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近年、犯罪心理学は目覚ましい発展を遂げた。無批判に信奉されてきた精神分析的をはじめ実証性を欠いた方法が淘汰され、過去の犯罪心理学と訣別した。科学的な方法論を適用し、ビッグデータにもとづくメタ分析を行い、認知行動療法等の知見を援用することによって、犯罪の防止や抑制に大きな効果を発揮する。本書は、これまで日本にはほとんど紹介されてこなかった「新しい犯罪心理学」の到達点を総覧する。東京拘置所や国連薬物犯罪事務所などで様々な犯罪者と濃密に関わった経験ももつ著者が、殺人、窃盗、薬物犯罪、性犯罪などが生じるメカニズムを解説し、犯罪者のこころの深奥にせまる。
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Posted by ブクログ
重大犯罪が発生すると、犯人の生育歴も含めた報道がされることもあるけれど、覗き趣味を満足させる程度の報道でしかないように感じる。こういう知識を付けたら、また違った見方ができるのではないかと思って借りた。自分の身を守る役にも立つではという期待もある。あとはこういう本もあるんだ、という好奇心。
ありふれた事件は報じられない。たくさん起こっているのに、いちいち報じていたら、きりがないから。面白くもないし。ありふれた事件にはニュースバリューがない。だから報じられない。
私たちがニュースやワイドショー、週刊誌などで接する「犯罪」は、報道用に作られた「ストーリー」であって、事実とは異なっている可能性が多い。
私たちは犯罪もエンターテイメントとして享受している。
では、犯罪の事実とは?犯罪は人間の一側面を表している。犯罪の事実は人間の事実だ。
人間の行動は、生物学的要因(遺伝負因や器質的要因)と環境的要因(家庭、学校、社会)との相互作用による。様々な原因が複雑に絡み合って作用して、人間の行動は導き出される。人間の行動の原因を、目立った少数の原因にして単純化して説明しようとしても、正しい理解はできない。
自己統制力とは、自分の欲求や感情をコントロールする力のこと。これが欠如しているのは、犯罪の危険因子だと考えられている。
ある種の遺伝的負因を持つ子供は、自己統制力が弱くなると分かっている。特にその遺伝的負因としては、脳の高次機能を司る部位の構造や機能の欠陥など、神経心理学的な要因が考えられている。
しかし、その遺伝的負因は、恵まれた環境で育った場合は、影響力を発揮しにくく、逆に不適切なしつけを受けた場合にのみ影響が現れる。
遺伝子単独でも、環境要因単独でも影響は限られているが、双方が合わさった時、その相互作用によって自己統制力は強まり、あるいは疎外される。
これは犯罪傾向だけでなく、様々な人間の特質にも当てはまる。本人が生まれ持った生物学的脆弱性に、環境からのストレス要因が作用して、ある種の傾向が発現するメカニズムを、ストレス脆弱性モデルと呼ぶ。
どのような種類の行動であっても、まず遺伝的な要因、持って生まれた生得的な要因の影響を受ける。しかし、同じ生物学的基盤を有していても、環境からの影響によってそれがどの程度発現するかは異なってくる。
また、生物学的脆弱性を持っていると、環境からのネガティブな影響を受けやすいという場合もある。同じ環境の中にあっても、生物学的な素地によって、その影響の度合いが異なってくる。
人は成長の過程で周囲の環境から多くを学び、人間としての振る舞いを身につける。そのプロセスを「社会化」と呼ぶ。幼児期の重要な社会化の担い手は、両親を筆頭とした家族だ。学齢期に進むにつれて、友人からの影響が大きくなり、また家族以外の大人からの影響も受けるようになる。
幼い頃は物理的な近接が友だち選択の条件だったが、成長に従って、自らが友人を選択するようになっていく。その結果、行動様式や価値観が近い者同士の交友になっていく。
社会化のプロセスは、社会的学習と強化によって進む。周囲の人の行動を見て学び、自分の行動に取り入れる。相手の価値観や集団の規範に合致する行動を取れば、賞賛され強化される。逆に、それらにふさわしくない行動を取れば、叱責や批判の対象となる。
社会化の過程は、その人のパーソナリティーや認知を形成する上でも重要だ。
イスラエル生まれの犯罪学者カスピ(Avshalom Caspi)は、モノアミン・オキシダーゼA遺伝子(Monoamine Oxidase A: MAOA)の活性が低い子供が虐待を受けた場合、非行が出現しやすくなるが、そうでない子供は虐待を受けても非行に至らないケースが多いことを発見した。(2002)MAOA遺伝子は攻撃性や衝動性を抑える働きをする。MAOA遺伝子活性が高いと、劣悪な環境が非行などの問題行動となって現れることから子供を守ってくれる。MAOA遺伝子活性の高低が影響するのは、生育環境が劣悪であった場合のみで、生育環境に問題がなかった場合は、遺伝子の影響も見られない。遺伝と環境の相互作用で、犯罪行動の出現が変わってくる。虐待と非行に関連があるという定説は、非常に単純で物事の一面しか見ていない迷信だ。 p.157~ 虐待と非行との関連
MAOA遺伝子の活性が低い者は、高い者の半分程度しか居ない。虐待の影響を受けない者の方が多い。苦しむのは、他人を苦しめたり傷つけたりすることとは関係がない。
「被虐待体験とMAOA遺伝子欠如の双方を有する者は、人工全体の約12%ほどであり、その中の比較的少数の人びとが世の中の犯罪全体の44%に関係している。これは、モフィットの生涯継続型犯罪者を思い出させる数値でもある。生涯継続型犯罪者には遺伝負因が影響していることは先に述べたが、MAOA遺伝子欠如はその候補の一つだと言える。」p.160
覚醒剤依存は世界的には新しい社会問題なんだ。
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