F・W・クロフツのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
【ミステリーの古典名作を今さら読む】
このところ連続で観ている刑事コロンボ、コロンボといえば倒叙物…犯人が初めから分かっており、犯人がいかに追い込まれていき、犯行を見破られるか…という形式のミステリー。
そして、倒叙物の古典名作といえば、こちら、クロフツの『クロイドン発12時30分』ということは知っていましたが、絶版で入手困難なこともあり未読でした。最近、新訳が出ていることを知り入手。
いやー、まさに「倒叙物」の典型的フレームで話が進み、大いに楽しめました。主人公が犯行に踏み込むまでややダレますが、そこから先はかなり怒涛の展開。もちろん、今読むと「ありがち」の展開なのですが、それはある意味こち -
Posted by ブクログ
リハビリ?用の読書。
芥川賞の予想を盛大に外したことにより、いじけてしまい、読書なんて当分するものかと思っていた。
だが、かと言ってゲームや映像作品に時間を使おうとしても、早々に飽きてしまう。何とか本を読む楽しさを思い出そうと、純文学作品ではなく、しばらくは力を抜いて読めるミステリや時代小説に癒しを求めようと思い、積読になっていた本書を読んだ。(純文学復活の暁にはとりあえず福永武彦氏あたりだろうか。)
古典的名作とされているだけあり、丁寧に作り込まれた、読み応えのある本だった。ただ、ミステリを久しぶりに読んだので、それゆえにミステリを読むことそのものに対しての期待感と、それが満たされた充実感が -
Posted by ブクログ
クロフツ1920年発表の処女作にして代表作。推理小説の古典であり、愛好家必読の一冊でもあるのだが、肩肘張ることなく今でも充分に楽しめる。ストーリーは、殺人事件の発生からドキュメントタッチで展開し、実直な警察官と私立探偵の地道な捜査によって、ひとつひとつの謎が解き明かされていく。天才的な探偵による名推理を排し、極めて地味な印象を与えかねないが、リアリスティックな描写は考え抜かれた構成の妙によって、返って滲み出るような緊張感を生んでいる。本作品が突出しているのは、表題でもある「樽」が冒頭から終幕まで動的なモチーフとして効果的に使われていることで、不可解な謎の核として機能し続ける。本作の真価でもある
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Posted by ブクログ
今から100年ほど前のミステリー小説。
「樽から女性の死体が……」というショッキングな出だしからは想像できないほど、丹念な謎解きのプロセスを描く。
この物語には、ポアロもホームズも、メグレ警視もいない。
謎を解いていくのは、普通の真面目な職業人たち。
しかも、発見者ブロートンは早々に退場し、300ページ近く丹念に捜査していたバーンリー警部とルファルジュ刑事は、最後の100ページで弁護士と探偵に取って代わられ……
さてさて、いったいこの物語の主役は誰だったのか……。
そう、最初から一貫して登場する“樽”です。
時代は、社会を動かす力が人力から化石燃料へ劇的に変わるころ。
馬車から船や汽車、自 -
Posted by ブクログ
推理小説における"アリバイ崩し"という要素を確立させた、古典的名作。
今まで読んできたミステリが、天才的な頭脳を持つ変人名探偵が、天才的な推理をして、複雑怪奇な謎を解くのが殆どだったので、本作のような一般的な感性を持つ刑事や探偵が、自分の足を武器に、ひたすら捜査、聞き込みを繰り返し、地道に一歩一歩真相解明に近づくというのは、割と新鮮だった。なんかこういう系は地味〜な印象を持っていたので今まであんまり手に取ろうとは思わなかったのよね...
実際インパクトは少ないのだけれど、その分堅実に面白かった。
たまにはこういうリアリズムに溢れたのも良いなぁと思った次第。(でもやっぱりミス -
Posted by ブクログ
不況の煽りを受け経営者チャールズの工場は閉鎖寸前、頼みの綱は叔父の財産だったがあえなく断られる。 先の短い一人の老獪と将来のある従業員たちを天秤にかけたチャールズは・・・。
古典中の古典の倒叙ミステリです。 一章にて叔父が殺されます。 当然犯人はチャールズなのですが二章以降のチャールズの計画・行動・心理描写が素晴らしい。 人間の一喜一憂、警察の領分や法廷の様子を丁寧に描いている。 ミステリにありがちな過剰な装飾や目立ちたがりな探偵や警部は登場せず現実に則った警察と容疑者の攻勢が描かれる。 派手さを削いだリアル故の地味、解決に至るまで精緻を究めた一作。