あらすじ
昭和初期、14歳、女中。うちに来てから早一カ月。初めてのお休みに、令子さんと東京見学へ。そこは初めて見るものばかり。映画、マネキンガール、エスカレーター、メロンクリームソーダ。見るものすべてが新鮮です。
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Posted by ブクログ
かつて貧しさが当たり前だった時代。住み込みで奉公先の家事一般を受け持つ「女中」は女性の仕事として一般的で、少しゆとりのある家庭なら普通に女中を置いていたものでした。
これは、そんな時代に健気に生きた「ちいさな女中さん」の物語です。
シリーズ2作目。第7話〜第12話を収録。
◇
野中ハナが蓮見家住み込みの女中になって1か月が経った ( たぶん5月の ) ある日。ハナは令子からノートを1冊もらいます。
ずいぶん前に買って戸棚にしまいこんだまま忘れていたものなので、ハナの好きにしていいとのことですが、ハナはどう使えばいいのかわかりません。
戸惑うハナを見て、日記をつけてみたらと令子がアドバイスしたところ……。
( 第7話「ハナの日記」)
* * * * *
14歳のハナの受け答えや立ち居振る舞いには、真面目で誠実な性格がよく表れていて微笑ましく好感が持てるのですが、その反面、幼い頃に両親を亡くしてから現在までのハナが過ごしてきた日々も思いやられて、少し胸が痛みました。
引き取られた親類宅で過ごした日々。10歳で女中奉公に出されてから女中の心得を身に着けていった4年間。
ハナがひたすら有用の人たらんとし続けたのだろうことは想像に難くありません。
例えば第1話で令子からもらったノート。ハナは最初は家計簿にしようとしましたし、日記をつけるよう令子に勧められて書いた内容は1日の女中仕事を記録したもので、いわゆる業務日誌でした。
さらに第3話では、隔週で1日の休日をもらえることになったハナには、喜びよりも戸惑いのほうが大きいようでした。
ノートのときもそうでしたが、「自由にできる」ということにまったく慣れていないハナにとって、自由時間などどう使えばいいのか考えたこともないからでしょう。有用第1で生きてきたことがよくわかるひと幕です。
また、それに気づいた令子が外出に誘った際のハナの出で立ちにもハナの心中がよく表れています。
ファッション性など考えない実用性重視の格好。思わず笑ってしまいますが、ハナが子どもなりに養ってきた観念を思うと、やはり胸が痛みます。
それだけに、令子から少しずつ視野を広げてもらいながら成長するハナの姿が輝いて見えます。
本巻では「洋食」 ( ライスカレー ) 、 「映画」、「デパート」 ( エスカレーター、マネキンガール ) 、「クリームソーダ」が、ハナに衝撃を与え、氷冷蔵庫の使い方や自宅でのアイスクリーム作りがハナのスキルアップに繋がる様子が描かれます。
そして、そんなハナを見守ることで、最愛の夫を亡くし若くして未亡人となった令子の傷心が徐々に癒えていく様子もまた、作品の大きな魅力であることがよくわかります。
個人的にもっとも印象に残ったのは、最終話「夏支度」です。
6月になると衣服や建具および調度類を夏仕様に替える必要がでてきます。「衣替え」とはそのための夏支度を指し、人間だけでなく住まいの衣替えも行う日というわけです。
その様子が丁寧に描かれる長田さんの絵には、何とも言えない趣があってため息が出ました。
2人がかりで「衣替え」を終えたあと、銭湯に行ってさっぱりした帰り道。令子たちは屋台に並ぶ風鈴を1つ買い求めます。
庭に面した部屋の軒に吊るした風鈴を令子と一緒に眺めるハナの表情が、14歳の子どもらしくてとても好もしく感じました。
かわいい日常
感情表現が下手そうな「への字口」が、
逆に感情を良く表している。
先生とハナちゃんの心の交流が、
平凡な日常の中で丁寧に描かれていて、
心癒される作品です。
時間の流れが心地良い
便利なものに囲まれて忘れがちな事を思い出させてくれる。丁寧な手仕事が描かれていて明治生まれの祖母を思い出した。ハナちゃんの驚きが楽しい。穏やかな気持ちにさせてくれる。
Posted by ブクログ
とても良いな。真面目で健気なハナちゃんが世の中や物事を知っていく様子がとてもきらびやかな目をしていて可愛い。主人との関係性も姉妹みたいで家族のような温かさを感じられてホッコリ。
表情が見えてきてかわいい
あまり感情を顔に出さないハナちゃんが新しいことに触れたりして驚きや感動を表しているとこちらまで微笑ましくなる。癒しが欲しいときに読みたくなる。玲子さんとハナちゃんの暮らしがこのまま続いてほしいけど、そもういかない時がくるのかな?と少し不安。
ゆっくり
ゆっくりじっくり生活が流れていく感じが良いです。時代背景が機械化されていないので、人の生活が丁寧で。小さな女中さんの反応がカワイイ。文明が進むという時はこういう反応なんだろうなー
ほのぼの
幼い女の子が女中として働く。タイトルだけ見れば若干ネガティブですが、内容はとてもほのぼのとしたものです。
現代では考えられない環境(瓦斯コンロや氷の冷蔵庫や和装での生活)の中で女中として働く14歳の女の子「野中ハナ」の毎日が綴られていきます。表情の変化が乏しい彼女ながら驚きや発見に眼が輝き、雇い主の女性から大事にされていると実感するシーンなど、読み進めていくうちに思わずニコニコしている自分が居ます。大事にしたい作品のひとつです。