須藤佑実のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
同作者の『包帯少女期間』がとても良い短編集となっていたため、つられてこちらも購入。
社畜くんは務めていたブラック企業を辞めたというのに、ふとした瞬間に恐ろしい羊顔上司が見える幻覚に悩まされ、怖くて逃げ込んだお店にいたのが不思議な雰囲気のミヤコという女──
この作品は不思議京女ミヤコのお悩み相談室、舞妓の無限頂、蓄膿症女とゴーストナース、京都映画狂い先生と生徒の不倫疑惑、京女ストーカー社畜くんとミヤコの簪という、五夜に渡るエピソードで構成されています。
オモシロ京女の短編詰め合わせセットとしてはハズレエピソードの無い完璧な構成だったので、今年のマイベストオムニバスコミックにノミネートしました -
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エモい·····
昔は世間体やら理解してもらえない事などがあって、自分に正直になれない人達が沢山いたんじゃないかと考えさせられました。(現代はどうかといったら微妙なところだけど···)
現代から過去へ時代を掘り下げていく展開がまるで映画やドラマを観ているかのように感じました。
是非実写化してほしいっ·······!!! -
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はっきり言って
素晴らし過ぎる。
断片的なまま、
でも自分ですら自分の事もそんな程度の把握しかできていないのかもしれない。
あえて深掘りせず、
下手に冗長に詳細に描くよりも、
印象的。
パチンコのシーン、女学生たちの旅や手紙のシーンなんかは、小津作品を彷彿とさせる。
人の数だけロマンと思い出がある。
そして、当事者も誰も去ってしまっても、
その時間があった事は決して消えない。その時間は永遠に存在してる。
娘さんが、指のことを聞かないと決めるところ。素晴らしい。
市民ケーンかのよう。
指はさながら、薔薇のつぼみ。
1人の人を暴くことはできない。
人の主観は -
Posted by ブクログ
心の機微を繊細に絶妙に描く短篇集。
作者、須藤佑実さんは天才だと感じました。私の拙い表現力では伝えきれないほど素敵な作品でした。
まず、絵が繊細できれいで、登場人物たちの心情の機微を表現していました。
次に、物語が秀逸です。好きだという気持ちを、直接言わずに伝えていく表現、とても文学的だと感じました。人物も魅力的に描かれています。
題材は、下手したらファンタジーと呼べるほどに非現実的になってしまいがちな題材もあるのですが、しかし良いさじ加減で現実に立脚して物語を構成しています。
読者である私がぐいぐい引き込まれるような一冊に出会えたことがとても嬉しくなりました。作品全体の魅力と、読みやすさのお -
匿名
ネタバレ 無料版購入済み時代に翻弄される
2018年、85歳を迎えた伊藤貴代子は認知症を患い孫のことを娘と間違えてしまうこともしばしばあった。
そんな彼女のもとを旧知の仲の園田ミツが時々訪ねてくる。
娘や孫には友人同士として通っている二人ではあるがかつては恋人同士だった。
しかし時代がそれを許してはくれず、貴代子の見合いと結婚によって二人は別れの道を選び以後手紙のやりとりがメインの状態だった。
認知症のため時々自分の家族のことすらわからなくなっていく貴代子に対してミツは最近の記憶はうすれても昔の記憶は覚えているものだと励ます。
そして貴代子が忘れても自分が覚えている、あなたの記憶は私の記憶も同然というのだった。
しかしその後、ミツはよ -
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過去を遡っていく構成と語り口が映画のようであった。様々な時代が描かれ、その時代時代の空気が漂ってくる。60年代の煙たそうな喫茶店や騒がしい旅館が色々な映画のワンシーンとリンクして一層映画みを増していく。もう映画化してくれと願うと同時に、これが完成形かもしれないとも思う、素晴らしい作品でした。
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キヨコに。
キヨコに凄く感情移入しました。
私もこんな風に生きてます。
こんなドラマチックじゃないし、相手の人に受け入れられたわけでもないけど。
その点ではキヨコかなり羨ましい 笑
共依存関係とも言われる、母子関係の癒着を友人間にシフトでやる人々ってのは実際にたくさんいる。
女性というのはもともとコミュニティで子育てしてきたわけだから、そういう関係性が作られることは昔から連綿と繰り替えされてきたことと思う。
現代の社会制度から抜け出せない苦しみに、本当の望みを叶えられぬまま生きる人間の、表面上の幸せをなぞる心境を胸に収めながら読みました。
私も、死ぬ間際には、、、と。
儚い望み