体はそのそもそもの誕生時からこの高度なディジタル情報処理系の恩恵を享受してきた。周知の様に、我々人類がデジタル情報処理装置の恩恵を享受するには、高性能ながら安価な情報処理装置(例えば、スマホ)の発明が必須だった。生命体はそのような精密な情報処理装置を持っていないにも関わらず、ゲノムをデジタル情報処理装置として機能させることに成功してきた。本書で語りたいのは、なぜ、そんな奇跡のようなことが可能だったのか、ということだ。
実際、デジタル信号処理系たるゲノムは、われわれ人類が作り上げた精緻で緻密なそれとは、にて非なる側面をもっている。ある面では我々のそれより優れているし、ある意味では劣っている。そして、いま、このタイミングでその詳細が詳らかになったのは、デジタル信号処理系としてゲノムの動作を克明に観測して記録できるだけの技術と知識を我々が手にしたことによる。いままで秘密のベールの奥に隠されていたその機構の謎が日々、その観測技術によって続々と白日のもとにさらされている。前述のゲノム科学における新発見の連鎖はその帰結に過ぎない。そして、その技術の一端にはいま流行っているAI=機械学習の進歩も大きく関わっている。この本はそんな存在、DIGIOMEを巡る冒険譚を、極力最先端の知見を用いて語ることを目的とする。この本を読み終えた時、きっとあなたは、いままで見ていた「生命」をそれまでとは随分と違う目で見ることができるに違いない、と信じる。

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Posted by ブクログ

生命現象をデジタル情報処理系として見るという見方がとても面白かった。

DNAは磁気テープ、SNP=バグ、がんのメチル化はがんによるクラッキング、誤り訂正機構もある、などなどコンピュータのアナロジーで説明されるのは新鮮。
また、とりあえずゲノムを全部読むというのも、情報科学では当然の発想でも生物科学では違ったとか。

膨大なゲノム情報を解析するのにコンピュータが必須になったことで、これから生物学と情報科学の重なる分野が物凄く面白いことになりそうな予感を感じさせる本だった。

もっと詳しく知りたい!という刺激をすごく与えてくれた。

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2020年07月10日

Posted by ブクログ

セントラルドグマから始まり、タンパク質の働き、細胞の分化、エピジェネティクス等の精巧な仕組みが、進化の過程で作り上げられてきたことを考えると、驚きと奇跡としか思えない。何気なく生活している中では全く実感できない細胞内でのデジタルな営みがダイナミックに繰り返されているそれこそが生命という不思議。

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2020年06月17日

Posted by ブクログ

遺伝情報の保存庫DNAから特定のRNAが読みだされる。RNAの核酸3文字からなるコードをアミノ酸に読み替えそのアミノ酸を順番につなぐことでプロテインができる。つながれたアミノ酸がもつ電荷などのため、できあがったプロテインは特定の3次元構造をとり立体的な構造物として生体分子として働く・・・いわゆるセントラル・ドグマ。

たとえば音楽CDにおいて、デジタル化して保存された情報を読み出し出力変換して最終的に人間が聴くことのできる音として出力しているメカニズムのアナロジーとしてとらえてみれば、セントラル・ドグマはまさにデジタル―アナログ変換に他ならない。

そういうデジタルな処理系として分子生物学を眺めてみると・・というのが本書。言われてみれば確かにそうだと思うことばかり。さらに、少しでもプログラムをバグると動かなくなるコンピューターの繊細さ(Fragile)に比べて、少々の読み間違いやバグ(SNP:1塩基が入れ替わった状態)があってもなんとか動かす頑強さ(Robust)、そればかりか、バグもまた進化のタネになったりする。

ゴミみたいなものと思っていたmiRNA(マイクロRNA)がまさにデジタル信号としてDNA→RNA、RNA→プロテインの制御にさまざまにかかわっている。さらにlncRNAや環状RNA、そこからプロテインの3次元構造(ここらが最先端でなかなか解明されなさそう)と読み進めば、なるほど生体とは複雑すぎて人間の理解を凌駕したデジタル構築物なのだ。

読み終わると、赤血球や細胞や細菌のイメージからくる生もの感から離れて、何とも自分の中に広がるデジタル世界を感じて不思議。

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2020年06月01日

Posted by ブクログ

「DIGIOME」という概念自体は、現代の生物学者であればお馴染みのものであろう。オミックスの中でも、著者の関心領域を取り上げた新書である。

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2025年10月17日

Posted by ブクログ

いまの生命科学の到達点がわかる内容。昔、教科書で学んだ内容から著しく進歩していると感じた。
DNA→RNA→タンパク、そして代謝をそれぞれ解説した後、これらを統合的に分析するマルチオミックス解析を紹介。この内容が5年後、10年後にどのように書き換わっていくのか今後の研究成果に期待。

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2020年11月28日

Posted by ブクログ

面白かった。切り取られた断片から映画の全編を復元するようなもの、といった喩えはこの分野の難しさをよく表現しているように感じた。因果推論、原因を徐々に掘っていくことがこれからますます大事になっていきそうです。

