石弘之のレビュー一覧
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ネタバレ
宿主と微生物のせめぎ合い
・宿主と微生物のせめぎ合いは軍拡競争に似ている。
人類は病気を抑え込むために次々と新たな手段を開発してきた。
微生物は薬剤への耐性を獲得することで、ヒトが繰り出す新たな兵器を巧みにかいくぐる。
宿主側はさらに対抗手段を強化しなくてはならない。
・菌が耐性を身につけたということは、抗生物質から生き残った耐性菌が大増殖して猛威をふるうだけでなく、
耐性のない菌までも「耐性遺伝子」を受け取って、耐性菌へと変身する可能性が高まることでもある。
・われわれ人間も、耐性菌を作り出すのに知らず知らずのうちに貢献している。
服用された薬は、全てが体内で代謝されるわけではない。
効果を維持したまま排泄され、トイレを通って下水へ流れ込む成分も多い。
これが河川や海水を汚染する。
・「病気の不快な症状」と忌み嫌っているものの多くが、実は進化の途上で身につけた体の防御反応だ。
「発熱」は微生物を「熱死」させるか、患者が「衰弱死」するかの「我慢比べ」である。
「咳」「吐き気」「下痢」は病原体を体外に排出する生理的反応だ。
「痛み」や「不安」は病気の危険信号なのである。
・戦争が勃発するたびに、兵士も一般市民も食糧不足、不衛生などに苦しめられ、これに感染症が追い打ちをかけた。
特に軍隊は均一的な集団であり、長時間生活を共にするために感染症が蔓延しやすい。
・地球は微生物で満ちていて、年間200万トンを超える細菌やウイルス、5500万トンの菌類の胞子が霧雨のごとく振り注いでいる。
微生物は地表40キロ上空から海面下10キロの深海底まで生息している。
・人体も「常在菌」とよばれる微生物に満ち溢れている。常在菌は体内で互いに排除したり共生したりしながら
一定の調和を保って共存共栄している。
・何らかの原因により、常在菌が本来のすみかでないところに入り込んでしまうと、炎症を起こしてしまう(異物として認識される)
飼いならされていない「野生菌」が入り込んだり、人体が免疫を失って無防備状態に陥ってしまったとき、突如として牙をむく。
・「感染症かアレルギーか」。感染症にかかりにくくなったら、今度はアレルギーに悩まされることになった。
両者はシーソーのような関係であった。
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Posted by ブクログ
1.感染症についてまともに学んだことがなかったので自分の好きな歴史と合わせて読んでみることにしました。
2.感染症が広がった原因は過密社会の構築、人間の行き来が自由になったことにより、これまで触れることがなかったウイルスと出会ってしまったからです。近代化が進み、社会が変容し、暮らしが変わってしまったからこそここまで感染症が拡がったのだと述べています。つい数十年前までは、ウイルスは撲滅できる存在として認識されていたのですが、今は真逆のことを言ってます。つまり、人間は感染ありきで物事を考えていかなくてはなりません。
この本では、過去にどのような歴史を辿って感染症が拡がってきたのか、感染症が爆発的に拡がった原因はなんだったのか、さらに話題になった症状ごとに述べています。
3.人間は感染症と向き合って生きていかなくてはなりません。感染症は数十年に一度のサイクルで訪れるようになってます。このようだと、人間は生きてる限り必ず一度は感染症と向き合うことになります。対策を打ちようにも、人類の成長スピードを遥かに超えるスピードで感染症は人間を襲ってきます。今、苦しめられているコロナもいずれはおさまるでしょうが、また次の感染症がくることは目に見えています。そうなったときに、今回のコロナの経験を活かすことができるのかどうか、ここで人間の成長が問われるのではないかと思います。今回のコロナを機にどのように向き合っていくのかを考えなければならないと思いました。 -
Posted by ブクログ
感染症は太古から人類とともにあった。
感染症の大流行は繰り返され、そのたび、人はそれと闘ってきた。
多くの者が犠牲になる一方で、病禍を生き抜いた者が子孫を残した。
やがて、衛生管理が改善し、栄養状態がよくなり、医学や医療制度が発展した。感染症の原因が細菌やウイルスなどであることもわかってきた。
では、人類は感染症に打ち勝ったのか、といえば、もちろん、そんなことはない。
ヒトが感染症と闘うのと同時に、感染症もまた、自身の存在を賭けて戦っているのだ。少しずつ姿を変え、新たな武器を手にして、ヒトの防御の隙を突き。
本書はそんな、人類と感染症の闘いを俯瞰する1冊である。
