ロバート・クレイスのレビュー一覧
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ネタバレコール&パイクシリーズ、現状翻訳版では最新作。
今回は傭兵あがりの寡黙な男パイクが主人公。無口で強くてカッチョ良い、愛車がジープってのも似合ってる。(相棒のコールはコルベットってのも似合ってる)
助けを求める女性依頼人(気は強いが暴力沙汰は素人)を助けるマッチョなバディ、このご時世では叩かれることにもなりかねないような前時代の設定、悪いが俺は大好物で、そういやスペンサーしかり、ジョー・ピケットしかり。
そんな俺がこのシリーズ、この作品を外せるわけもなくて、案の定無我夢中で読んでしまった。
バディと依頼人たちも良いが、悪役たちの右往左往ぶりがエエ味出していて、読ませ処になっている。 -
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ネタバレお初ロバートクレイス。コール&パイクシリーズという本国アメリカでは長く続いているシリーズらしく、いくつかの作品は日本でも既訳、創元推理文庫では同作家別のシリーズが2作訳出されていて、そのうち1作が本作の前作になるらしい。MCUか(笑
シリーズ途中からだと、あんまり面白さが理解できなかったらイヤやなぁと思って読みだしたが、いくつか理解できないこともあったが(前半のキャンセルになっらデート相手とか、ラストの格闘技の組み手をする相手のこととか)、本筋にはあんまり関係ないようで、その辺は追いかけて行ったらおいおい分かるのかなと。
ということで、シリーズを追いかけるのを決めたくらい面白い作品だった。コールの人間臭さは、スペンサーの伝統を引き継ぐ王道アメリカ流ハードボイルド。ジョーピケットほど四角四面ではなく、スペンサーほどマチズムではなく、ニヒルさもウェストコーストっぽい軽さも併せ持つ正義感ってのが、手ごろで良い。
相方パイクも、戦闘力こそスゲーが、ちょっとマニアック。ホークのような洗練されたお洒落はなく、人づきあいは悪そうだがネイトほど厭世感は持ってなさそう、こちらも手ごろなのだ
勿論、1作品読んだだけなので、2人、そして物語の背景はこれから深みが増していくのだろう。それもまた楽しみ。何しろ、本作のヒール2人だけでも勿体ないくらいにカッコ良いのだ。音楽談義のシーンは必読。
いやー、久々に楽しみなシリーズ見つけた。未訳作いっぱいあるってのは勿体ないなぁ。 -
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警察犬マギーのシリーズではありません。
「指名手配」は探偵コール&パイクシリーズ17作目で、「サンセット大通りの疑惑」以来19年ぶりの邦訳(訳者あとがきより)です。
ロバート・クレイスのWikiにある作品リストだとわかりにくいですね。
マギーが登場する「容疑者」は当初単発作品のつもりだったのではないでしょうか。
しかしこの作品が作家を復活させるほどの人気を得たので、
新たに得た読者層を続編「約束」に導いてコール&パイクに出会わせ、
マギーは?と思っているうちにコール&パイクの魅力にひきつけて本流のシリーズに誘う仕掛けかな。
仕掛けにはまった私は「指名手配」でさらに2人に魅了され、
それと共になぜコールとパイクはこんな女性や子どもを守ろうとするのか不思議になって、入手難しいコール&パイクシリーズ1作目から読むことになりました(笑) -
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互いに大事な存在を喪った警察犬と警官の出会い。
警察犬マギーの感覚が伝わる表現で、胸が熱くなる物語です。
アフガニスタンの海兵隊で、爆発物探知犬だったマギー。
ハンドラー(指導手)のピートが撃たれ、かばって被弾したマギーはアメリカに戻っています。
大きな音に怯えるため、警察犬としては無理だろうと思われていましたが…
スコット・ジェイムズは、ロサンゼルス市警の巡査。
銃撃事件に遭遇して相棒を亡くし、自らも重傷を負いました。
復帰後に警察犬隊を志望したのは、人間の相棒の悲痛な叫びを忘れられなかったため…
9か月後、マギーに出会って、コンビを組むことにします。
警察犬隊の主任指導官リーランドは、犬にかけては凄腕で知らないことはない。
心と体に傷を負い、警察犬隊にはあまり向いていないかもしれない犬と人に、もしかしたらと期待をかけます。
犬につけるリードとは、ただ人間が命令を伝えるものではなく、犬と人間が双方向で様々な感情を伝え合うものなのだとか。
マギーが人間とは桁違いの匂いを細やかに嗅ぎ分け、様々な状況を賢い犬なりの価値観で見抜いて判断していく様子がリアルに、ありありと描かれます。
ハンドラーのピートだけが大事な仲間で、彼を守り喜ばせるために生きていたマギー。
(もう、たまりません…)
初心者でぎこちないスコットの誠意を受け止め、新たなパートナーへと絆を深めていくのです。
スコットの事件は9か月たっても未解決でしたが、これも捜査官が変わり、動き出します。
スコットの記憶の切れ端や、現場に行ってみたマギーの反応など、わずかな兆候からも進展が見えてくる。
盛り上がる結末にも満足感がありました。
2013年の作品。
ロバート・クレイスは、2010年にMWA生涯功労賞を受賞しています。 -
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ネタバレスコットとマギーの第二弾。
