山室静のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
冬眠から目覚めたムーミントロールが拾った黒い帽子が、次々と騒動を引き起こす。入れたものの形を変えてしまう魔法の帽子のせいで、ムーミン屋敷はジャングルになるし、ムーミントロール本人の姿まで変わってしまう。読み進めるたびに「次は何が起きるの?」と、ページをめくる手が止まらなかった。
印象的だったのは、ムーミン一家の途方もないおおらかさ。孤独で、みんなから怖れられているモランでさえ、拒絶されることなく受け入れられる。この物語のいちばんやさしいところだと思う。
アニメで育った身としては、原作のスナフキンの自由さに驚いた。旅立つシーンは何度読んでもすきで、かっこよくて、じんとする。シリーズ全巻読破したい。 -
Posted by ブクログ
知らない世界で自分の目だけが醒めるなんて、想像しただけで恐ろしい。お子ちゃまだと思ってたムーミントロールの、外に踏み出す一歩が逞しい。
日頃何か物足りなそうな彼が、1人ぼっちで冬を乗り越えていく姿に、人の成長には孤独で何かと向き合う経験が必要なのだと思える。
これまで描いてきた世界の危機や冒険を差し置いて、しんとした季節のど真ん中を過ごすことに、真の大人の階段を持ってくる。筆者のセンスが好きだ。
未知にそっと踏み出す好奇心、嫌いな物のいなし方。ちょっとしたことで苦手も乗り越えられちゃったり。派手な勇ましさとは違う。しかし生きる上で毎日出会う、小さな石ころの蹴飛ばし方を教える、大人には内緒の冒険譚だ。
この冬の長さ、暗さ、孤独感には地域性もあるだろう。どこの誰でもない、彼女だから書ける物語。その特別感にも胸が躍る。
お馴染みのキャラクターも少なくて、ムーミン谷はすっかりよそ行き顔だ。ミイがいて懐かしい気持ちになるが、寂しがる様子は全くなくて、孤独を分かち合う隙は一分もない笑。呆れるくらい彼女らしい。
読者も一抹の淋しさを覚えながら、ムーミントロールとこの冬を乗り越える。読み終わったら少し、人生が明るく見える。まぁなんだ、これもアリかな、なんて。 -
Posted by ブクログ
新年をすぎたばかりの春はまだまだ遠いある晩、雪にうずまったムーミン屋敷では
月あかりにムーミントロールが目を覚ましてしまったのです。
「ママ、起きてよ!
世界中が、どこかへ行っちゃったよ」
はじめてみる雪。冬の生き物たち。
ひとりぼっちが寂しくて、スナフキンに会いに行くのだと外へ飛び出します。
海辺では、素敵なシッポの子りすがふとんを探して、チビのミイを起こしてしまいました。
ミイのことはご心配なく、あっという間に冬と友だちになりましたから。(ママの大切な薔薇の模様のコーヒーポットカバーと銀のおぼんで、そり遊びを楽しんでる)
水浴び小屋では冬のとんがりネズミたちとトゥーティッキが冬を生活しています。
冬のムーミン谷には知らないことばかり。雪は下から生えてくるのだと思ったら、空から降ってくるのですね!
不思議な白いうまや、氷姫。
冬には冬の生き物たちがたくさん生きているのです。
少しずつお日様が顔を出し始めると目覚めてしまった人たちが、食べ物を求めてムーミン谷へやってきます。
ムーミンはちゃんとお客様をもてなすことが出来るのでしょうか…
ここでは、ご先祖さまや、それはかわいいちいさなクニットのサロメちゃん、スキーがお得意の陽気なヘムレンなどおかしな人たちと出会い、ムーミンはまた心をかきみだされます。
でも大丈夫、冬を知らなかったあのムーミンよりはちゃんと成長していましたよ。
最後はおてんばミイのせいで、生まれて初めてかぜをひいてしまいます。
でも大丈夫、ムーミンのクシャミに目覚めるのはもちろんあの人なんですから。
ネタバレなんですが、大好きなこのセリフだけ書きとめておきます。
「人生ってほんとにおもしろいものよね。銀のおぼんの使い方は一つきりだとみんなが信じてきたのに、ぜんぜんべつの、ずっといい使い方があったのね。それから、みんなに『そんなにたくさんジャムを作って、どうするの?』なんていわれたけど、ちゃんとぜんぶ食べてもらえたんだわ」
ムーミンがちゃんとお客さんのお世話をしてくれたおかげで、わたしはどこへ行ってもはずかしい思いをしないでいられるわ。
なんて言ってしまうママ。
いつでもやっぱりママが最高。ママは私の理想の人だぁ。
今回も石橋を叩いて渡る派のムーミンと、最強の女の子ミイの対比がたまらなくおもしろい。 -
Posted by ブクログ
久しく絶版になっていた新潮社版をずいぶん昔に買いました。
学術文庫で復刊されたのは実にめでたいです。
当時は北欧神話の本って本当に少なくて、これと新潮社のエッダとか、あとはギリシャ神話と併録された小学生向けみたいなのぐらいしか地方では手に入りませんでした。
内容はややクセがあるというか、親しまれているオーディンやトールの出てくるエッダ系の物語は2/3ぐらいで、あとは各地のヴァイキング伝説や伝承物語といった感じです(こちらには「ハムレット」の原型である「アムレード」などが収録されていて、これはこれで面白いですよ)。
アスガルドサガ系をすっきり体系づけて読みたいのであれば、今はいろいろ出ている北欧神話まとめ系の本のほうが向いているかもしれません。しかし趣があって、リライトされすぎていない内容も私は好きです。 -
Posted by ブクログ
短編集。キャラがわかっているので、我が道を行っているなぁとしみじみしながら読む。
偽善とか協調性とか、日本で手垢にまみれている常識がない。
自分の思った通りの言動をする。
それが温かくなくてもいい。
親切にしたいと思えばする。
それがみんなの当たり前であったなら、不意に見せる優しさには裏表がないと、心から感じることができ、心地良さに身を任せ真っ直ぐに感動できる。
これが正しい人間関係なのだろうか?
正しいも間違いもないよね。
自分に正直に、自分が満たされていることで、他人を思いやることができるのは本当。
何となく調和した雰囲気にリラックスして、パフォーマンスが上がることだってあるだろう。これも本当。
人任せにしないで、自分の頭で考えること。
人と違っても、自分にとって価値があると思うものは守ること。
たぶん大切なのは、この2つくらいなんじゃないかなと思った。