【感想・ネタバレ】マルクス思想の核心 21世紀の社会理論のためにのレビュー

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Posted by ブクログ 2017年11月24日

現代においてマルクスの哲学と経済学がもつ意義を、わかりやすく解説している本です。

著者はまず、ヴォルフガング・シュトレークの『時間稼ぎの資本主義』とトマ・ピケティの『21世紀の資本』を取り上げ、新自由主義の問題が顕著に現われつつある現代の状況についての概観をおこなっています。その上で、資本主義は格...続きを読む差問題よりもさらに深刻な問題を孕んでいると指摘し、そのことを明らかにしたのがマルクスの疎外論ないし物象化論だという主張が展開されることになります。

その一方で、ホッブズやロックの社会契約説、ヘーゲルの国家論などについても検討をおこない、従来の社会理論や経済理論が、社会や経済の仕組みを因果的に解き明かそうとする「科学的次元」と、規範的な目的論的観点から社会と経済の進むべき道を考察する「哲学的次元」に引き裂かれていると主張します。そのうえで、おなじ困難を内包しているマルクスの価値形態論をとりあげ、具体的な個々人の交渉によって成立する相対的価値形態から一般等価形態ないし貨幣形態への飛躍のうちに、交易関係が十分に成熟しているという現実的条件が存在していることを指摘し、そこに個人から出発して社会関係を科学的に解明するという「実在的な抽象性」が生まれ出たと論じています。最後に、そうして与えられることになった社会の新たな見方をより包括的に考察するために、現代の進化論的認識論の概要が論じられることになります。

「まえがき」で「全体の議論はマルクスをまだ一度も読んだことのない読者を念頭において進めたい」と書かれているように、議論をわかりやすくしようとする工夫はうかがえます。ただ、社会契約説やヘーゲルの国家論、さらには進化論的認識論など、あつかっている内容が広範にわたっているため、大風呂敷を広げているという印象も受けます。

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