木下眞穂のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
この本は物語ではなく、「戦争は〜」という一文ずつで淡々と語られる作品だった。けれどその一つひとつが胸に迫り、どれも確かに「戦争の顔」を映していると感じた。戦争にはいろんな側面があるのだと、読むたびに考えさせられる。
絵はシンプルで色も限られているのに、不気味さや緊張感がにじみ出ていて、言葉の重みとともに強い印象を残す。文章が短く少ないからこそ、読み手に「あなたはどう思う?」と問いかけてくるようでもあった。
私は戦争を知らない世代だ。けれど、今の平和は過去の痛みや犠牲の上に成り立っているということを、この本を通じて改めて考えさせられた。戦争を体験した人たちの声が届きにくくなってきている今、こ -
Posted by ブクログ
ネタバレ最初は絵だけなので、一瞬イラスト集?と思ってしまった。
けど、この絵だけのページがじわじわとくる。
イラストは色が少なくて不穏な空気を描いている。そこに添えられる文章は「戦争は、×××」と続いていく。
これが全て頷けてしまうのだから怖い。
『戦争は、物語を語れたことがない。』『戦争は、鋼と影の子どもたちを生み出す。』
私がいいなと思ったのはこの二つ。そこについているイラストも本を燃やししていたり、工場で人が作られていたりとゾッとする感じがする。
全てがリアルすぎる。
戦争の現実しか書かれてないので、おそらく幼児向けや小学校低学年向けではない。高学年ぐらいから読めるのかなと思った。
こ -
Posted by ブクログ
岩波「図書」8月号に訳者木下眞穂さんの解説が載っていて、紐解いた。ポルトガルの絵本。
「戦争は、」に続く幾つかの短詩と、禍々しいイメージ絵で構成される。鼠色と褐色しか出てこない。
先ずはこの詩篇にドキッとした。
戦争は、日常をずたずたにする。
「進行していますね」と耳元でささやかれる病気のように。
←あゝ、私にはこの体験はないけど、かつての父親を見ていて、正に彼の心の中に「戦争」が進行していたのだと、まざまざとイメージを持つことができた。
「もののけ姫」の猪神がたたり神に侵されてゆくときの黒い蛇みたいなものが、大陸の林の間をずっと進んでいき、群れをなし、禍々しい鳥の導きにより、街の中の -
Posted by ブクログ
あの『アルケミスト』のコエーリョが?と、ずっと気になっていた本は、その名も『不倫』。
出版当初に賛否両論の的となったこのタイトルから、内容も大きく外れはしない。
しかし、主題は恋愛などではない。
曰く「世界でも有数の安全な国」に暮らすリンダは、ジャーナリストとして有力新聞社に所属。
聡明な彼女には二人の子供と、国内でも指折りの資産家である夫が居る。
夫は結婚から十年が経過した今でもリンダを情熱的に愛しており、二人は常に世間の羨望を集めていた。
しかしリンダは、とあるインタビュイー(解説によるとコエーリョ自身が投影されている)の一言から、現状を疑問視し始める。
日々、増していく倦怠感 -
Posted by ブクログ
ネタバレミリアは激痛に耐えて夜中の街を彷徨っていた。10代で統合失調症に罹り、担当医のテオドールと結婚し離婚。
登場人物全員、ミリアの子である12歳のカースですらどこか不穏でおかしい。散漫に見せかけた物語の展開の中でそこかしこに事件へのトリガーが散りばめられていた。
本作は彷徨感の強い作品だが、殺人の原因と結果というところは的を射ているのではと感じた。フィクションでは殺人の原因、理由は複雑に描かれたりするが、現実では人は人をある日突然あっさりと殺してしまうものだ
この小説がポルトガルでベストセラーということでポルトガルという国から受ける印象が変わりました。
精神病院と性行為、というとどうして