山室静のレビュー一覧
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知らない世界で自分の目だけが醒めるなんて、想像しただけで恐ろしい。お子ちゃまだと思ってたムーミントロールの、外に踏み出す一歩が逞しい。
日頃何か物足りなそうな彼が、1人ぼっちで冬を乗り越えていく姿に、人の成長には孤独で何かと向き合う経験が必要なのだと思える。
これまで描いてきた世界の危機や冒険を差し置いて、しんとした季節のど真ん中を過ごすことに、真の大人の階段を持ってくる。筆者のセンスが好きだ。
未知にそっと踏み出す好奇心、嫌いな物のいなし方。ちょっとしたことで苦手も乗り越えられちゃったり。派手な勇ましさとは違う。しかし生きる上で毎日出会う、小さな石ころの蹴飛ばし方を教える、大人には内緒 -
Posted by ブクログ
新年をすぎたばかりの春はまだまだ遠いある晩、雪にうずまったムーミン屋敷では
月あかりにムーミントロールが目を覚ましてしまったのです。
「ママ、起きてよ!
世界中が、どこかへ行っちゃったよ」
はじめてみる雪。冬の生き物たち。
ひとりぼっちが寂しくて、スナフキンに会いに行くのだと外へ飛び出します。
海辺では、素敵なシッポの子りすがふとんを探して、チビのミイを起こしてしまいました。
ミイのことはご心配なく、あっという間に冬と友だちになりましたから。(ママの大切な薔薇の模様のコーヒーポットカバーと銀のおぼんで、そり遊びを楽しんでる)
水浴び小屋では冬のとんがりネズミたちとトゥーティッキが冬を生 -
Posted by ブクログ
久しく絶版になっていた新潮社版をずいぶん昔に買いました。
学術文庫で復刊されたのは実にめでたいです。
当時は北欧神話の本って本当に少なくて、これと新潮社のエッダとか、あとはギリシャ神話と併録された小学生向けみたいなのぐらいしか地方では手に入りませんでした。
内容はややクセがあるというか、親しまれているオーディンやトールの出てくるエッダ系の物語は2/3ぐらいで、あとは各地のヴァイキング伝説や伝承物語といった感じです(こちらには「ハムレット」の原型である「アムレード」などが収録されていて、これはこれで面白いですよ)。
アスガルドサガ系をすっきり体系づけて読みたいのであれば、今はいろいろ出ている北欧 -
Posted by ブクログ
短編集。キャラがわかっているので、我が道を行っているなぁとしみじみしながら読む。
偽善とか協調性とか、日本で手垢にまみれている常識がない。
自分の思った通りの言動をする。
それが温かくなくてもいい。
親切にしたいと思えばする。
それがみんなの当たり前であったなら、不意に見せる優しさには裏表がないと、心から感じることができ、心地良さに身を任せ真っ直ぐに感動できる。
これが正しい人間関係なのだろうか?
正しいも間違いもないよね。
自分に正直に、自分が満たされていることで、他人を思いやることができるのは本当。
何となく調和した雰囲気にリラックスして、パフォーマンスが上がることだってあるだろう