原田隆之のレビュー一覧
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「このような(相手を魅了する)特徴を備えた者だからこそ、サイコパスは、連続殺人事件のような特異な事件を起こすことができるのだ。連続殺人事件を犯すためには、数多くの被害者を言葉巧みに誘い出して魅了することができなければならない」
恐ろしい、シリアルキラーというイメージのサイコパス。本書では、サイコパスの特徴、原因などを科学的に解説するが、サイコパスの責任能力の議論では「自己とは何か」を問うたり、人類全体の遺伝子プールとしてサイコパスが現代にも存続している可能性に言及したり、ヒトラーを選んだようにサイコパスを指導者に選ばないようにする必要性を訴えたり、と単なる科学的な側面だけでなく哲学や社会につい -
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依存症の中でも性的問題行動の治療に関わる著者。痴漢(全てではないが)を依存症の観点から見ること自体、新しい知識だった。
読んでいくと、加害者の治療・再犯の予防が必要と著者が強く訴えることに納得できる。治療と聞き、加害者を守るのかと反感を感じた人ほど本書を読んで欲しい。新しい被害や再被害を防ぐ視点が社会に広まって欲しいと思う。
また、専門家の性犯罪再犯リスクのアセスメント的中が50%と言う話から「高い金を払って専門家を雇うくらいならば、ワールドカップのときに予想を次々と的中させたタコでも飼っておいたほうがよいだろう」に笑った。
批判的な一般人の意見はまだしも、経験則や感情のみで動く自称ベテラン -
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とにかく加害者被害者ともに壮絶な体験をしている。それらを知ることが出発点だろう。
以下メモ
性犯罪の再犯率は5%。しかし痴漢や盗撮の再犯率は30~50%ほどある。厳罰化は再犯率を増加させるというエビデンスもある。(適正化は必要だか)
DSM5にもICD10にも疾患(パラフィリア障害群)として分類されている。(ICD11では「強迫的性行動症」が新たに追加)
性犯罪のリスクファクターはその他の犯罪と基本的に変わらない。(反社会的な行動歴、交友、態度信念、パーソナリティ。教育や仕事上の問題、家族葛藤、物質使用、不適切な余暇活用。)
犯罪者治療には「RNR原則」というものがある。リスク原則は、リ -
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冒頭に"治療を伴わない刑罰は再犯防止効果がない"とあったが、重要な指摘だと感じた.性依存症の存在を否定する学者らの言い訳を、地道に確実に乗り越えて、再犯率の低下を得ている事実は素晴らしいことだ.フロイトの精神分析の欠点や過ちを認めないで、古い知識に拘泥している学者の存在を指摘していたが、どの世界でも常に新しい知識を吸収する努力は絶対必要だと感じた.性依存症にはパラフィリア障害と脅迫的性行動症があるとの指摘で、前者には痴漢や盗撮、後者には過剰なセックスやマスターベーション、風俗店通いを例示していたが、いずれも治療可能だと強調している.参考になった.
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■強い意志を持つこと,我慢することは確かに重要。反省ももちろん重要。しかし,それで収まるなら苦労はなく,むしろそれで収まるくらいならそもそも依存症ではない。圧倒的な衝動に突き動かされて理性や意志の力がなぎ倒されてしまうのが依存症の本質。
・脳が乗っ取られたような状態になり意志の力では太刀打ちできなくなる
・意志の力に訴えかけ反省を促す「処罰」だけではこの問題を解決できない
■痴漢の再犯率は30%とされているところ,痴漢外来で治療を受けた人の再犯率は3%弱。
■DSM-5(精神障害の診断と統計マニュアル)やWHO(世界保健機関)の国際疾病分類(ICD-11)には「窃触障害」という疾患がリストアッ -
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重大犯罪が発生すると、犯人の生育歴も含めた報道がされることもあるけれど、覗き趣味を満足させる程度の報道でしかないように感じる。こういう知識を付けたら、また違った見方ができるのではないかと思って借りた。自分の身を守る役にも立つではという期待もある。あとはこういう本もあるんだ、という好奇心。
ありふれた事件は報じられない。たくさん起こっているのに、いちいち報じていたら、きりがないから。面白くもないし。ありふれた事件にはニュースバリューがない。だから報じられない。
私たちがニュースやワイドショー、週刊誌などで接する「犯罪」は、報道用に作られた「ストーリー」であって、事実とは異なっている可能性が多い