鈴木直のレビュー一覧
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近年読んだ本のなかで一番面白かったです。星6つ、7つの評価です。本文もそうですが、文末の訳者の解説も改めて頭の整理が出来たので非常に重宝しました。本書で主に議論の対象としているのは欧州と米国といういわゆる「西側」の民主主義的資本主義国家群です。そしてこれらの国々での資本主義が第二次世界大戦後どう変化...続きを読むPosted by ブクログ
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経済学の3大巨人の物語 著者の造形の深さも巨人並み
近代経済学が問われている
経済体制論はケインズで封印してしまった
現在は「静的最適経済論」
中世の宗教学と同じ、呪文の世界
時代は間違いなく「資本主義経済体制」を問うているPosted by ブクログ -
アダム・スミス、マルクス、ケインズの生涯をたどり、彼らが見据えたものを再確認しながら経済の捉え方を考え直す試みである。現在の経済学が全くの無用の長物とは思わないが、あまりにもそれが幅を利かせすぎているのが問題だ。そういった意味で、著者の主張には一見の価値がある。Posted by ブクログ
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正統の経済学とは違った視点からの資本主義の貴重な分析。著者のバックグラウンドは社会学とのことだが、そういった異なる分野からの経済の検討は大切にしていかなければいけないのではないか。Posted by ブクログ
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ケインズ的混合経済に代わってハイエク的自由主義経済が本流に腰を据えた70年代以降、「インフレ」「国家債務」「家計債務」と手段を変えつつファイナンス原資を確保し、果実を恣(ほしいまま)にしてきたファナティックな市場主義者=資本家。本書は彼らに対する糾弾の書である。金融危機の余波も覚めやらぬ2012年の...続きを読むPosted by ブクログ
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本書で著者は、フリードリッヒ・ハイエクが描いた自由主義的市場経済が世界を如何に変貌させていくかの予言を受けて、租税国家→債務国家→財政再建国家という道筋をなぞりながら、その恐ろしいまでの正しさを確認していく。通読すれば、何故政府が立場の弱い労働者に甘言を弄して彼らを不安定雇用へと追いやるのか、何故生...続きを読むPosted by ブクログ
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素直に実り多いと言える読書だった。
芸術作品における取っ手の役割についてとか、ユニークなんだけど実際的で、すごく柔軟で哲学者には珍しくなんというか優しさを感じられる。
「生の豊かさの本質とはひっきょう、それらの相互協属性の多様性にあり、外部と内部の同時共存性にあるからだ。」という一文にしびれまし...続きを読むPosted by ブクログ -
理系の人間にとって,文系の翻訳本は難解というか日本語がデタラメである。なぜそうなってしまったのかが,分かる。
輸入学問で食っている人は多いからな。Posted by ブクログ -
第6章 翻訳とはなにか から引用
ある一つの文章を訳すときに、翻訳の正解は一種類ではない。五人の訳者がいれば、五通りの正しい翻訳ができあがる可能性がある。
つまり正しい翻訳とは、非常に多くの可能性の束として存在しているということだ。
<略>
正しい翻訳もまた多数の潜在的訳文の束として存在して...続きを読むPosted by ブクログ -
どの大学からも、哲学領域が縮小していると聞く。哲学と縁がない人はいないのに、哲学と疎遠になってしまうのは、アカデミズムと一般庶民の間の断絶にあると著者は主張する。ドイツと日本の近代化の比較も大変興味深い。カラマーゾフの兄弟の新訳が話題になっているように、主な哲学書の読みやすい翻訳書は出版されないのか...続きを読むPosted by ブクログ
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新古典派経済学がいかに現実離れした前提に基づいて構築されているかを、やや戯画化している印象もあるが、鋭く指摘、批判して、主流派経済学において忘れられた3人の巨匠(タイトルの3人)を現代に甦らせようという警世の書。
新自由主義を強力に推し進めて世界をグローバリズムに引き摺り込み、とてつもない格差社会へ...続きを読むPosted by ブクログ -
翻訳の引用をとばしたのですぐ読み終わった。翻訳論というより教養論とか日本文化論に近く、もっと早く読むべきだったがタイトルとちょっとイメージが違った。著者の立場、主張も基本的にはおおよそ共感できた。2冊にするという話もあったようだが、もっと紙幅があったほうがよかったのではないかなという気はした。Posted by ブクログ
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本書は、思想系の翻訳の読みにくさの原因を追究する本だが、そのバックボーンである、明治期の話が面白い。明治政府の改革を支えたのは幕府時代に幕府に支援されて勉強していた人たちであるとか、明治政府は個人主義、民権主義を弾圧した上に成り立っているとか、倒幕に功あった士族を迅速に廃絶したことが統治に成功した秘...続きを読むPosted by ブクログ
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とても脳を働かせた。
少なからずとも時代のギャップはあるけれど。
僕らの隣にある「意味」と言うものを深く考えるきっかけの様なものをくれた。
ただもう、すごいとしか言いようが無い。Posted by ブクログ -
ジンメルのエッセーを、主に女性論・生活風景論・美学論・社会論という視座にしたがって訳出・編纂している。各エセーには強い主張はなく、それゆえに曖昧とも言えるが、彼の扱う対象に即して言えばその曖昧さは対象そのものに由来すると捉えられるだろう。水差しや橋、扉といったものを哲学的に思考するのに、単純明快さを...続きを読むPosted by ブクログ
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哲学エッセイ、なるものを初めて読んだ気がする。面白かったが、少しまとまりのない本ではあった。大きなテーマのひとつである美学については、ぼくの関心が今一つ盛り上がらず、ちょっと読み飛ばしぎみになってしまった。
ただ、鋭い考察と含蓄に富んだ言葉選びは素晴らしい。一文一文の重みが違う。
確かにあまり論理的...続きを読むPosted by ブクログ -
[ 内容 ]
難解な思想・哲学書の翻訳に手を出して、とても理解できないと感じ、己の無知を恥じ入る。
そんな経験はないだろうか。
読者をそのように仕向ける力の背後には、じつは日本の近代化における深刻な問題が控えているのである。
カント、ヘーゲル、マルクスの翻訳の系譜とそこに反映された制度的拘束をあぶり...続きを読むPosted by ブクログ -
思想・哲学書は我々にとって、なぜ読みにくいのか。
本書を読むと、その謎がかなりの程度わかるような気がします。
翻訳というのは、その原語の文法や言葉遣いに忠実であるべきか。
それとも、原語の語順や言葉遣いよりも意味に忠実になるべきか。
いわゆる「読みにくい」翻訳書というのは、まさに前者だった。
途...続きを読むPosted by ブクログ -
マルクスの『資本論』やカントの『純粋理性批判』、ヘーゲルの『精神現象学』といった著作の翻訳にひそむ問題を検討しつつ、明治以降西洋の学問を受け入れてきた日本の近代化のありかたを、翻訳文化という独特の視点から見ようとしています。
こうした本書のもくろみそのものは非常に興味深いと感じたのですが、学問の現...続きを読むPosted by ブクログ -
現代においてマルクスの哲学と経済学がもつ意義を、わかりやすく解説している本です。
著者はまず、ヴォルフガング・シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』とトマ・ピケティの『21世紀の資本』を取り上げ、新自由主義の問題が顕著に現われつつある現代の状況についての概観をおこなっています。その上で、資本主義は格...続きを読むPosted by ブクログ