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2020年11月23日

Posted by ブクログ

生物の設計図はDNAなのだからデジタルなのは当たり前だと思っていたが、その仕組みはまだ解明されはじめたばかり。わからないことだらけだということがわかった。

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2020年08月31日

Posted by ブクログ

DNAから連なるRNA、タンパクの生成をデジタル情報というアプローチから扱った書籍。
デジタルとDANの類似性というのは言われてみればその通りなのだが、この書籍のタイトルを見かけるまでは発想がなかった。
DNAの構造は二重らせんと言われるが、言ってみれば長い紐であり、そこから生成されるタンパクも紐から形成される。この紐からタンパクの立体構造が生成されるわけだが、これを3Dプリンタに例えているのが分かりやすかった。少し前に、NHKのサイエンスゼロでDNA折り紙の話が取り上げられていた、この話も関連するだろう。
デジタル情報としDNAを見た時のロバスト性という視点も面白かった。ロバストに対比される言葉がフラジャイルである。人間がコーディングするプログラムの多くはフラジャイルである。つまり、一箇所でも不具合があるとシステム全体が機能しなくなる恐れがある。
一方で、 DNAの情報はロバストであり、一部に誤りがあってもシステムとしては機能する様な冗長性がある。このことも他書で知ってはいたが、この様なシステム面からの視点でまた違って見えるというのは面白い。
過去には意味がないとされていたDNAやRNAにも意味が見出されてきているということも、紹介されておりこの分野は進展している様でまだまだわからないことも多いと感じた。

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2020年08月15日

Posted by ブクログ

「生命はデジタルでできている」、なんとセンセーショナルなタイトルだろうか。
知覚に閾値が存在すること、DNAが記号の羅列からなること。そしてなによりアナログにものを扱うことの難しさから、処理系がデジタル(離散的、という表現のほうがよいのではと個人的には思っている)だというのはなんとなく合点がいった。

それにしても、まだまだ未知の領域があり現在進行形でアップデートされている学問のなんとエキサイティングなことか。
生物学に関しては門外漢であるため理解が及ばない点も多々あったが、ざっくりとした理解と発展し続ける研究への期待感をもつことができた。

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2020年07月16日

Posted by ブクログ

ネタバレ

分子生物学 セントラルドグマ
 遺伝情報
 DNA→(転写)→mRNA→(翻訳)→タンパク質の順

DNA
 すべての生物に共通
  ヒト 30億塩基の長さの設計図
  デジタルデータ ;音楽データすべて
 冗長性のためネガポジの関係の二本鎖
 アナログで不確実な化学反応をデジタル化

RNA
 DNAの部分コピー ;プレイリスト
 タンパク 立体分子;音楽:アナログな耳に届ける
 ロバストなAI 多少のミスには耐えるシステム

ゲノムを読み説く≒リバースエンジニアリング
 計測技術と解析方法

エンリッチメント解析
 どの程度偶然なのかを定量的に観測する
 精度は100%ではないが、マイクロRNAの機能を予測

マイクロRNAでリプログラミング
 ゲノムをいじらないため、ガン化防ぐ

機能を知るために機能を停止してみる

タンパク
 クーロン力で外界を動かす ;スピーカー

 受容体=センサー 人間の光受容体は3元色のみ
 酵素
 抗体
 
ヘモグロビン 
 弱い結合で一酸化炭素(不完全燃焼)に結びつく
  脊椎動物 火の無い水中で進化

オプジーボ
 癌 免疫細胞のPD-L1と結合し正常細胞のふりをする
 先にオプジーボがつき癌のPD-L1が結合できない

アレグラ
 花粉症 炎症 防衛反応
 受容体に別のものを結合させ炎症を起こさなくする
 
代謝 =生物の動力
 化学反応でエネルギーを得る
 メタボローム
 三大要素(入力):タンパク 糖質 脂質

 電荷比ごとに物質を分離
  キャピラリー電気泳動動装置
  飛行時間型質量分析装置
 近年、網羅的に計測 同時定「量」解析=アナログ

 ワールブルク効果
  癌 酸素があっても解糖系でエネルギーを作る
   フマル酸呼吸

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2020年07月13日

Posted by ブクログ

生命はデジタルでできている、って最初見たときタンパク質のアミノ酸配列は、4種類の塩基の3つの並びでコードされている→デジタルなの言うまでもないじゃんと思っていた。あと転写や複製を行うための特殊な塩基の並びもコードだよねと。

しかしほとんどのDNAのデジタルデータはランダム或いは再初期化されていないノンコーディングなジャンクだとされていたのが、実はDNAからノンコーディングなRNAへの転写が次々に行われ、様々な制御を行っているなど、脇役どころかRNAたちの世界、トランススクリトームは細胞システムの主役のひとりであった、というのは大きな驚きだった。
RNA ワールドは、現在の生物の中にしっかりあるんだという衝撃。

ただ、分子内・分子間結合をクーロン力でひとからげに説明しているのは、ピュア物理学でいえばそうなのだろうけれど、言葉足らず的でわかりにくい。共有結合、水素結合、ファンデルワールス力による結合といった結合力の階層が、生命・デジタルの関係においても重要であるのに。

あとタンパク質を本書では、一貫して「タンパク」と記していたけど、呼び方が変わったのかな?あと調べてみよう。

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2020年06月13日

Posted by ブクログ

物理学者であるシュレディンガーは、生命とは何かという著作を残し後進に多大な影響を与えた。物理学科の先生が生命とデジタルとの親和性の高さをあらゆる事例を紐解きながら解説する。のびのびとした内容に著者の情熱が感じられた。これからこの分野を目指す方に良いかも。

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2020年08月11日

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