と思いきや、エルヴィス・コールもジョー・パイクも出ていた。
失踪した女性を探すために女性の知り合いを訪ねたコールは、
逃亡中の犯人を追ってきたスコットとマギーに出会う。
女性はジャーナリストだった息子を自爆テロで失い、
復讐しようと爆薬を作っていた。
スコットは犯人の顔を見ていたため、命を狙われることになり、
コール達と協力することに。
いままでいろいろな人を守ってきたコール達、
今回は若くもない、スタイルが良いわけでもない女性だが、
やっぱり彼らは守るのかとちょっと感動した。
最後には息子の敵もとっていたし。
貸倉庫の中に入って爆弾を捜すことができないコールたちが、
マギーに探してもらおうスコットを呼び出すところも、
コールの笑顔が通じなかったそこの事務所の女性を、
マギーがめろめろにするところも面白かった。
ドラマでいう所のクロスオーバー作品、
なかなか良かった。 -
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今年の初めに読んだのが『天使の護衛』。ご存じエルヴィス・コールの相棒ジョー・パイクを主人公に据えたシリーズ第一作品である。その後三作ほど置いてのシリーズ新作が本書、十年以上ぶりの邦訳となるが、素直にこうした機会が得られたことは喜ぶべきだろう。
ともかく、へらず口を得意とする探偵を書いている作家が、無口な相棒を主人公にここまで書ける、というところがパイク・シリーズの何と言っても味噌なのである。
ところで『天使の護衛』を出版したランダムハウス社は、最後まで侮れない海外作家出版の一角を成していたのだが突然倒産してしまった。それによる絶版の不幸にあった名作も少なくなかった。扱われていた作家たちも、その後の版権が途絶えたり移ったりしたおかげで日本国内で影響が相当にあったように思う。
ロバート・クレイスは、本国ではNWA・PWA受賞ばかりか生涯功労賞まで受けているという巨匠であるにも関わらず、シリーズ翻訳作品が日本では長らく途絶えてしまっていたから、少なくとも当該出版社の影響を受けたと言える作家だったように思う。
かく言うぼく自身、この作家を当時のリアルタイムで知ったのではなく、日本復帰作品とも言える『容疑者』で、警察犬マギーを主役に据えるという予想外な感動作と出会ったおかげで、この作家の底知れぬ実力、またその卓越した世界構築能力に驚愕しつつ、そこに生きるコールやパイクの世界にも引き込まれることになったという経緯。
今月末には、クレイスの新作『危険な男』の札幌読書会が予定されている。この作家にとてもフィットする翻訳者・高橋恭美子さん自らが参加されている翻訳ミステリーシンジケート札幌読書会は、その一点だけでも有難いことだし、ここ数年クレイス翻訳作品ブームは、間違いなく日本中で起こっていると思うので、今回もリモート読書会ということで札幌にとどまらず、多くのクレイス・ファン(パイク・ファン?)が集結してくれることを期待している。
ユーモラスで人当たりの良いコールに比べて、無口で強靭な戦闘マシーンみたいなパイク。こちらの作品は、血なまぐさかったりアクションシーンが派手だったりと、全体の緊迫感がひときわ高く、コール・シリーズを読むとき以上に緊張感が増してしまうのだが、どちらのシリーズであれ、二人のコンビネーションは崩れることなく、第三のキャラとも言える科学捜査官のジョン・チェンの独特な人間臭さも併せて、それぞれのシリーズ作品に独特なバリエーションをもたらしてくれる。
『天使の護衛』ではパイクと、彼が護衛するわがまま娘とのやりとりが見どころだったが、本書では、二人の二十代女性が彼とコールとを振り回すことになる。この辺りの日常・非日常が隣り合わせに同居したズレた感じも、この作家の特異とするところ。奇妙な人間関係と、乾いた非情極まりない現実、といったところの交互画面転換で、物語世界に奥行きと捻じれとが発する物語の厚みを、存分に感じさせてくれる。
凄腕の戦士ジョー・パイク。頭の切れるプロ探偵エルヴィス・コール。どちらの新作もいつだって待ち遠しいが、どちらの未翻訳過去作品も、この際どんどん日本語訳として陽の目を見て欲しいところだ。そのためには、この作家がもっともっと評価され着目されることを祈るばかりである。時間の問題、とは思うのだけれども。 -
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犬好きは熱くなる。犬好きじゃなくても熱くなる小説。
アフガニスタンで戦闘に巻き込まれ、相棒の兵士・ピートを喪い、自らも銃撃を受けた軍用犬のマギー。パトロール中に銃撃事件に遭遇し、マギーと同じように相棒のステファニーを喪い、自らも重傷を負った刑事のスコット。
心身共に大きな傷を負った一人と一匹の絆と再生を、緊迫感溢れる事件の様相と共に描いていくミステリーです。
冒頭からなかなかにたまらない書き出し……
銃撃戦に巻き込まれピートが倒れ、マギー自身も撃たれてしまうのに、それでもマギーはピートを元気づけようと顔を舐め続ける。しかし、ピートの体温は次第に冷たくなっていき……
さらにスゴいのが、この場面を犬であるマギーの内面と共に描いていること。
動物が語り手になる小説というと、宮部みゆきさんの『パーフェクト・ブルー』であったり、有川浩さんの『旅猫レポート』が思い浮かぶのですが、その二作以上にこの小説は、犬であるマギーの内面に踏み込んでいく印象。
それも動物の内面を単に擬人化して描くのではなく、マギーが感じる匂いや感覚を媒介に、読者をマギーの内面と同調させていきます。この描写は圧巻の一言!
