西田幾多郎哲学論集を再読して疲弊した脳みそを休めるために、これを読んだ。
北欧神話と言うが、解説によるとこれは広義のゲルマン神話の一部で、ゲルマンが共有していた神話・伝説が北欧で若干の変容を遂げたものだということだ。
なるほど、伝説の人物達はまるでちょっとスポーツするかのような感覚で「ヴァイキング」
...続きを読むに出かけたりする。略奪とか、ごく当たり前の世界だったのだろうか。
この本、前半は神話を扱っているが、叙述の途中でいつのまにか伝説の類になったり、ずっと後世の、史実に近いエピソードが入ってきたりと、ややわかりづらい語り口だった。
後半はいわゆるサガなどの「伝説・英雄談」で、これは「千夜一夜物語」に通じる、素朴な物語の楽しさを感じさせた。
最後の方で、ヴァーグナーの「ラインの黄金」に出てくる、ジークフリート(シグルド)なども登場。だいたい、ヴァーグナーの楽劇と筋はおなじ。ヴァーグナーの楽劇でも、強そうな英雄ジークフリートは非常にあっけなく死んでしまうが、こちらもそう。それどころか、あらゆる人物があっけなく死んでいき、物語はどんどん次の世代へと移ってゆく。
「世代を超えて物語は進んでいく」いや、あるいは「世代を超えた(個別性を棄却した)場所にしか物語は存在しない」という、古代社会以来の大前提がここにも如実に表れている。