【感想・ネタバレ】入門 犯罪心理学のレビュー

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Posted by ブクログ

加害者は罰するべきという従来の考えを脱却し、加害者に今後再犯させないためにはどうするべきかに焦点を当てた本。専門用語を使う際には必ず説明があるので、初心者にもやさしい。

犯罪者で一括りにするのではなく、どうして犯罪に走ったのか、再犯しそうかそうでないかなどで細分化していき、細やかに治療を行うことで再犯率の低下につなげることができる。

個人的に、わずかな人達だけで6割もの犯罪がなされているというデータが衝撃だった。

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2023年06月28日

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人はなぜ犯罪を犯すのか。
どうすれば再犯が減るのか。
という内容ではありませんでした。

むしろ
科学的な根拠に基づいて、人々が幸せに暮らせる社会を作るためにはどうすればいいか。
という方が近いです。

教育学もこのように、正しくアップデートして行かないといけないと思いました。

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2021年12月29日

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重大犯罪が発生すると、犯人の生育歴も含めた報道がされることもあるけれど、覗き趣味を満足させる程度の報道でしかないように感じる。こういう知識を付けたら、また違った見方ができるのではないかと思って借りた。自分の身を守る役にも立つではという期待もある。あとはこういう本もあるんだ、という好奇心。

ありふれた事件は報じられない。たくさん起こっているのに、いちいち報じていたら、きりがないから。面白くもないし。ありふれた事件にはニュースバリューがない。だから報じられない。
私たちがニュースやワイドショー、週刊誌などで接する「犯罪」は、報道用に作られた「ストーリー」であって、事実とは異なっている可能性が多い。
私たちは犯罪もエンターテイメントとして享受している。

では、犯罪の事実とは?犯罪は人間の一側面を表している。犯罪の事実は人間の事実だ。

人間の行動は、生物学的要因(遺伝負因や器質的要因)と環境的要因(家庭、学校、社会)との相互作用による。様々な原因が複雑に絡み合って作用して、人間の行動は導き出される。人間の行動の原因を、目立った少数の原因にして単純化して説明しようとしても、正しい理解はできない。


自己統制力とは、自分の欲求や感情をコントロールする力のこと。これが欠如しているのは、犯罪の危険因子だと考えられている。
ある種の遺伝的負因を持つ子供は、自己統制力が弱くなると分かっている。特にその遺伝的負因としては、脳の高次機能を司る部位の構造や機能の欠陥など、神経心理学的な要因が考えられている。
しかし、その遺伝的負因は、恵まれた環境で育った場合は、影響力を発揮しにくく、逆に不適切なしつけを受けた場合にのみ影響が現れる。
遺伝子単独でも、環境要因単独でも影響は限られているが、双方が合わさった時、その相互作用によって自己統制力は強まり、あるいは疎外される。
これは犯罪傾向だけでなく、様々な人間の特質にも当てはまる。本人が生まれ持った生物学的脆弱性に、環境からのストレス要因が作用して、ある種の傾向が発現するメカニズムを、ストレス脆弱性モデルと呼ぶ。
どのような種類の行動であっても、まず遺伝的な要因、持って生まれた生得的な要因の影響を受ける。しかし、同じ生物学的基盤を有していても、環境からの影響によってそれがどの程度発現するかは異なってくる。
また、生物学的脆弱性を持っていると、環境からのネガティブな影響を受けやすいという場合もある。同じ環境の中にあっても、生物学的な素地によって、その影響の度合いが異なってくる。


人は成長の過程で周囲の環境から多くを学び、人間としての振る舞いを身につける。そのプロセスを「社会化」と呼ぶ。幼児期の重要な社会化の担い手は、両親を筆頭とした家族だ。学齢期に進むにつれて、友人からの影響が大きくなり、また家族以外の大人からの影響も受けるようになる。
幼い頃は物理的な近接が友だち選択の条件だったが、成長に従って、自らが友人を選択するようになっていく。その結果、行動様式や価値観が近い者同士の交友になっていく。
社会化のプロセスは、社会的学習と強化によって進む。周囲の人の行動を見て学び、自分の行動に取り入れる。相手の価値観や集団の規範に合致する行動を取れば、賞賛され強化される。逆に、それらにふさわしくない行動を取れば、叱責や批判の対象となる。
社会化の過程は、その人のパーソナリティーや認知を形成する上でも重要だ。


