長田佳奈のレビュー一覧
-
ネタバレ 購入済み
昭和初期の風景が心に響く
大きな事件は起こらないのに、未亡人の翻訳家の女性と14歳の住込みの女中さんの日常風景が心に響く。
あえてそう描いているのだろうけれど、ハナちゃんが心で思うことが文字で語られることはない。
この、漫画でこそ表現できるハナちゃんの愛らしさに悶えてしまった。
まんまる眼鏡にへの字口、かつての先輩女中から無愛想と言われる無口なハナちゃんの目が彼女の心象を鮮やかに語りまくるのだ。
親がいないことも妙齢の女性が独り身で仕事で身を立てることも困難の多い時代だけど、真摯に優しく生きる2人も周りの人達も皆素敵で、自分もこんな風にありたいと思った。
この時代の文化や人々に愛用された製品の紹介も興味深くて、読むのが楽しい。
-
匿名
無料版購入済みひとつひとつの描写が丁寧でじっくり読みたくなる作品だあった。
着物を仕立て直す方法とか、そうやってやるのか~と勉強になった。
ハナと先生の関係も良いな。
表情はあんまり動かないけど、まじめにきっちり仕事をこなすハナ。
そんな彼女にかまいたくなる気持ちはわかる気がする。 -
ほんとすき
子供の頃から大正〜昭和初期の時代背景が大好きだったので、服も家具も和洋折衷のおうちも好きすぎますっ!
でも日本はこの後必ず太平洋戦争が始まり、辛い日々に突入してしまう
その前までの話をたくさん読みたいんですっ! -
素敵〜
昭和の戦争が起こる前の時代、オシャレで可愛くて女性も家庭からだんだん出るようになったら時代
だけど、それはほんの少しの恵まれた人たち
女主人と女中さん、対照的な2人が仲良くてほのぼのします -
Posted by ブクログ
昭和初期/女中もの。相変わらず当時と現在の差を感じながら読むのが面白い。
大まかに100年ぐらい前の日本が描かれた内容だが、現代との生活コスト配分の差にいつも驚く。
今回一番驚いたのは布団の打ち直しだった。今からすると絶対にしない作業だと思うが、まぁでもそうなるかという感じ。
その他にも、昔は食事を手をかけて作れるほど余裕がある時代だったんだろうな、などとなんとなく思っていたが、実際には作らないとできなかったが正しかったんだろうなと思い直した。電化製品などの発達に感謝するほかない。
個人的には拾円を1日で使い切るとしたらどうするかを考える「拾圓のゆくえ」が楽しかった。
現代換算だと5万円ぐらいだろうか。ちょっといい所のランチに1人5000円の予算で行くと考えると、物の価値は変わっているが、感覚的にはそう変わっていないのかもしれないと思った。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ我が家にあった布団針の使い方がようやく分かった。だからあの長さだったのか…。
当たり前だが一日中働いていないと用事が片付かない時代だったのだと改めて感じた。車や電車があるとはいえ、家庭内の仕事はほぼ手作業の恐ろしさよ…。
万太郎君の姉との邂逅は笑った。
弟と属性が近いはなちゃんとも仲良くなれると思うよ。吉田さん。
38話 日本は何度も震災を経験し、何度も立ち上がって来たのだろうと思わされた。
日常が忙しくてもふと見た風景の美しさや、「いつか」が確実にやってくるわけではないからその時々を大事にしなくては という、当たり前じゃない日を知るからこその思いを感じた。 -
Posted by ブクログ
かつて貧しさが当たり前だった時代。住み込みで奉公先の家事一般を受け持つ「女中」は女性の仕事として一般的で、少しゆとりのある家庭なら普通に女中を置いていたものでした。
これは、そんな時代に健気に生きた「ちいさな女中さん」の物語です。
シリーズ2作目。第7話〜第12話を収録。
◇
野中ハナが蓮見家住み込みの女中になって1か月が経った ( たぶん5月の ) ある日。ハナは令子からノートを1冊もらいます。
ずいぶん前に買って戸棚にしまいこんだまま忘れていたものなので、ハナの好きにしていいとのことですが、ハナはどう使えばいいのかわかりません。
戸惑うハナを見て、日記をつけてみたらと令子がアドバイスしたところ……。
( 第7話「ハナの日記」)
* * * * *
14歳のハナの受け答えや立ち居振る舞いには、真面目で誠実な性格がよく表れていて微笑ましく好感が持てるのですが、その反面、幼い頃に両親を亡くしてから現在までのハナが過ごしてきた日々も思いやられて、少し胸が痛みました。
引き取られた親類宅で過ごした日々。10歳で女中奉公に出されてから女中の心得を身に着けていった4年間。
ハナがひたすら有用の人たらんとし続けたのだろうことは想像に難くありません。
例えば第1話で令子からもらったノート。ハナは最初は家計簿にしようとしましたし、日記をつけるよう令子に勧められて書いた内容は1日の女中仕事を記録したもので、いわゆる業務日誌でした。
さらに第3話では、隔週で1日の休日をもらえることになったハナには、喜びよりも戸惑いのほうが大きいようでした。
ノートのときもそうでしたが、「自由にできる」ということにまったく慣れていないハナにとって、自由時間などどう使えばいいのか考えたこともないからでしょう。有用第1で生きてきたことがよくわかるひと幕です。
また、それに気づいた令子が外出に誘った際のハナの出で立ちにもハナの心中がよく表れています。
ファッション性など考えない実用性重視の格好。思わず笑ってしまいますが、ハナが子どもなりに養ってきた観念を思うと、やはり胸が痛みます。
