鈴木直のレビュー一覧

  • 資本論 第一巻 上

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    深々と多様な視点から読み解ける沼のような本で圧巻。
    経済学視点からの読み解きも当然ながら、社会学やジェンダーにも通じる思考の型。相対性、構造的な枠組みの中で絡み取られる資本主義下に生きる我々の生の本質。
    サルトルとかバタイユとか思い出した。
    再度読み直したい。

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    2025年03月25日
  • 資本論 第一巻 下

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    マルクス読めて超嬉しい。
    近現代の思想、社会、哲学などの人文系を読むと必ず出てくるマルクスという名前。
    資本主義的生産様式のうちに絡み取られた人間の生の虚しさについて。
    なぜか下巻から読んでしまった。

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    2025年03月15日
  • 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

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    近年読んだ本のなかで一番面白かったです。星6つ、7つの評価です。本文もそうですが、文末の訳者の解説も改めて頭の整理が出来たので非常に重宝しました。本書で主に議論の対象としているのは欧州と米国といういわゆる「西側」の民主主義的資本主義国家群です。そしてこれらの国々での資本主義が第二次世界大戦後どう変化してきたか、ということで、1970年頃を境に大転換が起こったと見ています。戦後から70年頃まではいわゆるケインズ的な介入主義的資本主義ですが、ブレトンウッズ体制の崩壊をきっかけに、新自由主義的転換を経て、ハイエク的な市場主義的資本主義へと転換してきたと分析しています。そこでは資本主義と民主主義という

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    2023年04月28日
  • スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋

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    経済学の3大巨人の物語 著者の造形の深さも巨人並み
    近代経済学が問われている
    経済体制論はケインズで封印してしまった
    現在は「静的最適経済論」
    中世の宗教学と同じ、呪文の世界
    時代は間違いなく「資本主義経済体制」を問うている

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    2022年07月19日
  • スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋

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    アダム・スミス、マルクス、ケインズの生涯をたどり、彼らが見据えたものを再確認しながら経済の捉え方を考え直す試みである。現在の経済学が全くの無用の長物とは思わないが、あまりにもそれが幅を利かせすぎているのが問題だ。そういった意味で、著者の主張には一見の価値がある。

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    2021年08月16日
  • 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

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    正統の経済学とは違った視点からの資本主義の貴重な分析。著者のバックグラウンドは社会学とのことだが、そういった異なる分野からの経済の検討は大切にしていかなければいけないのではないか。

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    2020年05月21日
  • 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

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    ケインズ的混合経済に代わってハイエク的自由主義経済が本流に腰を据えた70年代以降、「インフレ」「国家債務」「家計債務」と手段を変えつつファイナンス原資を確保し、果実を恣(ほしいまま)にしてきたファナティックな市場主義者=資本家。本書は彼らに対する糾弾の書である。金融危機の余波も覚めやらぬ2012年の著述だが、むしろ世界がコロナウイルルスに翻弄される現在(2020年3月)こそ読み返されるべき。著者は経済専門家ではなくフランクフルト学派の流れを汲む社会学者であり、所々で社会学のタームが顔を出すが、基本的にマクロ経済の知識があれば問題無く読める。

     政府が、国債を保有する債権者たる資本家に配慮する

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    2020年03月29日
  • 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

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    本書で著者は、フリードリッヒ・ハイエクが描いた自由主義的市場経済が世界を如何に変貌させていくかの予言を受けて、租税国家→債務国家→財政再建国家という道筋をなぞりながら、その恐ろしいまでの正しさを確認していく。通読すれば、何故政府が立場の弱い労働者に甘言を弄して彼らを不安定雇用へと追いやるのか、何故生活困窮者にとどめを刺すように社会保障費を切り詰めていくのかといった現在観測される様々な不条理がことごとく解き明かされる。

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    2017年04月20日
  • ジンメル・コレクション

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    素直に実り多いと言える読書だった。

    芸術作品における取っ手の役割についてとか、ユニークなんだけど実際的で、すごく柔軟で哲学者には珍しくなんというか優しさを感じられる。

    「生の豊かさの本質とはひっきょう、それらの相互協属性の多様性にあり、外部と内部の同時共存性にあるからだ。」という一文にしびれました。

    「近代文化における貨幣」の章とか人に広めたい。

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    2012年02月07日
  • 輸入学問の功罪 ――この翻訳わかりますか?

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    理系の人間にとって,文系の翻訳本は難解というか日本語がデタラメである。なぜそうなってしまったのかが,分かる。

    輸入学問で食っている人は多いからな。

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    2011年01月21日
  • 輸入学問の功罪 ――この翻訳わかりますか?

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    第6章 翻訳とはなにか から引用

    ある一つの文章を訳すときに、翻訳の正解は一種類ではない。五人の訳者がいれば、五通りの正しい翻訳ができあがる可能性がある。

    つまり正しい翻訳とは、非常に多くの可能性の束として存在しているということだ。

    <略>

    正しい翻訳もまた多数の潜在的訳文の束として存在している。それぞれの訳者はその束の中からみずからの言語感覚に沿って一本の筮竹をれ選び出し、それを紙の上に固定していく。
    <略>

    たとえばカント自身がドイツ語の一文を書いたときにも、同じように多様な表現の束から、最終的に一本の筮竹を抜き出して紙の上に記したという事実だ。

    <略>

    カントが選んだ筮竹を

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    2010年02月28日
  • 輸入学問の功罪 ――この翻訳わかりますか?