著者は環境ジャーナリスト・研究者。
よく整理されていて読みやすいのは元新聞社編集委員のゆえか。
第一部では地球の環境史と感染症の関わり、第二部では人類と共存するウイルス・細菌、第三部では日本の歴史と感染症に触れ、終章では今後、感染症が蔓延する地域を予測する。
2014年の発行だが、今日を予見するような箇所もあり、示唆に富んで、非常に興味深い。
エボラ出血熱。デング熱。マラリア。コレラ。ペスト。SARS。ピロリ菌。トキソプラズマ。ヘルペス。インフルエンザ。エイズ。ハシカ。風疹。成人T細胞白血病。結核。
各論もそれぞれ読ませるのだが、特になるほどと思ったのは、性交渉の危険性のくだり。感染症の病原体は宿主から宿主へと乗り移る。単に近くにいるか、接触するか、捕食するか、機会はさまざまだが、性交渉は接触の中でもかなり濃密なものである。当然、この機を捉える病原体はいる。
例えば、ヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)は、子宮頸ガンの原因ウイルスである。子宮頸ガンの多くは性交渉によるなどのウイルス感染が元で発症する。つまり、感染症によっておこるガンである。
WHOによれば、ガンによる死亡の20%は性交渉で感染するウイルスによるものだという。タバコによるガンの死亡が22%と見積もられるというから、性交渉の危険性は、見方によってはタバコとあまり変わらないとも言えるのだ。
HPVに関しては、ワクチンによる予防がかなり有効と見られるが、副作用に関するトラブルで日本における接種はあまりうまく進んでいない。このあたりの解説も簡潔にまとまっていてわかりやすい。
終章の予言めいた記述も読ませる。
人類も「生き延びてきた」種族だが、感染症病原体たちもまた、「生き延びてきた」種なのだ。
攻防はなお続く。 -
Posted by ブクログ
まさか自分が生きるこの21世紀に感染症が大流行し、世界が混乱に陥るとは思ってもいなかった。本書はCOVID-19流行が始まる以前に出版されたものであるが、著者はそのような新興感染症の出現に警鐘を鳴らしていた。著者からすれば、起こるべくして起きたことと言えそうである。
感染症は人類の歴史の中で常に脅威であり続けたが、近年の医学の進歩により、人類は感染症に打ち勝つことができそうだと幻想を抱いていたかもしれない。しかしCOVID-19により現実を突きつけられた。これまで幾度となく感染症に苦しめられた歴史から学ぶ必要がある。
プロフィールによると、著者は感染症や公衆衛生を専門とする医師ではなく環境史が専門のようであり、自然と人間の関わりという観点から感染症について論じていた。感染症の専門家ではない分、不正確な記述もあったように感じる。 -
Posted by ブクログ
今から8年程前に単行本が出版された時に本屋さんで見かけた記憶はあったのですが、それ以来あることを忘れていました。当時は日本史に興味があったのでそれほど惹かれなかったのかもしれません。
今ではあらゆる歴史に興味を持つ様になったので、変わったタイトルで「鉄条網」の切り口から世界史を解説してある本なのだろうと思い、また文庫化されていたのでネットで取り寄せて読んでみました。
鉄条網は本来は、自分の農地に野生動物が無断に入って作物を食べない様にという目的で開発されたものですが、時代を経るに連れてさまざまな使われ方がされました。この本を読んで、鉄条網に対する意識が変わったこともありますが、開発者の思いとは異なった目的で使用されることもあることを痛感しました。
鉄条網を作った人が悪いというのではなく、その製品をどのように使うかは、使う側のセンス・良識が如実に表れるものなのだなと感じました。
以下は気になったポイントです。
・鉄条網の当初の最大の目的は、農牧場を囲うためで、畑への家畜や野生動物の侵入を防ぐ、家畜を逃がさない様に飼う、所有地の境界を明確にする、外敵からの家族財産を守る、という開拓時代の米国西部では願ってもない機能を兼ね備えていた。六連発銃、電報、風車、機関車、鉄製すき、とともに西部開拓の強力な脇役になり爆発的に普及していった。このためにカウボーイが放牧の牛を追っていく姿は、あっという間に米国西部から消え、鉄条網で囲まれた農牧場がとって替わった。同時に平原でバイソンを狩って暮らしていた先住民(インディアン)も締め出されて居留地の鉄条網中での生活を強いられることになった(p5)
・米国への移民の第一波は、1840年代のポテト飢饉を逃れてきたアイルランドからの移住者100万人、第二波は1880年代前後からの東欧や中欧からの移住者、ユダヤ人も含まれる、第三波は二十世紀初頭で、給料前払いの契約移民。建国当時390万人だった人口は、1800年に530万人、1880年には5000万人、1920年には1億570万人となった(p26)