イスラエル生まれの犯罪学者カスピ(Avshalom Caspi)は、モノアミン・オキシダーゼA遺伝子(Monoamine Oxidase A: MAOA)の活性が低い子供が虐待を受けた場合、非行が出現しやすくなるが、そうでない子供は虐待を受けても非行に至らないケースが多いことを発見した。(2002)MAOA遺伝子は攻撃性や衝動性を抑える働きをする。MAOA遺伝子活性が高いと、劣悪な環境が非行などの問題行動となって現れることから子供を守ってくれる。MAOA遺伝子活性の高低が影響するのは、生育環境が劣悪であった場合のみで、生育環境に問題がなかった場合は、遺伝子の影響も見られない。遺伝と環境の相互作用で、犯罪行動の出現が変わってくる。虐待と非行に関連があるという定説は、非常に単純で物事の一面しか見ていない迷信だ。 p.157~ 虐待と非行との関連

MAOA遺伝子の活性が低い者は、高い者の半分程度しか居ない。虐待の影響を受けない者の方が多い。苦しむのは、他人を苦しめたり傷つけたりすることとは関係がない。
「被虐待体験とMAOA遺伝子欠如の双方を有する者は、人工全体の約12%ほどであり、その中の比較的少数の人びとが世の中の犯罪全体の44%に関係している。これは、モフィットの生涯継続型犯罪者を思い出させる数値でもある。生涯継続型犯罪者には遺伝負因が影響していることは先に述べたが、MAOA遺伝子欠如はその候補の一つだと言える。」p.160


覚醒剤依存は世界的には新しい社会問題なんだ。

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2017年07月06日

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犯罪心理学の流れだけでなく、日本での犯罪者治療の現状も書かれており、私のように専門的知識がないものにはとてもわかりやすく読むことができた。

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2016年06月23日

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犯罪心理学の専門家として、様々な機関で活動してきた著者による、「真っ当な」犯罪心理学入門。

科学的エビデンスに基づいた犯罪理解、犯罪対策の重要性を説く。
従来の心理学(たとえば、フロイト流の精神分析やロールシャッハテスト)が、いかにエビデンスに基づかない「似非科学」であったかがよくわかる。

難解な専門用語などは使わず、具体例豊富かつ科学的エビデンス(根拠)に基づいた記述のため、とても読みやすく腑に落ちやすい。

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2016年04月10日

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心理学系で見知らぬ人の本を読むのは大きな冒険だが、アンチフロイトでDSMとか言ってるし大丈夫そう。序盤は膨大なデータとか言いながら出典出てこないしダメかと思ったが…
犯罪者について、心理学については慎重にエビデンスから言えることのみを扱っており良心的だったが、そこから外れると無根拠な断言がやたらと目立ったのは気にしすぎだろうか… まあ本筋とは関係ないところだけどね。
統計的に確かと言える犯罪者になりやすい要因、再犯しやすい要因はどのようなもので、どうやったらそれを治せるかについて、など。

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2015年04月08日

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エビデンスに基づく犯罪に対する心理援助的な関わりとその方法が、とても丁寧に書かれていて、とても面白い。

自分の仕事に役立ちそうだし、児童を相手にしているので、予防的に対応していく場面が多いと思うけど、再犯防止のために必要な要件とかを考えるエビデンスは、非常に参考になった。

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2015年04月05日

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ネタバレ

人が犯罪に走る原因は、生得的な説明だけでも、環境的な説明だけでも、社会的な説明だけでも不十分。さまざまな要因が絡み合い複雑に影響し合っていることを理解しなくてはならない。

犯罪者に共通するセントラルエイトという因子が研究によって明らかになった。
そのうちの一つは「余暇活用」。暇で何もすることがない人は犯罪を犯す傾向があるというのだから驚き。余暇を充実させようという気分になった。

現在の臨床心理学で用いられている手法には懐疑的。ロールシャッハへの懐疑的意見はもちろん、PFスタディーやSCTにも懐疑的である。

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2021年08月14日

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犯罪心理学の入門書。犯罪の現状から犯罪心理学の歴史、危険因子、アセスメントと治療、実際例など基本的な部分は網羅されている。特徴はエビデンスに基づいた効果のある方法や理論だけを紹介していることである。エビデンスという言葉もまたなかなか直観に合わない言葉ではあるが、この本を読めばエビデンスを追求すべき理由がよくわかる。「犯罪は厳罰化すれば良い」と信じる人には特に読んでほしい一冊。

