井上薫のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
著者は執筆当時は現役判事でしたが、本書での主張を貫いて退官された元判事の方。裁判による判決の中で、判決の理由には直接関係のない「蛇足」が含まれることを徹底的に批判しています。英米法では、判決の中でも先例拘束性のある「レシオ・デシデンダイ(ratio decidendi)」と傍論である「オビタ・ディクタ(obiter dictum)」が峻別されていますが、日本の法体系でここまで徹底した議論を展開するのを読んだのは初めてです。ただ、「蛇足」は単なる「蛇足」にとどまらず、裁判の迅速化に反するのみならず、一人歩きをして訴訟制度の歪みを産み出し、民主的コントロールが弱い司法が立法権まで手を出してしまう危
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Posted by ブクログ
ところどころに筆者の妙に感情的な文章が見られて、読んでいて違和感があった。
とは言え、国民の声を無視した制度の導入、裁判官が(暗黙の了解とは言え)守秘義務を果たせなかった例もあるくらいなのに裁判員にも課している、最高裁のマスコミ(記者クラブ)との癒着、サクラが混じったタウンミーティング、税金を投入して広報活動、にも関わらず世論調査では国民の裁判員制度への評価は悪い、となれば気持ちも分からなくは無いと思った。
事実認定と量刑の問題について、尊属殺人罪の例(尊属殺法定刑違憲事件)を出して、裁判員が量刑を決定することが出来ないことに異議を唱えていますが、これは確かにおかしいと思った。
「国民の声が反 -
Posted by ブクログ
原発の賛否に問わず、法律的な議論のなされていない福島第一原発事故を検証する
放射能の危機への対策がとられたあと、損害賠償が問題になるだろう。
原発事故による損害賠償の取り決めが事故以前になされてなかったのは、安全神話によるものだ。
損害の種類
強制的避難生活
健康被害
不動産価格下落
職業喪失、学業へ就けない
農産物等への風評被害
精神的苦痛
などきりがない。
復興予算は賠償の対象にならない
喫緊の問題である被災者支援とは別問題の賠償の枠組みを、短期間で作り上げた政府
しかも東京電力の存続、債権者の負担はなし、電気料金の値上げによる賠償の原資とする
以上まで引用。
原発事故の損害賠 -
Posted by ブクログ
これも職場の本屋の平積みから購入。
原発以外の復興で頭がいっぱいになっていて、新聞情報以外にあまり原発賠償の話は理解できていなかった。
なんとなく、東電がきちんと被災者に賠償するんだろうなと思っていた。
しかし、この本を読んで、様々な論点が残ったまま、賠償が進んでいることを知った。
①東電は、仮処分への意見書のなかで、原子力賠償法の第3条の「異常に巨大な天変異変」にあたるため免責の余地があるという主張をしている。(p70)
②当時の菅内閣でも、枝野官房長官は免責できない、与謝野大臣は免責だといって大議論になっていて、枝野さんが押しきった形になっている。(p68)
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Posted by ブクログ
[ 内容 ]
結論。
裁判員制度は違憲である。
裁判員制度は人権を蹂躙する。
裁判員制度は冤罪を作る。
―ある日、突然、我々にやってくる「裁判員を命ず」という恐怖の召集令状。
嫌々参加させられたら最後、一般市民が凄惨な現場写真を見せられ、被告人に睨まれ、死刑判決にまで関与しなくてはならない。
国が進める世紀の愚行を、元判事が完膚なきまでに批判。
いますぐこの制度を潰さないと、日本は滅びてしまうのだ。
[ 目次 ]
序章 元裁判員のしゃべりすぎ
第1章 国民不在で決まった珍制度
第2章 裁判員制度の基礎知識
第3章 裁判担当者の条件
第4章 素人が裁判を破壊する
第5章 人権を否定する裁判員制 -
Posted by ブクログ
ついに始まった裁判員制度。
裁判とは何か、という初歩的な視点から
裁判、そして裁判員制度を切り込む本。
裁判についての知識ゼロでもすんなり読めます。
憲法とは何か~というところからスタートし、
裁判の「知らなかった!」という仕組みや
裁判員制度の問題点まで
幅広くカバーしてあり、とても読みやすい!
新書の割にはすらすらすらすら~っと読めちゃいます。
なんてったって、著者は元裁判官。
そりゃ内情も全部知ってるわ。
元裁判官だから知っていることが面白い。
「裁判官の独立」について書かれている部分が特に。
裁判官って法律のみに縛られているのかと思いきや、
最高裁の人事や最高裁の判例などなど
いろ -
Posted by ブクログ
現役裁判官だった人が裁判官の「わがままな判決」に警告した本。法律で人を裁くはずの裁判官が法律を守っていないのに誰にも裁かれない。こんな一般人が考えもしないことが現実に「判決」という形で出されている例が10件紹介されています。
しかも、こうした「しゃべりすぎの判決」が全国紙の一面にでかでかと載る現実。
この本が出されてから反響があったらしく、全国紙のうち読売についてはこの本の指摘の一部を受けて編集方針に取り入れたかのような記事を載せているのを確認しました。他の新聞はどうなんでしょう?
裁判官を裁くのは裁判官、ではなく国会です、ひいては国民ですよ。裁判官も官僚なんだから、エリート意識(本書では -
Posted by ブクログ
元裁判官の著者が、裁判官は実際にどんな仕事をどんなふうにしているのか、また、裁判官の人事、報酬、転勤など、裁判官の実情を明かし、裁判官を神聖視する必要はなく、裁判官も凡人、俗人に過ぎないと説く。
裁判官の仕事の大部分を事件記録を読むことが占めることなど、裁判官の仕事の具体的な内容や進め方などを知ることができ、興味深かった。
ただ、出世を気にしての新年の挨拶といった裁判官は俗物だとするエピソードなどは、著者が20年近く前に見聞きしたもので、現在の裁判官にどこまで一般化できるのかはちょっと疑問である。著者は、裁判官時代によい思い出を持っていないのか、裁判官という仕事をちょっと冷笑視しすぎている気が -
Posted by ブクログ
司法は国会や政府から独立し、ただ法のみに縛られるという考え方らしい。三権分立で三権が相互にチェックし合うことが民主主義の基本だと思っていたが、ちょっと異なる。
三権の中で立法行政が目立ち、重要だと感じてしまいがち。立法行政と比して司法の重要性を普段感じないのは生命身体思想信条の危機を実感する必要もない平安な世に生きているからかしらん。
本書の要点は、憲法には裁判は法によって裁かれると規定してあり、裁判員は法を知らない素人だから法に基づいて裁くことはできないというもの。ただ「法によって」という要件は、法の素人かプロかということで決まるものかな。皮肉っぽく言えば、法のプロとしてのプライドみたいなも -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
現役判事が司法の抱える問題点を鋭く突く。
不要に原告を疲弊させ、理不尽に被告を傷つけ、無駄に裁判を遅延させる「蛇足」の正体とは何か。
戦後補償訴訟、中国人の強制連行、ロッキード事件、ロス疑惑、「悪魔ちゃん」事件など、現実の裁判を例にあげて蛇足の弊害を明らかにする。
まったく新しい視点から裁判を論じた画期的な提言。
裁判を見る目が一変すること間違いなし。
[ 目次 ]
第1章 晴らすことのできない濡れ衣(すわ、殺人事件発生;損害賠償請求訴訟提起さる ほか)
第2章 判決理由とは何か?(話題にすること自体に意義がある;理由とは何か? ほか)
第3章 饒舌禍の実例(ロス疑惑(実例1)