Minoruのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ美大生たちの自身の作品に対する作風や姿勢と言うか、解釈やら考え方やら感じ方が実に多種多様。
しかも作品が写真や日本画、立体物など多岐に渡っていながら、前述の通り、その多様さを見事に表現している。
タイトルに『怪談』とあるとおり、これはオカルトの話ではあるのだが、そう言った美術視点から見ても非常に奥が深く、これは経験者でないと描けない作品ではと感じていたところ、後書きを見て納得。
美大出身者でしたか。
うん、そうでないと、あの細やかな美術の話は描けないと思う。
美術好きも楽しめるお話ですぞ。
自身が描いた人物画に異変が現れると、その人自身に怪異が迫っている。
そんな特殊能力を持った美大生の月浪縁と、彼女に親友を救ってもらった恩義から彼女に関わるようになった写真専攻の美大生、啓介が様々な怪異を「怪談」でもって祓っていくお話。
先述の美術描写も細やかなら、彼女の特殊能力のルール、怪異を祓う際のルールも細やかに設定されている。
話の構成も気配り(要は伏線)がなされており、それぞれ単発の話で解決しながら、少しずつ、まるで川底に砂が堆積するように、あることが積み重なっていき、最後の話でそれが爆発するという。
何もかも綿密に練られた物語だったなと感じた。
理詰め、いや詰め将棋を見ている感覚というか。
そもそも月浪縁が「私つえぇええ」系のキャラではない。
頭の回転は確かに早く、ルールに則って相手に「怪談」を語らせることにより怪異を克服させていくのだが、万能ではない。
母親やお兄さんの方が、そういう意味では強いくらい。
事実、彼女の弱さや抱えていたものが、最後の話でがつんっと爆発する。
それを食い止めるのが、今までずっと彼女と行動を共にしていた啓介。
立場が逆転してからの彼女との攻防、不器用ながら全力でぶつかっていく啓介、かっこよかったよ。
オカルトとしても楽しめて、美術ものとしても楽しめる。
最初、一人称と三人称が場面ごとで切り替わるので混乱したところもあったが、慣れると「ああ、ここが日常パート」「ここから怪談パートか」と分かりやすくなった。
すっきり解決できる話もあれば、ぞわぞわっと背筋の凍る話、ついに犠牲者が出る話、大物の「怪異」が登場する話と、とにかくネタが豊富。
先が気になる展開が多くて、ほぼ一気読みしてしまった。
ある意味特殊な魅力の詰まった作品、ゆえに嵌った人は抜け出せなくなるのではと思う。
自分のように。
続編も「カクヨム」連載とのこと、楽しみだ。 -
Posted by ブクログ
発売日後、なかなかチャンスがなく手に取るまでに少し時間がかかりましたがやっと読むことが出来ました。
陰陽五行や魑魅魍魎がニギニギ詰まっている、架空だけれどどこか懐かしさがあるような不思議の国を舞台にしたお話です。
登場人物たちはくるくるとよく動きまわり、アニメーションを見ているかと錯覚させるよう。また内容は色彩に溢れ、話はのびのびと進んでいき、気兼ねなく楽しく次へ次へとページを進めることが出来ました。
かまどを任されている主人公の菓子作りへの創意工夫の行く末は勿論ですが、恋愛(ばかりではありませんが)もストーリーの主軸になっているのでこの先彼女が恋を知っていく女性としてどう成長していくのかがとても楽しみです。
手にとったそもそものきっかけであるイラストレーターのMinoruさんの筆致も期待を裏切らない、応え過ぎるほどの物でした。
表紙も挿絵もどれもこれも隅々まで手を抜くことなく描かれた作品をみて、彼女のイラスト以外でのこの小説の世界を思い浮かべるのが難しいと思えるほどです。
第二巻もとても楽しみにしています。 -
Posted by ブクログ
川上佐都さん2作目。
なかなか良かったです(なんか上から目線で申し訳ないです)
誰かと暮らすということは、ワクワクもするしとても楽しそうに思えるけれど、実際はとても難しいと思います。
私は子供の頃は当たり前のように親兄弟と祖父母と暮らしていたけれど、一度家を出て何十年ぶりかに戻って一緒に暮らすと意外と難しい。きっと、相手も同じように感じているかも…と思い、今は仕方のないこととして受け入れて上手に距離をとることを勉強中です。
そんな「誰かと暮らす」ことが描かれていました。きっと、似たような感情は抱いたことがあるのでは?と思えました。
他人と暮らすこと、関わることを通して、自分の他人との繋がりを改めて考えました。
自分が息苦しくない所に居たいなと思います。