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2021年01月24日

Posted by ブクログ

思い込み、勘を否定し、データによる根拠のある論を展開。
なぜ人は犯罪者になるのか?
その点に付いて興味のある人にはお勧め。

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2021年01月17日

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ネタバレ

犯罪心理学に興味を持った初心者には分かりやすく読みやすかったです。筆者が言いたいことは、現代の日本の犯罪心理学は主観的な考え方で各々の事件の要因を決めつける傾向があり、客観的なデータとしての対策をすることが少ない。つまり、科学的な根拠を元にした犯罪心理学があまり発展してない。
日本の犯罪は刑罰を下すだけで、その後のことを考えた対策をあまりしていなく犯罪者に対しての治療が外国と比べ少ないことを伝えたいと分かった。
筆者はとにかくセラピーなどのような人間が人間を治療するという、その指導する側の判断で分析するような心理学はほぼ意味がなく科学的な心理学が必須だと伝えていた。

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2020年11月13日

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入門と謳っている通り、入門書として完璧に近い仕上がり。読んでて凄く知的好奇心が刺激されるし、疑問が湧いてくる。面白かった。筆者の書き方が学者っぽくもありながら例やデータを沢山上げて解説してくれるからわかりやすい。

心理学の証拠を重視する姿勢から、様々な学者や説に対してその信頼性などを示していくのが特に面白かった。

ただ、情報量が多いので1度では完璧に理解しにくい。最低2周読むことが必要。(個人差があるが...私は無理だった)なので星4

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2020年06月22日

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結局、犯罪対策とは「犯罪を犯す人と犯さない人の違いは何か?」なのだろうけど、それは、社会階層や貧困や知能や精神病歴や幼少時のトラウマではなく、反社会的なパーソナリティや交友関係、認知癖を持つかどうかなどハードルを超えやすい行動様式を持っているかどうか、なんだな。

生まれつき(衝動をコントロールできるか、他人に共感できるか、刺激を求めがちか)と育った環境(違法性への価値観、仲間)も影響がそれぞれあり。

犯罪を起こしやすい因子を複数持つ人たちが必ず一定数(数%)いて、犯罪の約半分に関わっているという話。
そして、犯罪を起こしやすい因子を持っていても、必ず犯罪を起こすとは限らない。

「犯罪的他者への同一化」とか、女性を性的にモノ化した表現を肯定的に受け入れてしまっていて、対象の反応を都合よく「相手も嫌がってない」解釈をする認知のゆがみもあり、それを認め合う仲間がいて、酒に酔ってたりすればやはり性犯罪の一線は越えやすいんじゃなかろうかと思うが、思い留まれる人もいるわけで、やはり性別で一括りにできることでもない。

しかし、むしろ、逮捕や起訴されるレベルの性犯罪の一線を越えるまでには、なにがしかのアラートがあるんじゃないかと思うので、裁判でそういった「過去の失敗から学べなかった」ことは突っ込めないんだろうか。

厳罰化もいいが、再犯防止したければ治療も必要もいうのもよくわかった。

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2019年04月09日

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犯罪心理学に というよりはむしろ、著者がいわゆるエビデンス派だからという理由でこの本を手に取ってみた。

私はエビデンス派「ではない」。今の時代、避けては通れないことは知っている。でも、これまで私と実際に関わりのあったエビデンス派の人々が、余りに度量が狭いことに心底辟易させられ、敬遠していたに過ぎない。

その辺は脇に置くとして、この著者の唱えるエビデンス重視であれば、も少し話をお聞きしてもいいかな とまで思える内容だった。

(一応)進化の最先端にいるヒトという生き物の営みは、一対一対応の因果関係という説明で片がつくはずがない。経験の積み重ねから私は日頃そのように思うのだが、著者もそのあたりは近い考えをお持ちのようだ。

最終的には認知行動療法系のアプローチを推し、投影法的なものを否定する というお約束路線に論は展開していく。う〜ん、惜しいなぁ。。。「(バウムのような)描画テストは、言語によるやりとりが苦手なクライアントには有効なツールだが、犯罪の抑止には繋がらない」(とエビデンスが示している)のだそうだ。ここまでフォローしてくれているのに。。。

著者がどうして投影法的なものを「毛嫌い」するのか。そのあたり、エビデンスではなく著者の個人的な体験を語ってくれていると、私のような立ち位置でおまんまを戴いている人にもかなり説得力が出てくると思うのだが。

