鈴木直のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
[ 内容 ]
難解な思想・哲学書の翻訳に手を出して、とても理解できないと感じ、己の無知を恥じ入る。
そんな経験はないだろうか。
読者をそのように仕向ける力の背後には、じつは日本の近代化における深刻な問題が控えているのである。
カント、ヘーゲル、マルクスの翻訳の系譜とそこに反映された制度的拘束をあぶり出し、日本の学問と翻訳の可能性を問う。
[ 目次 ]
序章 思想・哲学書の翻訳はなぜ読みにくいのか
第1章 『資本論』の翻訳
第2章 ドイツの近代化と教養理念
第3章 日本の近代化の基本構図
第4章 ジャーナリズムとアカデミズムの乖離
第5章 輸入学問の一断面-カントとヘーゲルの翻訳
第6章 翻訳 -
Posted by ブクログ
思想・哲学書は我々にとって、なぜ読みにくいのか。
本書を読むと、その謎がかなりの程度わかるような気がします。
翻訳というのは、その原語の文法や言葉遣いに忠実であるべきか。
それとも、原語の語順や言葉遣いよりも意味に忠実になるべきか。
いわゆる「読みにくい」翻訳書というのは、まさに前者だった。
途中でたびたび入る哲学の説明はあまりよくわからなかったけれど、結論として「翻訳はいかにあるべきか」という問題提起をしている点さえわかれば、それで良いのだと思います。
そもそも書物とは読まれるためにあるもの。そして、翻訳者も翻訳でメシを食べていかなければいけないことを考えると、非日常性をかもしているよ -
Posted by ブクログ
マルクスの『資本論』やカントの『純粋理性批判』、ヘーゲルの『精神現象学』といった著作の翻訳にひそむ問題を検討しつつ、明治以降西洋の学問を受け入れてきた日本の近代化のありかたを、翻訳文化という独特の視点から見ようとしています。
こうした本書のもくろみそのものは非常に興味深いと感じたのですが、学問の現実社会からの乖離という、やや常識的な落としどころに結論が置かれていることについては、すこし期待はずれに感じてしまいました。近代日本のアカデミズムにおける「教養」の権力分析のような方向へと議論を展開していくことも可能だったのではないかという気がします。 -
Posted by ブクログ
現代においてマルクスの哲学と経済学がもつ意義を、わかりやすく解説している本です。
著者はまず、ヴォルフガング・シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』とトマ・ピケティの『21世紀の資本』を取り上げ、新自由主義の問題が顕著に現われつつある現代の状況についての概観をおこなっています。その上で、資本主義は格差問題よりもさらに深刻な問題を孕んでいると指摘し、そのことを明らかにしたのがマルクスの疎外論ないし物象化論だという主張が展開されることになります。
その一方で、ホッブズやロックの社会契約説、ヘーゲルの国家論などについても検討をおこない、従来の社会理論や経済理論が、社会や経済の仕組みを因果的に解き明