F・W・クロフツのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ネタバレ4.5くらい。面白かったけれど、少しだれたところもあったので。
でも夢中になったところもあった。アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』と同年に発表されたというのが驚き。
江戸川乱歩や米澤穂信が挙げていたので読んだ。
また、横溝正史の『蝶々殺人事件』について、この『樽』と類似性として時々挙げられていたのも見かけて気になっていた。
タイトル通り、樽の話。
三部に分かれていて、最初は樽の発見とその行方。
次に被害者の身元と容疑者の割り出し及びアリバイ確認。
最後は、被疑者のアリバイ崩しと真犯人探し。という三段構え。
最初は情景描写に少し滅入ったけれど、樽の行方がわからなくなって、それを追いかける行程が面白かった。
アリバイ確認のところはあちこち言って話を聞いてで少し飽きちゃった。大事なんだけど、ここら辺はもう少し面白くなるような展開があると良かったかなあと思う。
最後の探偵パートでアリバイ崩しが本格的になったところから楽しめた。前提が覆っていき、いろいろなことがわかっていく。
細かい突っ込みどころがあれど、真犯人が言う通り、そうやったのなら可能だなと思える話で面白かった。
解説のところで樽の傷について突っ込まれていたけれど。同一かどうかどうやって判断したのか、どのタイミングで傷をつけたのか。まあ、人の証言でしかないので、うやむやになるのは仕方ない。でも作者ならちゃんとそこは考えておいて欲しかった部分でもある。
気になったのはくじの話があまりにも出来過ぎている。たまたま聞いていたってなんだよ。これでだいぶ容疑者が絞れる情報なのに。ボワラックがそこにいた可能性を匂わせる描写が欲しかった。
あとボワラックがイギリスでの動きについて特に怪しまれずに行動できたところも突っ込みたい。フェリクスに扮していたそうだけど、それでも家に侵入して工作してるんだから、その可能性の描写も欲しかった。
フェリクスが無罪なら誰かがやった!だから誰かが侵入した!で通すのか、そうかぁ~の気持ち。
あと警察よりも探偵のほうが派手にお金を渡して情報を聞き出していたのが面白かった。これはわざとなのか、時代柄そういうものだったのか。
イギリスとフランスの刑事が仲良かったのも良かった。組織としてみんな聞き分けが良くて、優秀。喧嘩しない。
そうじゃないと話が進まないからだけど、人間関係が良好過ぎて面白い。
情報を集めるために広告を打ちまくるのも面白かった。その精査は大変そうだったけど、予算とか気にしないでバンバン出してる。
探偵側が出していた経費は依頼人が負担する!ってなってたけど、すごいな。警察のほうもすごい。警察が広告を打つ場合は捜査に協力せよ、見返りに情報を渡す、みたいな取り決めがあったのかな。
最後のボワラックの行動も好き。潔いのか慢心していたのか。
そして最後はフェリクスのハッピーエンドで終わってた。
駆け足なハッピーエンド。横溝正史の本陣殺人事件の最後みたいだった。
当時はよくある終わり方だったのだろうか?クリスティじゃなかったと思うけど。クリスティは安易にハッピーエンドで終わらせず一つの事件が終わって、これからも人生は続く、みたいな余韻だった気がする。 -
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”倒叙ミステリーの教科書”とも呼ばれる一冊。
古畑任三郎などを通ってこなかったので、「最初から犯人がわかっているのに、何が面白いんだろう?」と思って読み始めましたが、面白かったです!