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2018年03月06日

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エビデンスに基づく犯罪対策について。犯罪と心理学というと,兇悪事件が起こる度に吹聴される通俗心理学的解説が思い浮かぶが,そういうのとは一線を画した内容。
犯罪は犯人の素質だけに起因するものではないし,犯人の置かれた社会的環境だけに起因するものでないことが,データによっても裏付けられてきているというのは興味深いが,なかなかデリケートな問題かも知れない。こうして科学的な手続きで得られた犯罪心理学の知見は,矯正や犯罪予防にも活かされてきているようだし,活かされていくべきだろうけど,慎重さも肝要と感じた。

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2015年04月20日

Posted by ブクログ

<感想>
「入門」と銘打っているだけあって初心者向け。事例は少なめで、犯罪心理学という学問の概要解説といった趣きになっている。実際の犯罪事例から読み解く犯人の心理、みたいな内容を想像していたので少し期待とは違った。

<アンダーライン>
★★★★★(宅間と加藤の共通点)自分の痛みには過敏で、傷ついたり怒ったりしやすいが、その反面、人の痛みには驚くほどに鈍感だという点も共通している。それと関連して、両者ともに被害者意識がきわめて強く、他者を傷つけたり、困らせたりすることで仕返しをしようという態度が顕著な点も瓜二つである。
★★★事例B 自己評価がとても低いんです。万引きをして、タダで盗ってくると、初めて他の人と同じスタートラインに立てる気がしました。最初にマイナスのところにいるから、ズルをすることで初めて人と対等になれる気がしたんです。
★★★認知が非常にゆがんでいる者が世の中には行って数いるのだ。そうしたものは、物事を何でも被害的に受け取ったり、他愛のない他者の言動を深読みしたり、とにっかう通常では考えられない捉え方をする。
★★★犯罪者には、遅延価値割引傾向が大きい者が多い。簡単に言えば、「将来のことはどうでもよい」という思考形式のことである。
★★★★粗暴犯罪を行った者は、安静時の心拍数や呼吸数が少ないということも際立った特徴である。心拍数や呼吸数は、脳の覚醒レベルの指標である。つまり、これらが少ない者は、脳の覚醒レベルが低い状態にある。比喩的に言えば、脳がいつもシャッキリときびきび昨日している状態ではなく、どこかとろんとした状態にある。
これは、生物学的には不快な状態であるため、目を覚まさせる必要がある。そのために、彼らは刺激のある行動を求めたり、暴力沙汰に及んだりするのだと説明できる。つまり、攻撃性の高い人々は、生物学的にそのように駆り立てられているのだと言える。
★★★★★「不安にならない」「落ち込まない」「怒らない」などという対処は、逆に死人にしかできない対処であって、生きているわれわれが行うのは不可能である。
★★★★★薬物依存者だけでなく、犯罪にかかわる人々は、暇な時間に何もすることがない人々が非常に多い。
★★関連性の錯誤

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2021年10月11日

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ネタバレ

【要約】
・エビデンスベーストな犯罪対策の流れにあり必要性であるということを訴える。
・その方法として犯罪心理学のモデル(先行刺激→認知→行動)と、モデル上重要な変数(効果量の大きい犯罪因子セントラルエイト)を指摘する。
【コメント】
・発達心理学ぽい考え方だなという印象。
・構造決定論的な社会学の立場からすると、アメリカの都市社会学等におけるもう少しマクロな議論との折り合いがどうなっているのか気になった。
・厳罰化は再犯の観点では意味がなく治療が必要というのは社会的包摂の流れと思われるので、貧困対策等の社会保障との関係も気になる。

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2018年03月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

 ここから何が言えるかというと、人間というものは、目立ったいくつかの事柄や、すぐに思いつくような事柄を関連付けて因果関係を想定しやすいということである。これを「関連性の錯誤」という。そして、統計的現象といった目立たない事柄、ちょっとやそっとでは思いつかないような事柄は、それが真の原因であっても無視されてしまう。
 カーネマンは、「人間はおおむね合理的であり、その考えはまずまず理に適っているという人間観」がこれまでは広く受け入れられていたが、本当のところそれは誤りで、「ごく普通の人間の思考には系統的なエラーが入り込みやすい」と述べている。そして、その系統的エラーの代表的なものの一つが、今述べた関連性の錯誤である。(pp.225-226)

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2016年05月06日

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