目次
・終の住処
・ペナント
芥川受賞作にはあまりご縁がないが、間取り好き、住宅好きの私としては、素通りできないタイトル。
しかし、思っていたのと違った。
まあ、芥川受賞作ということを考えれば、こっちが正統か。
30歳を過ぎて結婚した男の、妻とのままならぬ結婚生活を描いたもの。
お互い20代の時
...続きを読むに長く交際していた人と別れたあとで付き合い始め、結婚願望などというものも感じないまま流されるように結婚。
妻はいつも、ここではないどこか遠くを見ていて…。
男は、仕事はできるようだ。
女性にももてる。
何しろ11年間に不倫した相手は8人だ。
だけど、どうにも男の輪郭ははっきりしない。
結婚についてもそうだったけれど、流されているだけのように思える。
妻はいつも、ここではないどこか遠くを見ているように男は思っているが、妻もまた男に対してそう感じているのではないだろうか。
そんな彼が作品中初めて自らの意志で行動したのが、2歳の娘を連れて家族で遊園地に行こう、だった。
2歳児の行動は当然親の想像とは異なって、彼は遊園地に来たことを後悔するのだが、妻は「観覧車に乗りましょう」という。
観覧車の高みから見た世界。
観覧車を見上げる世界。
妻がいるのは、彼がいるのは、不倫相手がいるのはどちらの世界だろう。(わりと結婚直後から不倫をしている男である)
なんてことを考えながら観覧車に乗る男。
それから11年、妻は口を利かなかった。
次に彼が自発的な行動が「家を建てるぞ!」
それに対して妻が「そうね、もうそろそろ、そういう時期ね」
ここから夫婦で話し合って理想の家を作る、わけではなく、妻が見つけてきた建築家にすべて丸投げ。
こだわりの強い建築家が家を完成させたとき、娘は既に独立し、”これから死に至るまでの年月を妻とふたりだけで過ごすことを知らされた。それはもはや長い年月ではなかった。”
え~、家を建てるわくわく感ないの~?
というのはおいといて、実はこういう男性多いのかもなって思いました。
これからは減っていくと思いたいのですが、家庭に対することはお手伝い程度で基本丸投げ。
結婚したという事実だけで、社会的信用ができ、職場での立場は順繰りに上がっていく。
家に居場所はないけれど、会社にはいつまでもいられる。
良い人生をおくることはできましたか?