あらすじ
全国の書店員が「世に出したい」新作を選ぶ、エンタメ小説新人賞
第 1 回 本のサナギ賞大賞作品が文庫版で登場!
「読み終えたときは胸が震えた。完成度の高さで群を抜き、これほど読ませる作品を書く作者が、いままで無名であることが信じられなかった」 さわや書店・松本大介
<あらすじ>
天保八年、飢饉の村から 9歳の少女、駒乃(こまの)が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。駒乃は、吉原のしきたりに抗いながらも、手練手管を駆使する人気花魁、艶粧(たおやぎ)へと成長する。
忘れられぬ客との出会い、突如訪れる悲劇。苦界、吉原を生き抜いた彼女が最後に下す決断とは…。
「ここは吉原じゃ。世間からは苦界とか地獄とか呼ばれておる。お前にもそのうちわかる。ここから生きて出たければ強い心を持たんといかん。それができないものは死んでいく。馴染むものには極楽じゃ、嫌う者には地獄じゃ。まあ、これはどこも同じじゃがな……
地獄か極楽かはお前さん次第じゃ」
本書は2017年に小社より刊行された著作を文庫化したものです。
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Posted by ブクログ
映画3本見るよりこれを1度読んで欲しいと思いました。それほどまでに、詳細な設定、工夫された書き方、引き込まれる内容に驚きました。もっと早くに出会いたかった作品です。かならずまた読みたい、そう思わされるものでした。
Posted by ブクログ
凄い本に出会った気がした。
本作は「本のサナギ賞」受賞作。
初っ端から一気に引き込まれる感覚は
作者の技術力の高さが窺えるし、
実際に見聞き体験してきたかのように緻密で
あまりにも完成されている。
ちょうど葛飾北斎を知る展覧会に縁があり、
吉原のことがタイムリーに話題に上ってきた。
たった200年ほど前のこと。
祖母の祖母が生きていた時代。
あまりにも壮絶で、死との距離が近くて
死が当たり前で…
主人公の32年の生涯は、
あまりにも短くて、激動。
Posted by ブクログ
今、行ける吉原
大飢饉で餓鬼と乞食と屍人が溢れる地から吉原へ売られてきた少女の一生のお話。
吉原の生活はもとより姉女郎(先輩)とのやりとり、昇進、禿(後輩)との関係など、作者は昨日まで吉原で生活していたのではと思うほどリアルかつわかりやすく描かれている。うっかりすると「〜ありんす。」が移りそうになるくらい。
とても面白く読んだが、恐ろしいのは人の慣れ、順応性の高さだと感じた。
面白い
あまり有名ではないのか?すごく面白いので是非読んでもらいたい。歴史ものは苦手だが寝る間を惜しんで読んだ。話もゆるむことなく進むので面白い。性的な描写などもあまりないため苦手な人でも読めると思う。花魁の人生を描いた作品だ。
Posted by ブクログ
『本のサナギ賞』第1回受賞作品。
文芸に新風を起こすべく立ち上げた新人賞。
選考委員には、書店員が加わる。
本を売るプロとも言える書店員のお眼鏡に叶う作品となれば、今の時代の読者が求める作品ということになるだろう。
さて、内容は462ページという長編ながら一気に読みたくなる作品だった。
江戸時代の重なる悪天候で飢饉は常態化し、土地によっては餓死者が半数にも及ぶ勢い。
そんな中、女衒が死体を縫うようにある村を訪ねるシーンから始まる。
食べるものがない村から吉原へ。
そこは天国にも地獄にも変わる場所。
主人公の駒乃は、頑固で口が達者な女の子9歳。
ガリガリで真っ黒な貧相な体はバカにされるほど。
その女の子が、持ち前の一徹な性格で、何度も折檻されながらも自分を通しのし上がってゆく。
客の中にいろんな人物が現れる。
吉原という異質な場所を文献をもとに丹念に盛り込んだこの作品は、リアルな痩せっぽちの女の子のサバイバルストーリーになっている。
機転の効く主人公は、足抜けにやっと成功し、医者の次男坊と長崎へ医術の修行旅に。
登場人物も興味深い面々が現れる。
読み応え十分な作品。
Posted by ブクログ
連作短編のようで、読みやすかった。滔々ととあるが、まさに流れるような人生。人買い、吉原での生活、水揚げ、花魁昇格、火事、足抜け、結婚出産、いろいろあったが、なつめの死が辛かった。
Posted by ブクログ
やむを得ない事情で吉原遊郭に口入りした少女が花魁に出世し、ゆくゆくは足抜けを企て悲惨な結末に陥る、そんなありがちな物語だろうとタカをくくっていましたがいい意味で裏切られました。精緻な吉原の情景描写にあたかもその街にいるかのような感覚さえありました。
Posted by ブクログ
天保八年。奥州を襲う大飢饉により九歳の少女が女衒の手によって、江戸吉原の大遊郭へ売り飛ばされる。
吉原の仕来りに抗いながらも、禿、新造を経て、やがて花魁へ。
吉原からの足抜け。それは死を意味するが...