法廷のシーンも引き込まれたなぁ。
犯人であるチャールズがいかに犯行を決意したか、準備の数々と、状況の進行により一喜一憂する胸中……。
殺人犯の心理はわからなくても、例えば仕事でのミスを隠しているといった、”一生隠しておきたいけど、一生気が晴れることもない”事柄には身に覚えがあるので、いつ警察が家に来るのかと、こちらもヒヤヒヤしながら読んでいました(^^;
この手のストーリーだと思わず犯人を応援したくなる読者の方もいるようですが、そうはならなかったのは、ひとえにチャールズの身勝手さ。
世界恐慌に端を発する不況から会社を守りたかった……はまだわかるのですが、別に気持ちが通じているわけではない恋人(だと思っている)への見栄にすがりつく姿に、私は早々に見限ったのでした。
消印や筆跡を真似する暇があるならその分働いたら?と冷たい目で見てしまうというもので。。
それにしても、おまわりさんはやっぱりすごい。
本書はチャールズ視点でフレンチ警部の出番があまりなかったので、次は彼が主役の作品を読んでみたいなと思います! -
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チャールズは工場の経営に行き詰まり、求婚相手のユナはお金のない男は相手にしない。頼みの綱の叔父は全くお金を貸してくれない。チャールズは従業員と叔父の命を秤にかけ、叔父の殺害を決意する。
フランシス・アイルズの「殺意」、リチャード・ハルの「伯母殺人事件」と並んで3大倒叙ミステリーと言われる作品。
同じ倒叙ミステリーでも、刑事コロンボとか古畑任三郎と違い、探偵がジワジワと犯人を追い詰めていくといったサスペンス的な要素はあまりなかった。
倒叙ミステリーではあるんだけど、法定ミステリーと警察ミステリーも含まれる作品で、特に犯人の犯行に至るまでの動機と準備が丁寧に描かれているのが特徴。 -
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クロフツの『樽』、読んだことなかったのですよね…新訳が出て買ってあったのですが、それ以降も読まずに積んでおいて数年…ようやく読まました。
『樽』という地味な題名と、「頭がこんがらがるような複雑なパズル的トリック」が用いられているのかと勝手にイメージを持って後回しにしていたのですが、読んでみたら…おそらく新訳の読みやすさもあり…全くさにあらず。なかなか面白く、一気読みしました。
巻末の有栖川有栖さんの解説も良い。まさに鮎川哲也さんの『黒いトランク』や横溝正史さんの『蝶々殺人事件』の着想の原点となっているであろう本作、古典名作に違わぬ佳作でした。いま読んでも。 -
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【ミステリーの古典名作を今さら読む】
このところ連続で観ている刑事コロンボ、コロンボといえば倒叙物…犯人が初めから分かっており、犯人がいかに追い込まれていき、犯行を見破られるか…という形式のミステリー。
そして、倒叙物の古典名作といえば、こちら、クロフツの『クロイドン発12時30分』ということは知っていましたが、絶版で入手困難なこともあり未読でした。最近、新訳が出ていることを知り入手。
いやー、まさに「倒叙物」の典型的フレームで話が進み、大いに楽しめました。主人公が犯行に踏み込むまでややダレますが、そこから先はかなり怒涛の展開。もちろん、今読むと「ありがち」の展開なのですが、それはある意味こちらが元祖というか「原型」なのですから当然です。
名作は色褪せませんね。 -
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リハビリ?用の読書。
芥川賞の予想を盛大に外したことにより、いじけてしまい、読書なんて当分するものかと思っていた。
だが、かと言ってゲームや映像作品に時間を使おうとしても、早々に飽きてしまう。何とか本を読む楽しさを思い出そうと、純文学作品ではなく、しばらくは力を抜いて読めるミステリや時代小説に癒しを求めようと思い、積読になっていた本書を読んだ。(純文学復活の暁にはとりあえず福永武彦氏あたりだろうか。)
古典的名作とされているだけあり、丁寧に作り込まれた、読み応えのある本だった。ただ、ミステリを久しぶりに読んだので、それゆえにミステリを読むことそのものに対しての期待感と、それが満たされた充実感が否応なく増していた、そのことを差し引いて考えなければならないかもしれない。でも、一方で期待が大きかっただけにもし魅力の乏しい内容であれば読後の失望もそれだけ大きくなるはず。そうはならなかったのだから、やはり心からこの読書に満足したのである、私は。発想の奇抜さや天才的な探偵は確かに登場しないが、証拠を一つ一つ地道に積み重ねていく過程はスリリングだし、作者の真剣さや真摯さも伝わってくるほど。
また、本書の内容自体はもちろんだが、巻末の解説2本が素晴らしく面白かった。特に有栖川有栖の解説は読後感を何倍にも良くしてくれる素晴らしいものだ。ぜひ、鮎川哲也「黒いトランク」も読んでみたい。 -
Posted by ブクログ
クロフツ1920年発表の処女作にして代表作。推理小説の古典であり、愛好家必読の一冊でもあるのだが、肩肘張ることなく今でも充分に楽しめる。ストーリーは、殺人事件の発生からドキュメントタッチで展開し、実直な警察官と私立探偵の地道な捜査によって、ひとつひとつの謎が解き明かされていく。天才的な探偵による名推理を排し、極めて地味な印象を与えかねないが、リアリスティックな描写は考え抜かれた構成の妙によって、返って滲み出るような緊張感を生んでいる。本作品が突出しているのは、表題でもある「樽」が冒頭から終幕まで動的なモチーフとして効果的に使われていることで、不可解な謎の核として機能し続ける。本作の真価でもある「アリバイくずし」については、真犯人による衝動的犯行後に瞬時に閃いたにしては、やや出来すぎの複雑さを持ち、この点ではリアリティは無い。だが、本格推理の新たな道を開拓した作品としての意義は大きく、狡猾な犯人像も鮮やかな印象を残す。