・ホームステッド法:5年間定住した入植者、解放奴隷に対して1世帯当たり160エーカー(65ヘクタール)の公有地を無償で与える、によって西部開発は加速し、カンザス州、ネブラスカ州は1880年台には、とうもろこしと小麦の一大産地となった、最終的には640エーカーまで広げられた(p31)
・大牧場主は牛の王国を築き上げ、自分らの掟で西部を支配した、この掟の根幹をなすのは、草地と水場の自由な利用であり、家畜の移動の自由である。大牧場主やカウボーイは、鉄条網で農地や水場を守る開拓農家を「掟破り」として目の敵にした、農民はこの3つの自由を阻んだ(p33)カウボーイが主役の西部劇の舞台の多くは、南北戦争から20世紀初頭までのわずか半世紀足らずのこと(p37)
・地中に産みつけられた膨大なバッタの卵は、数年間生き続けられるが、その多くがカビの餌食になる。ところが乾燥に弱いカビが干魃で死滅すると、生き残る卵が増える(p62)
・日露戦争は、機関銃・鉄条網・塹壕・地雷などが登場し、第一次世界大戦という近代戦のさきがけともなった(p76)
・第一次世界大戦においては、塹壕を掘ってその前面を鉄条網や地雷で守るという戦術が広がっていった、コンクリート製の防壁と違って、銃眼が不必要で鉄条網のどこからでも重心を出すことができて攻撃が機動的になった、こうして、塹壕・鉄条網・機関銃の防衛戦術の三点セットが確立した(p87)
・1916年には第一号戦車が完成した、農業用トラクターに分厚い鉄板を張っただけの簡単なものであった、新兵器の名前は秘密にするために「タンク(水運搬車)」と名付けられ、それ以来戦車はタンクと呼ばれる様になった(p96)
・約170万人の死者、426万人の負傷者を出したフランスでは、男性労働者の3分の1を失い、戦後復興に50万人の外国人労働者を招かねばならなかった(p100)
・ノモンハン事件は1991年のソ連崩壊後に公開された公文書によって、それまでは日本軍の一方的敗北と考えられていたが、ソ連軍の死傷者は2万5655人で、日本軍の1万7405人を上回っていた、痛み分けに近かったが、日本軍の損耗率は76%に達した(p104)
・1881年、1899年の二回の南アフリカ戦争により英国は45万人の兵力を注ぎ込んで辛勝したが、4万人以上の死傷者、戦病死者に加えて巨額の戦費の借金を抱え、アジアでの軍事力が手薄になったため、日本と同盟を結ぶことになった(p113)
・日本でも1948−1996年まで優生保護法が存続しており、わかっているだけでも1万六千人を超える国民が強制的に不妊手術を受けさせられた(p123)
・ソ連の最大時の収容者は全労働者の1割以上を占めたとも言われ、強制労働は旧ソ連経済の少なくとも25%を支えていたと言われるほど重要な役割を示した(p140)
・南アフリカは1991年2月の国会開会演説で全アパルトヘイト法の廃止が宣言され、2年後には経済制裁も解除された、1994年4月に行われた総選挙では同国史上初めて全人種が参加する選挙となった、その結果マンデラが史上初の黒人大統領に選ばれた(p160)
・19世紀の後半になるまで大英帝国のコーヒーの主産地はセイロンだったが、アジア一帯でコーヒーのサビ病が流行し、1868年にセイロンでも流行し10年で全滅した。その後は紅茶生産に切り替えられ、コーヒー生産はブラジルに移った(p245)
・韓国が日本に併合された1910年には朝鮮半島の71%が森林だった、軍事境界線は、豊かな森林の中に農地が点在する景色だった(p265)
・チェルノブイリでは、オオカミや猪は住み着いたが、人間に依存していた依存していたイエネズミ、雀、どバトなどはほとんど見られなくなった(p275)
2022年3月20日作成 -
Posted by ブクログ
ネタバレ砂はガラスや半導体、鋳物などに欠かせないが、最大の用途はコンクリートの骨材。世界各地で砂の違法採取などが増えており、事件化するようなことも多い。
ブルジュ・ハリファには76万トンのコンクリートが使用されており、その7割が砂。
中国では年間25億トンのコンクリートが消費されている。アメリカが20世紀100年間に使ったコンクリートの総量が45億トンなので、中国の二年分がそれを上回る。
砂漠にはたくさんの砂があるのでこれを使えば砂漠化も防止されて一石二鳥のように思えるが、砂漠の砂は風に吹かれて運ばれていく途中でぶつかりあい、細かくなりすぎている上に表面がツルツルになっているので砂通しが絡み合わず、コンクリートに混ぜても強度が得られない。塩分の含有性が多いため、アルカリ骨材反応というものを起こしてやはり強度が下がる。