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戦争は,何も知らない人たちの柔らかな夢に入りこむ.戦争は,物語を語れたこともない.--気づかぬうちに進行する病気のように日常をずたずたにし,野心や憎しみを糧に貪欲に育つ戦争.自らも独裁政権に抗した,ポルトガルを代表する文学者の詩とその息子による絵で,戦争の残酷な本質を描く.今こそ読まれるべき,衝撃的な絵本.※この電子書籍は「固定レイアウト型」で作成されており,タブレットなど大きなディスプレイを備えた端末で読むことに適しています.また,文字だけを拡大すること,文字列のハイライト,検索,辞書の参照,引用などの機能は使用できません.
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Posted by ブクログ
この本は物語ではなく、「戦争は〜」という一文ずつで淡々と語られる作品だった。けれどその一つひとつが胸に迫り、どれも確かに「戦争の顔」を映していると感じた。戦争にはいろんな側面があるのだと、読むたびに考えさせられる。
絵はシンプルで色も限られているのに、不気味さや緊張感がにじみ出ていて、言葉の重みとともに強い印象を残す。文章が短く少ないからこそ、読み手に「あなたはどう思う?」と問いかけてくるようでもあった。
私は戦争を知らない世代だ。けれど、今の平和は過去の痛みや犠牲の上に成り立っているということを、この本を通じて改めて考えさせられた。戦争を体験した人たちの声が届きにくくなってきている今、こうした作品から「戦争がなぜいけないのか」を知り、問い続けることが必要だと思う。
対象年齢は中学生以上とされているけれど、むしろ小学生の子どもたちにも、大人と一緒に読む機会があっていいと思う。すべてを理解する必要はない。ただ「怖い」「こんなことは起きてほしくない」と思えることが、その子の中に“戦争に対する感覚”として根づいていくのではないか。読むときに大人がそばにいて、感情や疑問に寄り添えば、それはきっと意味のある読書体験になる。
戦争がなぜ起きるのか、どうしてなくならないのか。その背景は国や宗教、教育、時代によってまるで違う。でも、どんな理由があったとしても、「戦争をして得るものなんて本当は何もない」と、この本は静かに、それでいて確かに伝えてくれる。
これは「読んで終わり」ではなく、「読んで考える」ための一冊だ。どの世代にも読んでほしい、そして語り合ってほしい。そう感じた。
Posted by ブクログ
岩波「図書」8月号に訳者木下眞穂さんの解説が載っていて、紐解いた。ポルトガルの絵本。
「戦争は、」に続く幾つかの短詩と、禍々しいイメージ絵で構成される。鼠色と褐色しか出てこない。
先ずはこの詩篇にドキッとした。
戦争は、日常をずたずたにする。
「進行していますね」と耳元でささやかれる病気のように。
←あゝ、私にはこの体験はないけど、かつての父親を見ていて、正に彼の心の中に「戦争」が進行していたのだと、まざまざとイメージを持つことができた。
「もののけ姫」の猪神がたたり神に侵されてゆくときの黒い蛇みたいなものが、大陸の林の間をずっと進んでいき、群れをなし、禍々しい鳥の導きにより、街の中の大きなビルの一室の1人の男に取り憑く冒頭。
そのあとの幾つもの詩句は、
文・ジョルジェ氏の経験から作られたものには違いない。けれども、今はウクライナやガザにもほとんど当てはまる(作られたのは2018年)のが恐ろしい。
文と絵は、ポルトガルのレトリア父子によって作られた。ポルトガルは1926年から1974年まで、48年間独裁政権下にあった。ジョルジェは無血のカーネーション革命を支えたレジスタンスだったらしい。絵は静かに始まり、やがて次々とカタストロフが進んでゆく。
司令官(?)の胸元を這い回る蜘蛛や百足や無数の虫蟲。彼が見下ろす作戦地図にも蟲が這い回り、やがて「戦争は、凶悪な顔を幾つも持つ。」として、表紙にあるような1つの顔を被って焚書坑儒を為し、マイクに向かっている。「戦争は、すべてを焼きつくす 栄光の夢を見る」と詩句は叫ぶ。
「戦争は、廃墟の町を支配するのが好きだ。」
それはもうまるで、ウクライナやガザのようだ。ーー見かけだけじゃない。こんな心を侵していく風景をも言葉にする。
「戦争は、憎しみ、野心、恨みを糧とする。」
「戦争は、何も知らない人たちの柔らかな夢に入り込む。」
「戦争は、鋼と影の子どもたちを生み出す。」
戦争は、人類が産んだ鬼子だとわたしは思う。
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