志坂圭のレビュー一覧
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慶長十七年(一六一二年)、庄司甚右衛門は幕府に対し、傾城町築造を願い出た(傾城とは、美女に入れあげると城や国を傾けるという中国の故事に由来する)。これにより傾城町設置の沙汰が下り、葺屋町の二丁四方が与えられた。これが吉原遊郭のはじまりとされる。このころの遊女の数は千余名。
江戸はこの後、急速に発展し、吉原という悪所が江戸の中心であることを懸念した幕府によって移転が命じられた。 明暦二年(一六五六年)、浅草浅草寺北の日本堤、通称浅草田圃と呼ばれる地が候補地となり、元吉原の五割増しの面積を許可されることで移転に承諾。これにより日本最大の色里が公許となった。天保のころには六千を超える遊女が籍を置 -
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『本のサナギ賞』第1回受賞作品。
文芸に新風を起こすべく立ち上げた新人賞。
選考委員には、書店員が加わる。
本を売るプロとも言える書店員のお眼鏡に叶う作品となれば、今の時代の読者が求める作品ということになるだろう。
さて、内容は462ページという長編ながら一気に読みたくなる作品だった。
江戸時代の重なる悪天候で飢饉は常態化し、土地によっては餓死者が半数にも及ぶ勢い。
そんな中、女衒が死体を縫うようにある村を訪ねるシーンから始まる。
食べるものがない村から吉原へ。
そこは天国にも地獄にも変わる場所。
主人公の駒乃は、頑固で口が達者な女の子9歳。
ガリガリで真っ黒な貧相な体はバカにされる -
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天保八年。奥州を襲う大飢饉により九歳の少女が女衒の手によって、江戸吉原の大遊郭へ売り飛ばされる。
吉原の仕来りに抗いながらも、禿、新造を経て、やがて花魁へ。
吉原からの足抜け。それは死を意味するが...
最期の救い、心のよすがは宗教か。宗門に帰依すると。
吉原を題材にした作品は数多あるが、本作はその中でも良作。物語を読ませながらも、細かな仕来り、風習、意味を新書のようでありながら、自然に表している。吉原物になると、どうも女郎の恨みつらみの暗い作品になりがちだが、爽やかさすら醸し出ている。
吉原題材だと『さゆり』が個人的にはベストだが、本作もとても良い一冊でした。 -
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「読み終えたときは胸が震えた。」
・・・それはない。
☆3.5
吉原のしきたりや専門用語がわかりやすく記してあり、
吉原初心者向け入門書的な側面もあったりなかったり。
翡翠姉さんが抱きしめてくれるエピソードが好き。
そして、いつしか艶粧が翡翠姉さんの様になるのも好き。
願わくば、艶粧が禿を抱きしめるエピソードがあれば良かったのに。
(なかったと思うが・・・あったのかな?)
後半に起こる悲劇は、たしかに大きな悲劇。
読み手としては結構なダメージ。
その後の展開はちょっと駆け足過ぎる。
急展開過ぎて、主人公の思いが重く感じられない。
もっともっと膨らまし掘り下げる要素があったのではなかろう -
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ディスカヴァー・トゥエンティワン社による書店員が選ぶ新人賞「本のサナギ賞」第一回受賞作。
エンターテイメント小説という枠で歴史モノとはどうだろうかという不安は程なくして無くなりました。
吉原の女性たちの生き様という内容だけ聞くと暗く感じますが、主人公の駒乃やその周りの人物たちのキャラクターが明るく一つのエンターテイメント小説となっていました。特に駒乃と他の女性とのやり取りは時にコミカルで歴史モノであることを一瞬忘れる程でした。
話の流れや駒乃の口調が途中で気になるところがあったので★4にさせて頂きましたが、個人的には駒乃の「ありんす言葉」がツボだったので★5あげたかったです笑 -
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ネタバレ天保八年、飢饉の村から 9歳の少女、駒乃(こまの)が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。
駒乃→禿時代は しのほ →引込禿 駒乃 →引込新造 明春 →附廻(花魁) 艶粧(たおやぎ)へ。
抱えるのは振袖新造の「風巻(しまき)」と禿の「なつめ」。
振った相手になつめが殺され、キリシタンとなるべく足抜けし、
足抜けした相手、林太郎と供に長崎へ向かう。
子供「光太郎」を生み育てる。
そして、実の母と弟の生死を知る。
労咳になり、光太郎を残してこの世を去る。
もう一人の子供「なつめ」に会いに行く。32歳。
とても読みやすい。
花魁という世界を解りやすく書いてある。