最期の救い、心のよすがは宗教か。宗門に帰依すると。
吉原を題材にした作品は数多あるが、本作はその中でも良作。物語を読ませながらも、細かな仕来り、風習、意味を新書のようでありながら、自然に表している。吉原物になると、どうも女郎の恨みつらみの暗い作品になりがちだが、爽やかさすら醸し出ている。
吉原題材だと『さゆり』が個人的にはベストだが、本作もとても良い一冊でした。
Posted by ブクログ
久しぶりに本で泣いた。吉原に売られ、禿から一流の花魁になってゆく主人公の話。花魁話にありがちな男を取り合ってキャットファイト等なく、当時の花魁の生活がリアル。賞受賞作にも納得。
Posted by ブクログ
表紙に惹かれて手に取った。
吉原で学び、適応し、悩んで、それでも自分を見失わない主人公の格好良さに惚れます。
衝撃的な展開や苦しい描写はありますが読めて良かった。儚さの中にある美しさを垣間見ました。
最後は切ないけれど、自分の生を全うできたと笑って逝ったので読後感は悪くありません。いい作品でした。
Posted by ブクログ
吉原を舞台にヒロインが駆け抜ける。
「本のサナギ賞」受賞作。
天保の飢饉。
9歳の少女・駒野は吉原の遊郭へ売られた。
すぐは吉原に馴染めず反発していたけれど、禿となり、成長して新造となり、ついには花魁へ。
ある日、足抜けを決行するが…
勢いのある読みやすい文章で、どんどん話が進みます。
艶っぽさはあるが、不幸も悲劇もあり、花魁は粋で気丈でカッコいい。
吉原というと思いつくような要素が、全部入っている印象です。
ということは、先行作品とイメージが違わないということでもあるでしょうか。先行作品といっても、そんなにいくつもない‥?
時代小説にはよく、ちらっと出てきますが。
悲劇で終わらないところが、いいですね。
一気読み☆
Posted by ブクログ
面白かった。
吉原ものはよく読むけれど、これは日常生活が生き生きと細かく描かれていて新鮮だった。
なつめどんが素直で可愛かったから、泣けた。主人公はちょっと気が強すぎて、その融通がきかないせいで死傷騒ぎを起こすことに。
そのあたりが、あまり好きじゃないかな。
Posted by ブクログ
生まれた時代や境遇、出会う人との関わりや受けた影響など、江戸の時代に本当に存在したかもしれない女性の人生を垣間見る面白い作品。
終わりがはっきり書かれてるので読み終えた後もスッキリした。
Posted by ブクログ
絶望的な飢饉の村から吉原に売られた少女は、やがて遊郭でとんとん拍子に花魁にまで成り上がり、情夫をこさえてまんまと足抜けを果たし、自分のために身を盾にして死んだ禿の魂を救うべく長崎へ。その地で暫しの平穏な暮らしを過ごした後、病を得て儚くなる。村を出てから二十三年後のことであったそうな。
本編開幕の天保八年八月は大阪で大塩平八郎の乱が起きた頃。少女の暮らす奥州の村では地獄絵図が広がっていたが、苦界、吉原では飢えることもなく、時折脱走にしくじった遊女の折檻や、痴情がもつれた相対死の騒動は起きるものの、総じてほのぼのゆったりと平穏な時が過ぎている様な印象であった。振られ続けて逆上した武士の客が刀を振り回すまでは…。
Posted by ブクログ
その日は雨模様で
外に出るのも
おっくうで
何か肩の凝らない時代小説でも
と 思って読みだした
積読の中の一冊
これが
見事に 大正解
物語の面白さははむろんのこと
その時代の
そのころの あれやこれやの
下調べが 相当なものだったのであろう
ところが 随所に感じられる
実に ていねいに書かれた
「吉原モノ」であります
お陰様で
まさに晴耕雨読的には
はまった 一冊でありました
Posted by ブクログ
吉原遊廓の花魁の話を続けて読む。
こちらは天保8年からの23年間。
人の命が軽い時代。
飢饉で飢餓に喘いで餓鬼の様に生きるより、吉原で暮らす方がマシ、というような。
駒乃の、どこでどう暮らそうとも、自分を見失わない強さに圧倒される。
艶粧花魁へと成長した駒乃の禿、なつめの明るさも逞しくて好ましい。
Posted by ブクログ
慶長十七年(一六一二年)、庄司甚右衛門は幕府に対し、傾城町築造を願い出た(傾城とは、美女に入れあげると城や国を傾けるという中国の故事に由来する)。これにより傾城町設置の沙汰が下り、葺屋町の二丁四方が与えられた。これが吉原遊郭のはじまりとされる。このころの遊女の数は千余名。
江戸はこの後、急速に発展し、吉原という悪所が江戸の中心であることを懸念した幕府によって移転が命じられた。 明暦二年(一六五六年)、浅草浅草寺北の日本堤、通称浅草田圃と呼ばれる地が候補地となり、元吉原の五割増しの面積を許可されることで移転に承諾。これにより日本最大の色里が公許となった。天保のころには六千を超える遊女が籍を置き、もっとも多いときには七千を超える遊女が籍を置き身を売りながら生活していたといわれる。 芦屋町一帯が葦という植物の群生地で、葦の原から葦原と呼ばれ、葦は『悪し』につながり縁起悪とされ、転じて『良し』とし、吉原と命名したといわれている。移転以前を『元吉原』、移転後を『新吉原』と称す。