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    どの大学からも、哲学領域が縮小していると聞く。哲学と縁がない人はいないのに、哲学と疎遠になってしまうのは、アカデミズムと一般庶民の間の断絶にあると著者は主張する。ドイツと日本の近代化の比較も大変興味深い。カラマーゾフの兄弟の新訳が話題になっているように、主な哲学書の読みやすい翻訳書は出版されないのかしら。

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    2011年09月09日
  • スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋

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    なぜ格差は生まれ、拡がる一方なのか?いう問いに答えるために、元祖・資本主義の理論家たちを知りたいと思ったら、読むといい。

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    2025年09月07日
  • 時間かせぎの資本主義――いつまで危機を先送りできるか

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     第二次世界大戦後西洋諸国で確立していった福祉国家が、サッチャー、レーガン政権以降の新自由主義により変化していった、という大きな流れは良く聞くものの、ギリシャの財政危機やリーマンショックといった世界を大きく騒がせた出来事には一体いかなる背景があり、どのような意味合いを持つものだったのか、本書を読んでかなり得心が行った。
     
     高度成長の終焉により、成長を前提とした完全雇用と賃上げは危機を迎えていた、その危機に対処するため採られたのが、貨幣により「時間」を買うことだったが、それは危機の先送り、つまり時間かせぎに過ぎないというのが、著者の主張である。

     なるほどと思ったのは、例えば次のようなとこ

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    2025年04月20日
  • スミス・マルクス・ケインズ――よみがえる危機の処方箋

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    新古典派経済学がいかに現実離れした前提に基づいて構築されているかを、やや戯画化している印象もあるが、鋭く指摘、批判して、主流派経済学において忘れられた3人の巨匠(タイトルの3人)を現代に甦らせようという警世の書。
    新自由主義を強力に推し進めて世界をグローバリズムに引き摺り込み、とてつもない格差社会へと陥らせたシカゴ学派の親玉ミルトン・フリードマンが、ノーベル賞授賞式のスピーチで、経済学の科学性を物理学のそれになぞらえたという逸話には笑えた。
    個人的にはケインズの卓越した現実感覚とバランスをあらためて学ばねばならないと感じた。

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    2023年05月28日
  • 輸入学問の功罪 ――この翻訳わかりますか?

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    翻訳の引用をとばしたのですぐ読み終わった。翻訳論というより教養論とか日本文化論に近く、もっと早く読むべきだったがタイトルとちょっとイメージが違った。著者の立場、主張も基本的にはおおよそ共感できた。2冊にするという話もあったようだが、もっと紙幅があったほうがよかったのではないかなという気はした。

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    2019年05月21日
  • 輸入学問の功罪 ――この翻訳わかりますか?

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    本書は、思想系の翻訳の読みにくさの原因を追究する本だが、そのバックボーンである、明治期の話が面白い。明治政府の改革を支えたのは幕府時代に幕府に支援されて勉強していた人たちであるとか、明治政府は個人主義、民権主義を弾圧した上に成り立っているとか、倒幕に功あった士族を迅速に廃絶したことが統治に成功した秘訣だとか、これまで認識してなかったことがらが色々知ることができ勉強になった。明治政府の成立のバックボーンをざっくり知りたいかたにお勧めしたい。

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    2018年11月12日
  • ジンメル・コレクション

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    とても脳を働かせた。
    少なからずとも時代のギャップはあるけれど。
    僕らの隣にある「意味」と言うものを深く考えるきっかけの様なものをくれた。

    ただもう、すごいとしか言いようが無い。

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    2012年07月18日
  • ジンメル・コレクション

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    ジンメルのエッセーを、主に女性論・生活風景論・美学論・社会論という視座にしたがって訳出・編纂している。各エセーには強い主張はなく、それゆえに曖昧とも言えるが、彼の扱う対象に即して言えばその曖昧さは対象そのものに由来すると捉えられるだろう。水差しや橋、扉といったものを哲学的に思考するのに、単純明快さを求めるのはいかがなものか。その点で、訳者解説でも紹介されているようなジンメルに対する批判は的外れなものである。そしてこうした珠玉のエッセーが、ユダヤ人であるジンメルによって書かれていることやベンヤミンに影響を与えていることを考えると、ジンメルの面白さはなお際立つ。

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    2012年03月23日
  • ジンメル・コレクション

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    哲学エッセイ、なるものを初めて読んだ気がする。面白かったが、少しまとまりのない本ではあった。大きなテーマのひとつである美学については、ぼくの関心が今一つ盛り上がらず、ちょっと読み飛ばしぎみになってしまった。
    ただ、鋭い考察と含蓄に富んだ言葉選びは素晴らしい。一文一文の重みが違う。
    確かにあまり論理的に聞こえない部分もあるが、それを補ってはるかに余りある直観に裏打ちされている。
    ぼくの側に準備が整ったら、また読みたいと思える本だった。

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    2011年10月07日