佐倉統のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
科学について語っているのは間違いないし,大事な側面について語っているのだけど,「科学とはなにか」と言われると個人的には「科学研究」あるいは「科学とはどういう営みか」と感じてしまう。
そういう側面がないわけではなし,科学とは科学研究だけではないので,私の認識の問題(偏り)でもあるけれども,本書はどちらかというと「科学知とはなにか」の方が適しているように思う。
でも,実は私のこの認識(科学とはなにか=科学研究or科学とはどういう営みか)自体が古臭いもので,その認識を改めようとした本なのかもしれないと思う部分もある。
10年後にまた読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
現代社会において科学はいかにあるべきか、一般の人間は科学技術といかに接していくべきかについて、科学の発展の歴史的な経過をたどりながら、読者を丁寧に導いてくれる。
科学の規範モデル、ロバート・マートンが提唱した理想主義的なCUDOSに対する、ジョン・ザイマンが現実の姿だとしたPLACEという対比。
科学者共同体の共有財産として知識を共有するという古典的な知識生産モデルから、特許による囲い込みに見られる経済原理の侵食。
1999年に発表されたブタペスト宣言を、今日的にバージョンアップするための考察。シチズン・サイエンス=市民科学の興隆に向けて。
ほぼ同時期に読んだ『解放されたゴーレム -
Posted by ブクログ
<感想>
経済的な意思決定をする際の脳活動について分析する「神経経済学」についての書籍。並行して読んでいた心理学の本で「感情はコントロールできない」ことを学んだばかりだったので、「本人の意思でコントロールできない脳の反応」の実験結果は腹落ちした。
自分のモヤモヤが科学的に実証されているという事実はとても救われた気持ちになる。
<アンダーライン>
・双曲割引による先延ばし(将来の報酬を現在の報酬より低く見積もる)
・指数割引の人は先延ばししない
・セロトニンのレベルが低いと目先の小さい報酬を選ぶ
・(ドーパミンの実験で)コメディーを見て笑って幸せになった人は、将来のことが考えられるようにな -
Posted by ブクログ
本書は、今から30年前に、環境問題を単なる科学技術的な問題や倫理的な問題として捉えるのではなく、現代社会が抱える根源的な思想的課題として捉え直すことを意図した、意欲的な著作である。
本書は、従来「自然対人間」の二項対立の構図で環境問題を捉える限界を指摘し、これを生物の進化や情報の観点から再構築する試みである。環境と人間は、DNAやメタ・ネットワークとしての生命の営みの中で一体化していると論じ、現代の環境危機は、情報の肥大化を伴う文化の発展によって引き起こされているとする。そして、この危機を打開しうる可能性を、コンピュータや人工生命といったテクノロジーの中に見出そうとする視座を提示している -
Posted by ブクログ
ネタバレ[ 内容 ]
環境問題はいまや世界的関心事であり、政治・経済・文化(倫理)、科学等の次元から論じられるが、〈自然対人間〉という二項対立を越える議論は数少ない。
本書は「環境と人間は生物の進化の織りなすDNAメタ・ネットワークとして一体化する」という立場から、環境問題とは情報の肥大化した文化によって人間が危機に立っていることを意味するとして、コンピュータに希望を見る。
生命をめぐる現代思想を軽快に駆け抜けて展開する論考。
[ 目次 ]
第1章 見取図(現状;思想的背景)
第2章 環境(環境問題複合体における環境、あるいは人間にとっての環境;生態学の環境、あるいは人間を含んだ環境;進化論の環境、