「柳の木のところに左に折れる道があって、そこから坂になっている。衣紋坂と呼ばれる坂だ。吉原を訪れる客はそこへくると着物の衣紋(襟)を整えるからそう呼ばれるようになったそうだ。その先が五十間道だ」
Posted by ブクログ
飢饉の村から始まり、大遊郭での奉公、その後の顛末まで、常に死と隣り合わせの花魁の人生がずっしりした悲劇で描かれる。
でも題名の通り滔々とした展開で、花魁モノ特有のドロドロは無くどこか朝ドラ的な悲劇が、後半に選び縋る救いへの導入を違和感なく表現している。
Posted by ブクログ
駒乃ちゃん、最後に幸せを感じて死んでいったなら、めでたしめでたし。と思ってしまったけど、ホントの吉原はもっと壮絶なんだろなと、考えさせられた。
Posted by ブクログ
人買いに連れられ吉原へ着いたのがわずか9歳、労咳で長崎にて亡くなったのが32歳、短かったけれど凝縮された人生か…。
飢饉の有様から始まったお話、中盤は吉原での悲喜こもごも、最終盤は足抜けして長崎で。
終盤までは非常に興味深かったお話、終盤にもうちょっと肉付け出来たらもっと良かったかとおもいます。
Posted by ブクログ
吉原の花魁となった駒乃がしっかりと逞しく生きていく物語。人の巡り合わせの不思議がいろいろとありながら、生き抜いていくという言葉がぴったりのような人生の最後は幸せだったのだろうか。話のポイントは深いところにあるはずだか、ちょっと掴み難かったかな。
Posted by ブクログ
「読み終えたときは胸が震えた。」
・・・それはない。
☆3.5
吉原のしきたりや専門用語がわかりやすく記してあり、
吉原初心者向け入門書的な側面もあったりなかったり。
翡翠姉さんが抱きしめてくれるエピソードが好き。
そして、いつしか艶粧が翡翠姉さんの様になるのも好き。
願わくば、艶粧が禿を抱きしめるエピソードがあれば良かったのに。
(なかったと思うが・・・あったのかな?)
後半に起こる悲劇は、たしかに大きな悲劇。
読み手としては結構なダメージ。
その後の展開はちょっと駆け足過ぎる。
急展開過ぎて、主人公の思いが重く感じられない。
もっともっと膨らまし掘り下げる要素があったのではなかろうか。
ラストシーンは「今更そんな事言われてもなぁ」ってカンジ。
そんなうまいこといかんやろ、と。
中盤までは面白かったのに、それに比べると薄いと言ってもおかしくない終わり方。
半ば「ジャケ買い」だったが十分楽しめた一冊。
書店で平積みされていたわりに感想があまりあがってないあなぁ。
Posted by ブクログ
帯の煽りや解説の評価ほどではなかったなぁ。
良かったし、 面白かったけど、駒乃が淡々としてるせいか全体として薄ぼんやりというか、薄い気がする。
しっかりと苦界の世界を書いてるのに、印象が薄いんだよねぇ。
キリストに浸透してくのも駆け足で、いきなり?という気がしたし。
でも駒乃が足抜けをする様はすかっとしたな。
Posted by ブクログ
天保八年、飢饉の村から 9歳の少女、駒乃(こまの)が人買いによって江戸吉原の大遊郭、扇屋へと口入れされる。
駒乃→禿時代は しのほ →引込禿 駒乃 →引込新造 明春 →附廻(花魁) 艶粧(たおやぎ)へ。
抱えるのは振袖新造の「風巻(しまき)」と禿の「なつめ」。
振った相手になつめが殺され、キリシタンとなるべく足抜けし、
足抜けした相手、林太郎と供に長崎へ向かう。
子供「光太郎」を生み育てる。
そして、実の母と弟の生死を知る。
労咳になり、光太郎を残してこの世を去る。
もう一人の子供「なつめ」に会いに行く。32歳。
とても読みやすい。
花魁という世界を解りやすく書いてある。
Posted by ブクログ
第一回本のサナギ賞受賞作。サナギの名の通り、文芸に新風を起こした新人賞である。
天保の大飢饉のとき、九歳の少女駒野は、飢饉の村から吉原へ売られていった。吉原での苦界のなか、数多くの仲間、女たちが死に、彼女は、最後にどこへ向かったのか。どのような人生を送ったのか。
Posted by ブクログ
おもしろかった。
個人的には火事のところ松吾郎のところが一番好き。
普段読まない歴史物だけれど、好きな吉原遊廓の話だと言うことで読んでみた。読まずに積み上げてた事もあったけれど分かりやすく、読みやすかった。
花魁としての気概が出てくる描写がよかったな。
一緒に連れてこられた鈴や簀巻きから生き延びた松吾郎のその後も気になる。