三原順のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
この本を買って読んだのはかなり昔のはず。表題作と短編「今は静かな」が入っている。ハッピーなお話ではない(特に後者は読後感が…)はずなのに、何故か時折読み返したくなり、手放すことの出来ない不思議な本。
「X day」のほうは、青年ダドリーが主役。これでもかこれでもかというくらい、様々なエピソードが織り込まれている。会社を辞めて実家のトマト農家を継ごうとするダドリー。その反面自分がある種の強迫観念によって動いていることも認めている。株を操作してお金を儲ける。不正の証拠を握り白日の下にさらそうとする。兄夫婦の間のゴタゴタ。兄弟の確執。姪といとこの意味の違い。思春期の少年少女の危うさ。セラピストはじめ専門家に対する不信感や疑問。「ジャンキー」の過去。病に冒された幼子の哀しみ。うーん、登場人物の誰も幸せではないような??
ダドリーは能力がありながら暗い過去も持っており、社会の裏表を知っている。諦めからか、突き放し、どこか達観しているようでもある。でもまだ若いからじたばたもする。だからこそ厚みがあって魅力的なんだよなぁ。 -
Posted by ブクログ
この漫画をきっかけに、三原さんに嵌りました。
昔の少女漫画なだけあって絵柄もモロ睫毛バチバチングなんですが、描く内容はものすんごく深い作家さんです。
人間を色んな性質を深く抉り見せるドラマ構成に長けているというのか……。
偽善、とか、裏ッ側に強いように見えます。
普通の人達なんだけど、他者を想いやれない人達が一杯でてくる。
でもそんな環境だからこそ、愛されたいとかいう切実さがより鮮明になるっていうのかな…
すっごく色んな要素が複雑に絡まりあって身動きが取れなくなる人間が面白いっていうか……なんか上手く言えないや。
大体暗い暗い感じなんですが、物語なんで、ちゃんと夢の部分もあるんだよなぁ……そこにうるっときてしまう。
しかも社会的良心の拠ってたつところの曖昧さとかまで考えるところも越えてるなあ…と思います。
こんなことまで描いちゃう漫画家なんてそうそういないよ。
グレアムが好きです。
なんて歪んだ良い子ちゃんだww
よく漫画だと絶望だとかいう言葉が軽々しくでてきますが、グレアムの絶望は、本当に底が暗く見えるぐらいには深そうな説得力があります。
別に変な意味じゃなくても、アンジーが片想いしてるようにしか見えない。
それがめっちゃ可哀想で切ない……。
カッコーの話はもう最高。
「愛しているよ」という言葉と現実との行動のギャップが溜まらん。
突き放したような感じが凄い好き。
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Posted by ブクログ
漫画というより、哲学書みたい。
初読時は全く意味がわからなかった。
でも、なんとなく、今まで自分が読んできた漫画とは一線を隔したものだってことは解った。
それから、多分ちゃんと読み返したのは数回です。それくらい難易度が高く、内容も重く、漫画だけど漫画じゃないような。
やっぱりこれも70年代の作品。
天才といわれ、夭折された三原順さんの代表作です。
私なんかが感想を書いたり、点数をつけるなんてちょっとおこがましい、と感じてしまうような。
あー、何度も書いてるけど、どうしてこの時代の漫画って完成度が高くて傑作ばかりなんだろう。
この頃の漫画を読んで育った人はかなりIQとか高いと思います。
主人公は理由あって家出をした4人の男の子。
彼らの求めているものはきっと、誰もが普通は当たり前のように享受しているほんの小さな幸せ。
誰かに愛されて、自分が相手を想うその重さと同じだけの想いを返して欲しいだけ。
けれどそんな幸せすら、彼らの小さな手のひらからは滑り落ちていって、どうしても哀しさだけが後には残ってしまうのです。
傷が、ひらいて膿んでいくように、哀しみや不幸が彼らを襲い、それは少しずつ、でも確実に彼らを侵蝕し、それでも留まろうと、今度こそは得られると信じて幸せを求める彼らに、自分は一体なんなのだろう、と読んでいる私が次第に自問自答を繰り返すようになります。
未必の故意、とも取れる雪山での殺人の記憶に結局最後までとりつかれ、常軌を逸するに至るグレアムの心の内を綴った日記が描かれる行では、1ページ全てが文字で埋め尽くされるという前代未聞の衝撃的な漫画でもあります。
結局私はまだ、三原順がこの作品で描きたかったことの欠片しか理解できていないと思う。実際意味が解らない所だらけだし。
だからこれからも折を見て読み返すと思う。
内容は哲学的で、話も有体に言えば地味だし、喜びもなく、哀しさに溢れている作品ですが、主人公たちの生きてゆこうという強い意志と、ただ幸せを求めるひたむきさと、お互いがお互いを思う気持の重みとが、この作品の根底にはあります。
ずっと残っていく漫画がたとえば今この世の中にある作品の内たとえ1%に満たなくても、この作品だけは間違いなく、たとえ大きくは名を残すことにならなくても確実に、ずっとずっと伝えられてゆく作品で、伝えられるべき作品だと、思います。 -
Posted by ブクログ
X Day─エックス・デー─ 三原順 白泉社文庫 ISBN4592883802 562円(税別)1999年3月17日初版【ストーリー】収録内容は表題作「X Day」と「今は静かな」。「X Day」(初出1985年):会社を辞めて実家のトマト畑へ夢を繋いで兄の家を訪れたダドリー。彼をその家で出迎えたのは、夫の浮気に苛まれるキッチンドリンカーの兄嫁、慕う母とそりがあわずカウンセラーのやり方に自分を見失いかける長女アデール、表面上は従順でそのくせ疑問を抱え込んで影で憂さ晴らしをしている弟のスコット、さらに、妹の容態が悪く自らの体にも変調をきたす隣家の親戚の子供ニュート。そして、ダドリーの出生と彼の薬物使用歴に絡んでずっといがみ合っている兄。さらに、前の職場から彼を追ってきたのは彼の行方不明になったスーツケースの中身を嗅ぎまわるワイスと、ダドリーの友人のルドルフ。これらの悩み多き人々と危ない無差別殺人者が絡み合って、陰謀ありのサスペンスを繰り広げる。
「今は静かな」(初出1980年):難民キャンプに一人旅立った英雄扱いの父親に、取り残された母と妹とアービン。父が病に臥して帰って来るまでの間にアービンの家と妹は失われ、母の心は父の友人のものになっていた・・・。静かな罠を描く。
【感想】主人公のダドリーは、ムーン・ライティング・シリーズのダドリーとは同姓同名・同家族構成のパラレル別人です。あちらのシリーズの「Sons」が父と息子の不仲なら、こちらは母と娘の意思疎通の断絶、か。ダドリーいろっぺぇ・・・(何)アデールとダドリーの関係も結構好きです。ピアニストとのやり取りのシーンがすごく素敵で印象的。「今は静かな」・・・くらい、暗いよ!最後にこの話かぁ(笑)でもいいんです、この救いのなさが結構やみつきなんですから・・・。