作中で説明されているけど、マギーの嗅覚は人間の一万倍近くあり、その嗅覚を頼りに様々な判断を下します。そしてそれはパートナーの感情を理解することにもつながる。
人間は緊張したり不安になったり、あるいはリラックスしているときなど、そのときの感情に応じて、目には見えない発汗量などが変わり、体臭もごくわずかに変化します。
マギーはその臭いを嗅ぎ分け、スコットに寄り添っていく。
その嗅覚の描写がとても丁寧かつ、真に迫っている描写がなされるから、マギーとスコットが徐々に精神をリンクさせていく感覚が、下手に言葉や文章、描写を重ねるよりも、何十倍もリアルに感じられる。
マギーの内面を描く描写は、作中で何回か出てくるのですが、その場面ごとにマギーの穏やかな感情、興奮した感情、そしてスコットを相棒と認めていく感情が感覚を通してより伝わってくる。
おそらく生涯で、これ以上に動物の内面を的確に描く作品とは会えない気がします。
マギーとスコット、互いに銃で撃たれた後遺症を引きずり、それはPTSDに近い症状も引き起こします。夜毎悪夢にうなされるスコット。そして発砲音のような大きな音がするたび固まってしまうマギー。これは警察犬には致命的な弱点。
そのためマギーは警察犬には向かない、矯正のしようがない、と当初は評されます。しかしマギーに自分を重ね合わせたスコットは、マギーを自分に任せてほしいと頼み込む。
スコットはステファニーに関しても大きな悔いを抱えています。それは助けを呼ぶためとはいえ、「置いていかないで」と叫ぶステファニーを、置き去りにしてしまったこと。だからこそ、最後まで相棒のそばにいたマギーにより強い感情を抱く。このドラマ性といったらない!
スコットが襲われた事件の捜査が続く傍らで、マギーのトラウマを克服する様子も描かれます。
大きな音がする度にスコットはマギーを優しくなでて、声をかけたり、好物のソーセージを与えたりして、大きな音が呼び覚ます、辛く苦しい記憶を楽しい記憶で塗りかえようとします。
そしてスコットは大きな音がする工事現場に、マギーと共に足を向け、マギーを落ち着かせつつ、そこの作業員や、ホットドックの売り子とも、穏やかに言葉を交わす。
そんな過程を経て、事件後、孤独を極めていたスコットも、徐々に穏やかな感情を取り戻していき、そしてマギーの警察犬としての能力にも信頼を寄せていく。
この日常の穏やかな描写もいいし、マギーとスコットを厳しく指導しつつも、しっかりと支える警察犬隊の同僚や上司の刑事のキャラも良い。
スコットとマギーが絆を深めていく描写、スコットのマギーに対する声かけであったり、マギーの行動であったり、それら一つ一つが本当に丁寧! だからこそ、この一人と一匹の行く末を、見守っているような気持ちになっていきます。
そして、スコットが襲撃された事件も新たな展開が見られていく。事件の真相に迫っていくのに、マギーの嗅覚がちゃんと生かされているのも、ストーリーとしてよく出来ている。
そして終盤孤立無援の状況に立たされるスコットに、クライマックスの銃撃戦と、王道の展開を押さえつつ、盛り上がりのポイントもしっかりと読ませます。
自分は特別犬好きというわけでもないですが、この『容疑者』を読み終えた後だと犬に対する感情は、大きく変わったように感じます。多くの人は「犬っていいなあ」と思うのではないかな。
一人と一匹の再生を優しくも熱く描いた『容疑者』。動物が登場する小説の中でも、屈指の傑作です。