石弘之のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
鉄条網の歴史を通してみる世界史の本。
前情報もなくタイトルに対する興味だけで買って読みましたが、想像以上に深い。
胸の悪くなるような描写もありましたが、知らないといけないことだった。読んでよかったです。
最初は農産物や家畜の為に使われていた鉄条網が、やがて戦争の道具となり、人種や民族で人を隔離するために使われるようになることに、人の悪意というのがいかに強いかが見えるような気がします。
鉄条網の中と外で、生態系や植生まで大きく変わってしまうというのは初めて知りました。いかに人の手が入ることが自然や動物にとって影響を及ぼすかを思い知ると辛いです。 -
Posted by ブクログ
いくつかの感染症をピックアップし、その経緯、ルート、またどんな型があるかの解説がある。
新興感染症については、だいたいが他の動物経由で人に移り変異するため起こるのが多く、「人と森とがちかくなったこと(人口爆発、土地開発)」、「人と人とが近いこと(都市での密集)」、「人やものの移動が多いこと」から広がって来たんだなと実感ができる。これからについての記述で、中国、アフリカで新興感染症が起きやすいことやコロナウイルスがSARSであんなに脅威になるとは、といった"未来予測"に近いことが書かれていて、なるべくしてなった世界なのかもな、と実感した。 -
購入済み
読み易い
コロナ禍でマスコミやインターネットでのつぎはぎだらけの知見しかなかった者にとっては、参考となる本でした。
これからの時代では、この本に記載されている感染症に関する内容は、大人としての最低限の知識としなくてはいけないように思います。 -
Posted by ブクログ
非常に興味深く読むことができた。
「砂」なんてどこにでもあるじゃないか?
なぜこれが資源なのだ?
という興味で読んだのだが、まさに「砂」は「資源」だった。
我々の町や建物を作るにはコンクリートが必要だ。
そのコンクリートを作る為には良質な「砂」が必要なのだ。
「砂」といってもどこにでもある砂ではだめだ。
例えば「砂漠の砂」は粒子が細かすぎてコンクリートには使えないという。
使える砂は、「川の底の砂」や「海の砂浜の砂」なのだ。
こういった資源となる「砂」が闇取引される。
勝手に「砂」が持ち去られるのだ。
簡単に「砂」と言っても、「砂」は一朝一夕には作ることができない。
それこそ「石油 -
Posted by ブクログ
感染症とヒトとの関わりを丁寧かつわかりやすく分析した本。
これまで知っていた歴史の知識に感染症という線が加わることで、新たな見方ができたのが一番面白かった。例えば、
・東西交流は感染症の交流。東から西にペスト、西から東に天然痘やハシカ。欧州のペストの起源は中央アジア。
・ペストの人口減で小作の地位が向上し、封建制度衰退、無策な教会への批判からプロテスタントが。
・中南米のインカ・アステカなどの滅亡は、スペインの武力というよりも、旧世界からもたらされた天然痘やハシカなどのウィルスによる人口激減が原因。1500年に8000万だったアメリカの人口は、1550に1000万まで減少。
・日本でペリー来 -
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(要約)
微生物が人や動物などに寄宿し、そこで増殖することを「感染」といい、その結果、宿主におこる病気を「感染症」という。人類はおよそ20万年前に地球上に登場して以来、繰り返し感染症の脅威と闘ってきた。しかし地球上に40億年前から途切れることなく続いてきた微生物からみれば、人間こそがその生存を脅かす。人間が病気と闘うために薬剤をを開発すれば、微生物は遺伝子の構造を変えて耐性を獲得し、人間の攻撃に耐えられるように変身する。地上で最も進化した人間と、最も原始的な微生物との死闘でもある。
人類と感染症の関係も、人が環境を変えたことによって大きく変わってきた。新興感染症の七五%は動物に起源があり、 -
Posted by ブクログ
著者は環境問題を長く取材してきた新聞記者。
鳥島では明治時代にアホウドリの羽毛輸出がさかんになり、警戒心がなく、陸地では不器用に歩くことから容易に撲殺でき、大量に捕獲されて一時は絶滅の危機に陥る。1977年に初めて上陸した東邦大学教授によって、営巣地を増やすためのイソギクの移植など地道な努力により、200羽から1000羽に増やす。
秋分を過ぎると空に現れた雁はかつては季節を告げる風物詩だった。万葉集には雁を詠んだ歌が80もあり、ホトトギスに次いで多い。著者の思い出は「雁(かり)、雁、棹になれ、さきになれ・・」東京の空では雁が見られなくなって久しいが、「冬水田んぼ」など雁が休める浅い水場を守り、 -
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絶滅に瀕している生物の保護、繁殖活動も必要ではありますが、そこだけにとらわれていると、
それを取り巻く生態系の変化により、他の生物への影響や、我々の生活への影響も出てしまいます。
またどこまで生育数を増やすのか?ただ増やせばいいという問題でもないと思います。
森林伐採からの保護活動にしても同じことが言えます。
かつては、どのような状態で生態系が保たれていたのか調べ、戻さなければ意味がありません。
生態系は地球環境の変化(人類の手によるもの以外)でも常に変化しているものです。
たやすく人類が生物のためと思い、あまりにも大きく手を加えてもいてないと思います。
公害防止の観点では、企業がよくよく環境 -
Posted by ブクログ
読書録「感染症の世界史」
著者 石弘之
出版 角川文庫
p112より引用
“ 感染症は当初、偶然持ち込まれたものだが、
その絶大な効果に驚いた欧米人は、病気を意図的
に利用した。農園造成などで邪魔になる先住民を
除くために、ハシカ患者の衣服をインディオに与
えるなどの「細菌戦」を行ったのである。
一八世紀のカナダでは、イギリスやフランスが
先住民を効率的に殲滅する方法として、ハシカ患
者の衣服を買い集めて彼らに配った記録が残され
ている。それらの部族は現在では完全に絶滅し
て、痕跡すらとどめていない。"
目次より抜粋引用
“人類と病気の果てしない軍拡競争史
人類の移動と病気 -
Posted by ブクログ
石先生の本は、とれもおもしろくて勉強になる。本書もそう。綿密な調査に基づいているけれど、学術に寄りすぎていなくて読みやすい。
御年80を過ぎての本だとはビックリ。こういう方には年齢は関係ないな。
メモ
■1707年の宝永地震は推定M8.7の南海トラフ三連動地震。その後富士山が大噴火した。
■マグマの対流で地磁気がつくられ、太陽風や宇宙線の影響を遮っている。火山は地球に生物多様性と恵みをもたらす。
■火山灰中の硫酸塩エーロゾルは大気中に滞留して太陽光を遮り「火山の冬」をもたらす。
■地球の過去の環境を推定する手法として、氷床コア、年輪幅などが使われる。
■米国のイエローストーンは地上最大の活火 -
Posted by ブクログ
コンクリートを作る原料として必須の砂を巡る世界的な奪い合いやそれにまつわる犯罪などを解説している。砂と言えば砂漠化の進行を防ぐ話題しか思い付かなかったが、資源としての砂の奪い合いが起きているとは思わず、なかなか衝撃を受けた。ちなみに砂漠の砂では角が取れ過ぎていてコンクリートの材料にはなれず、形が色々な砂でないと使えないらしい。
特に衝撃だったのは、「砂マフィア」の存在や、砂の輸出入とその制限が各国で発生していること。本書のタイトルそのままに、砂の違法売買と政治家や警察まで取り込んだマフィアの暗躍、それを糾弾する人達の暗殺など、砂はもはや貴重な資源であり、利権や犯罪の温床にさえなっていることだ