あらすじ
近年、犯罪心理学は目覚ましい発展を遂げた。無批判に信奉されてきた精神分析的をはじめ実証性を欠いた方法が淘汰され、過去の犯罪心理学と訣別した。科学的な方法論を適用し、ビッグデータにもとづくメタ分析を行い、認知行動療法等の知見を援用することによって、犯罪の防止や抑制に大きな効果を発揮する。本書は、これまで日本にはほとんど紹介されてこなかった「新しい犯罪心理学」の到達点を総覧する。東京拘置所や国連薬物犯罪事務所などで様々な犯罪者と濃密に関わった経験ももつ著者が、殺人、窃盗、薬物犯罪、性犯罪などが生じるメカニズムを解説し、犯罪者のこころの深奥にせまる。
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Posted by ブクログ
人が犯罪に走る原因は、生得的な説明だけでも、環境的な説明だけでも、社会的な説明だけでも不十分。さまざまな要因が絡み合い複雑に影響し合っていることを理解しなくてはならない。
犯罪者に共通するセントラルエイトという因子が研究によって明らかになった。
そのうちの一つは「余暇活用」。暇で何もすることがない人は犯罪を犯す傾向があるというのだから驚き。余暇を充実させようという気分になった。
現在の臨床心理学で用いられている手法には懐疑的。ロールシャッハへの懐疑的意見はもちろん、PFスタディーやSCTにも懐疑的である。
Posted by ブクログ
犯罪心理学に興味を持った初心者には分かりやすく読みやすかったです。筆者が言いたいことは、現代の日本の犯罪心理学は主観的な考え方で各々の事件の要因を決めつける傾向があり、客観的なデータとしての対策をすることが少ない。つまり、科学的な根拠を元にした犯罪心理学があまり発展してない。
日本の犯罪は刑罰を下すだけで、その後のことを考えた対策をあまりしていなく犯罪者に対しての治療が外国と比べ少ないことを伝えたいと分かった。
筆者はとにかくセラピーなどのような人間が人間を治療するという、その指導する側の判断で分析するような心理学はほぼ意味がなく科学的な心理学が必須だと伝えていた。
Posted by ブクログ
【要約】
・エビデンスベーストな犯罪対策の流れにあり必要性であるということを訴える。
・その方法として犯罪心理学のモデル(先行刺激→認知→行動)と、モデル上重要な変数(効果量の大きい犯罪因子セントラルエイト)を指摘する。
【コメント】
・発達心理学ぽい考え方だなという印象。
・構造決定論的な社会学の立場からすると、アメリカの都市社会学等におけるもう少しマクロな議論との折り合いがどうなっているのか気になった。
・厳罰化は再犯の観点では意味がなく治療が必要というのは社会的包摂の流れと思われるので、貧困対策等の社会保障との関係も気になる。
Posted by ブクログ
ここから何が言えるかというと、人間というものは、目立ったいくつかの事柄や、すぐに思いつくような事柄を関連付けて因果関係を想定しやすいということである。これを「関連性の錯誤」という。そして、統計的現象といった目立たない事柄、ちょっとやそっとでは思いつかないような事柄は、それが真の原因であっても無視されてしまう。
カーネマンは、「人間はおおむね合理的であり、その考えはまずまず理に適っているという人間観」がこれまでは広く受け入れられていたが、本当のところそれは誤りで、「ごく普通の人間の思考には系統的なエラーが入り込みやすい」と述べている。そして、その系統的エラーの代表的なものの一つが、今述べた関連性の錯誤である。(pp.225-226)