それだけに、令子から少しずつ視野を広げてもらいながら成長するハナの姿が輝いて見えます。
本巻では「洋食」 ( ライスカレー ) 、 「映画」、「デパート」 ( エスカレーター、マネキンガール ) 、「クリームソーダ」が、ハナに衝撃を与え、氷冷蔵庫の使い方や自宅でのアイスクリーム作りがハナのスキルアップに繋がる様子が描かれます。
そして、そんなハナを見守ることで、最愛の夫を亡くし若くして未亡人となった令子の傷心が徐々に癒えていく様子もまた、作品の大きな魅力であることがよくわかります。
個人的にもっとも印象に残ったのは、最終話「夏支度」です。
6月になると衣服や建具および調度類を夏仕様に替える必要がでてきます。「衣替え」とはそのための夏支度を指し、人間だけでなく住まいの衣替えも行う日というわけです。
その様子が丁寧に描かれる長田さんの絵には、何とも言えない趣があってため息が出ました。
2人がかりで「衣替え」を終えたあと、銭湯に行ってさっぱりした帰り道。令子たちは屋台に並ぶ風鈴を1つ買い求めます。
庭に面した部屋の軒に吊るした風鈴を令子と一緒に眺めるハナの表情が、14歳の子どもらしくてとても好もしく感じました。 -
Posted by ブクログ
かつて貧しさが当たり前だった時代。住み込みで奉公先の家事一般を受け持つ「女中」は女性の仕事として一般的で、少しゆとりのある家庭なら普通に女中を置いていたものでした。
これは、そんな時代に健気に生きた「ちいさな女中さん」の物語です。
シリーズ1作目。第1話〜第6話を収録。
◇
時は昭和9年、季節は初夏を迎えた頃のことでした。
蓮見令子はその日も朝から書斎にこもって執筆に追われています。南中にあった日が傾き始めた頃、原稿の完成にもようやく目処が立ちました。時間を見ると3時前です。
ひと息ついた令子は、そう言えば今日は女中さんが新しく来るのだったと思い出しました。
ひとり暮らしの令子は、翻訳の仕事が忙しくて家事にまでなかなか手が回りません。そこで山梨に住む叔父に頼んで、信頼できる女中さんを1人寄こしてもらうことにしたのでした。その女中さんは夕方頃に訪ねてくるはずです。
とにかく編集者が原稿を取りに来る3時半までに書き上げてしまおうと令子がペンを走らせていたところ、玄関の扉を叩く音がします。時計を見ると3時です。編集さんかと思って出てみると、衣装行李を背負った少女が立っていました。
用件を尋ねると、今日から女中としてお世話になる野中ハナと申しますと言うではありませんか。
叔父からの手紙によると、来ることになっている女中は佐竹フヨという22歳の娘のはずですが、目の前に立っているのはどう見てもまだ子どもです。
そのことを聞いてみると、理由あって自分が来ることに相成りました、それにつきましては改めて紹介状が届いていると存じますがと少女は言います。
ハッと気づいた令子が郵便受けを確認すると、かなりの郵便物が溜まっています。忙しさにかまけて郵便受けを見るのを忘れていたのでした。その中に叔父からの手紙があり、佐竹フヨに代えて野中ハナという14歳の娘をそちらに遣ることにしたと書かれています。
まもなく3時半です。とりあえずハナを応接間で待たせることにして、令子は急ぎ書斎に戻ったのでした。 ( 第1話「ちいさな女中さん」)
* * * * *
主人公のハナと令子の他、主要人物が何人か登場しますが、そのプロフィールはまだ明かされていません。
なのに、それをじれったくも不満にも感じることなく読み進めることができる。そんな空気感が本作にはあります。
例えば、ハナは幼い時分に両親を亡くし、親類に引き取られて育ちます。けれど10歳で女中奉公に出されて現在に至るということしかわかりません。付け加えるなら、その奉公先が令子の叔父宅であり、当初令子のもとにくるはずだったフヨもそこに住み込みで働いているようです。
令子は翻訳家として自立しており、さらに上品かつ思慮深いという、この時代の女性としてはかなり上流の出身であり、リベラルな知識階級であることがわかることと、結婚まもなく夫を亡くしていて、その傷心から完全には立ち直っていないことが終盤にほのめかされるぐらいです。
他には甲府で暮らす令子の叔父や奉公人のフヨたちが少しばかり登場しますが、令子やハナの事情をチラ見せする役割を担っているようです。
また、令子の事情をよく知ったうえで令子を気遣う役割で登場するのが、カフェ・ミチクサを1人で切り盛りするみっちゃんという女性です。
彼女は、令子とハナというそれぞれの「孤独」を抱える2人が、ともに暮らすことによって変わっていくさまを読者にそれとなく語ってくれるようです。
そんな事情が少しずつ明かされていく緩やかな展開なのですが、昭和初期のゆったりした時間が流れる時代によくマッチしていて、却って心地よさを感じます。
それから、物語6話中、ハナと令子の心の交流以外で印象に残ったのは、第3話「台所譚」と第5話「着物話」です。
「台所譚」では、当時としては先進的な調理器具だった瓦斯コンロが登場します。爆発するのでは ⁉とガスを恐れてしまうハナの気持ちが伝わってくるようで、微笑ましく思いました。
「着物話」は、令子から着なくなった着物をもらったハナが自分に合うように仕立て直す話なのですが、丁寧に手際よく洗い張りするシーンの描写がとても美しく、清々しい気持ちになりました。
* * * * *
以前から気になっていた作品でしたので、思いきって購入することにしました。
セリフはそれほど多くなく、絵で惹きつけるタイプのマンガです。読後、買ってよかったと思いました。さっそく続巻も買うつもりです。