F・W・クロフツのレビュー一覧
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ネタバレ題は樽。
その名の通り、ずっと樽を巡って話が展開。
ワイン樽に混ざってやたら重い樽がある。
重すぎて荷運びのバランスが崩れ、樽の一部が破損し、中に入っていたであろうおが屑と共に数枚の金貨が見つかる。
中身は一体何なのか?
好奇心で破損部を開いてみると女の手が見えた。
事件性があるとして驚いていると、その樽の受取人を名乗る人物がやってくる。
樽が到着していることを荷降ろし時にでも目にしているかもしれないから届いてないとは言えないし、受け取るには手続きが必要だから〜として足止めしつつ、会社にも相談した上で警察に通報。
が、戻ってみればその樽は消えている。
その後も、樽が見つかるがまた消える。 -
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コロンボや古畑のような犯人の心理が読める倒叙が何より好き。
『漂う提督』でクロフツが読みやすかったので、三大倒叙のクロフツも読んでみたくなった。
三大倒叙ミステリ
1931年『殺意』アイルズ
1934年『クロイドン発12時30分』クロフツ
1934年『叔母殺人事件』リチャード・ハル
3人ともイギリス出身の〈ディテクション・クラブ〉のメンバーで、たったの3年で三大倒叙は完成されていたというのが興味深い。
まず、冒頭のローズ10歳が初めて飛行機に乗るシーンがとても素晴らしい。
とある事情で突然飛行機に乗ることになり、その時の高揚感、緊張感、離陸、変わっていく窓の外の景色、音、揺れ、隣の席の父 -
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とっても楽しく読みました。江戸川乱歩さんのおすすめだからではなく、津村記久子さん『やりなおし世界文学』なんです。
ミステリの古典。出版は1920年、同年アガサ・クリスティーさんも『スタイルズ荘の怪事件』でデビューされています。日本なら大正時代。
この作品は、探偵小説・アリバイが特徴とどこかに書いてありました。
作品は3つのパートに分かれています。あらすじをたどると、
1.事件の発端、パリからロンドンに貨物船で着いた「樽」が荷揚げ中に落下一部破損し、金貨ポロリ・人間の「手」がチラ見え、その後行方不明、警察がようやっと発見し、中身が明らかになります。
2.警察が、ロンドンと発送元のパリで -
購入済み
地道な捜査に好感度大
地道な捜査でコツコツと真相に迫っていく人たちに好感が持てます。変なキャラクターの探偵が出てくる探偵ものとは違った面白さがあって、ミステリーは飽きたという方に是非読んでいただきたい一冊です。これがおもしろいと思った方は鮎川哲也の「黒いトランク」もお勧めです。
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荷揚げ中に破損した樽から金貨と女性の腕が見つかる。運送会社の社員が警察とともに樽のもとに戻ると、樽はすでに引き取られた後だった。樽の行方、そしてその中身をめぐるミステリー。
タイトルからして「なんだか地味そうだな」と思って、名前こそ知っていたもののなかなか手を出さなかった一冊です。古書で半額で売られていたので、ようやく手を出しました。
前半は樽はどこに消えたのか、中盤以降は犯人はだれか、という謎が主題になるわけですが、一つの謎が解ければ、また次の謎が表れ、その謎が解けたかと思いきや、イマイチ事件とは結び付けにくかったり……、そんな風に謎を非常に巧く見せている気がします。アリバイトリック -
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ネタバレ4.5くらい。面白かったけれど、少しだれたところもあったので。
でも夢中になったところもあった。アガサ・クリスティーの『スタイルズ荘の怪事件』と同年に発表されたというのが驚き。
江戸川乱歩や米澤穂信が挙げていたので読んだ。
また、横溝正史の『蝶々殺人事件』について、この『樽』と類似性として時々挙げられていたのも見かけて気になっていた。
タイトル通り、樽の話。
三部に分かれていて、最初は樽の発見とその行方。
次に被害者の身元と容疑者の割り出し及びアリバイ確認。
最後は、被疑者のアリバイ崩しと真犯人探し。という三段構え。
最初は情景描写に少し滅入ったけれど、樽の行方がわからなくなって、それを -
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”倒叙ミステリーの教科書”とも呼ばれる一冊。
古畑任三郎などを通ってこなかったので、「最初から犯人がわかっているのに、何が面白いんだろう?」と思って読み始めましたが、面白かったです!
法廷のシーンも引き込まれたなぁ。
犯人であるチャールズがいかに犯行を決意したか、準備の数々と、状況の進行により一喜一憂する胸中……。
殺人犯の心理はわからなくても、例えば仕事でのミスを隠しているといった、”一生隠しておきたいけど、一生気が晴れることもない”事柄には身に覚えがあるので、いつ警察が家に来るのかと、こちらもヒヤヒヤしながら読んでいました(^^;
この手のストーリーだと思わず犯人を応援したくなる読 -
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チャールズは工場の経営に行き詰まり、求婚相手のユナはお金のない男は相手にしない。頼みの綱の叔父は全くお金を貸してくれない。チャールズは従業員と叔父の命を秤にかけ、叔父の殺害を決意する。
フランシス・アイルズの「殺意」、リチャード・ハルの「伯母殺人事件」と並んで3大倒叙ミステリーと言われる作品。
同じ倒叙ミステリーでも、刑事コロンボとか古畑任三郎と違い、探偵がジワジワと犯人を追い詰めていくといったサスペンス的な要素はあまりなかった。
倒叙ミステリーではあるんだけど、法定ミステリーと警察ミステリーも含まれる作品で、特に犯人の犯行に至るまでの動機と準備が丁寧に描かれているのが特徴。 -
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クロフツの『樽』、読んだことなかったのですよね…新訳が出て買ってあったのですが、それ以降も読まずに積んでおいて数年…ようやく読まました。
『樽』という地味な題名と、「頭がこんがらがるような複雑なパズル的トリック」が用いられているのかと勝手にイメージを持って後回しにしていたのですが、読んでみたら…おそらく新訳の読みやすさもあり…全くさにあらず。なかなか面白く、一気読みしました。
巻末の有栖川有栖さんの解説も良い。まさに鮎川哲也さんの『黒いトランク』や横溝正史さんの『蝶々殺人事件』の着想の原点となっているであろう本作、古典名作に違わぬ佳作でした。いま読んでも。