栗原康のレビュー一覧
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アナキスト大杉栄、関東大震災のドサクサに伊藤野枝とともに虐殺された大杉。
これまで大杉に関して書かれた本や、『自叙伝』、『日本脱出記』なども読んだが、今一つ、その凄さ、面白さが分からなかった。
本書は、大阪での米騒動で、米を売ろうとしない米屋に押し掛ける民衆の自発的な動きに興奮した大杉の姿から幕を開ける。
共産党的な上からの指示に従わせる硬い組織に反発する大杉、度々の発禁処分にもメゲずに頑張る大杉、はたからはだらしないと見える女性関係などについて、著者ならではの饒舌な語り口、織り交ぜられる突っ込みが、実に魅力的な大杉像を描き出している。
大杉の自由を求める姿には心打たれるもの -
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岩波新書にしては思い切った装丁に惹かれて手に取る。政治思想は元来不勉強分野だが、「アナキズム」についてまとまった形で読むのは本書が初めて。登場する思想家・活動家中、辛うじて名を知っていたのは大杉栄くらい、あとは和洋問わずほとんど聞いたことのない名前の連続でやや戸惑ったが、内容は新書らしくシンプルでわかりやすく、著者の思いがストレートに伝わってくる良書だと思った。
本書を一読して我が身を振り返れば、自分の信条を体現しているわけでもない国家や組織の価値観をいつの間にやら内面化し、当初は確かにあった衝動を忘れてしまったことに無自覚な自分に思い至り、冷や汗が出る。この「他人の自我」に従属する奴隷状態 -
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気が付けば、バブルがはじけてからこの方20年以上もずっと不況だ。
ならこれは不況ではなくて、通常なのでは?
いつかこの不況から脱却できると思うから、いろいろ我慢や辛抱をしたけれど、もしかしたらこれを通常とあきらめて、生活のあり方を考え直さなければならないのでは?
なんてことを、何の根拠もなく考えていたけれど、それに根拠を与えてくれる社会学者の著書。
といえば堅苦しいが、非常に軽く、いささか軽薄なほどに軽く、生活に即して考察した本なのだ。
1979年生まれの大学非常勤講師。
両親とともに埼玉の実家で暮らす。
今でこそ年収は80万くらいあるようだが、年収10万くらいの時に、稼ぎのない著者に代わ -
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大杉栄を尊敬する日本のアナキスト研究家である著者の願いは「はたらかないで、たらふく食べたい」ということ。やりたいことしかやりたくない。満員電車に乗ると吐いてしまう。その結果、30代独身、年収80万円。両親の家と年金をあてにすることで生きている。
そんな著者が古典文学や歴史にふれながら、自分の願いや境遇を納得させようと試みたのが本書。
いい年をして、はたらかない理屈をこねまくる著者だが、それが本心なのか、笑いのためなのか、他の野望があるのか、イマイチはっきりしない。
なんだかんだ言いながら、大学の非常勤講師とこうした本の印税で収入を確保しつつ、ニートを笑い飛ばす、ゆるい社会派エッセイとして -
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ニートのphaさんの本とか坂口恭平の本とか好きで読んでるけどそれとはちょっと毛色が違って、書いてるのがアナキズム研究者の人なのでやさしいアナキズム入門みたいなところもある。ただ根っこのところは「べつに金稼げる奴が偉いわけじゃないだろ、働かない奴も飯を食える社会のほうがいいだろ」ということで共通している。
基本はエッセイ調、著者の日常をコミカルながらも切実に描いている。結婚するために「ちゃんとした人」に頑張ってなろうとして、なれなくて婚約者に振られるところなどあっけらかんと描写しているが切ない。
よく読むとん?と思うところとか物騒なこともちょこちょこ言ってるけど(アナキズムの人に物騒なことを言う -
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独特の文体に、最初ちょっと面食らう。
が、自分のツボには結構はまった一冊だった。
老後のために貯蓄。
明日ちょっと楽になるために、今日のうちに準備しておく。
こういう考えを美徳として育った。
今日も、明日も、きっとこうしていくのだろう。
ところが、それで長い間やっていくと、ふと気づく。
いつ「楽ができる」未来が来るのか。
このまま終わってしまうのではないか。
自分が何かに囚われている。
金銭に?
あるいはものを所有することに?
それどころか、労働そのものに?
年を重ねていくと、年々この気持ちはリアルに切迫してくる。
こんな心境でいると、この本の記述は刺ささること、刺さること。
筆者のよう -
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NHKBSで「英雄達の決断」という番組をやっていて、あるとき取り上げられていたのが一遍上人。そしてそのときコメンテーターとしてこの本の著者が出演しており、かれの“アナーキズム研究家“という珍しい肩書きと解説のわかりやすさに惹かれ、彼が一遍について描いた著書を読んでみることにした。
一般的な伝記とは異なり、独特の文体で描かれているので最初はやや面食らう。なんだろう、町田康みたいな感じ。
さすがアナーキストというか。ロックな感じというか。
一遍がいかにして浄土宗に帰依し、そして踊り念仏に目覚めて時宗の開祖となり、諸国を漫遊していくのかをきちんと史実に沿って描きながらも、おそらく著者が一番強調したい