櫻井武のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
睡眠は、まだまだ分かっていないことが多い。
このように覚醒は、食物などの報酬を探索する行動や、恐怖や不安などの情動に深く関係している。つまり「食っていくため」、そして「食われないため」に、覚醒が必要なのだ。
逆に満腹で、しかも安全な状態であれば、脳や身体を休めるために睡眠をとるチャンスである。睡眠は、安全と適切な温度が確保された環境で行われる。睡眠をとるために適した時間は動物の生活環境によって異なるため、概日リズムによっても制御されている。つまり、昼行性の動物では昼間に摂食行動を行い、夜間に休息期が多くなり、夜行性の動物では逆に夜間に主に摂食行動を行い、昼間に睡眠が多くなる。
…ニューロン(神経細胞)は情報処理素子である。樹状突起という部分でさまざまな入力を受けて、軸索という部分でほかのニューロンに出力している。樹状突起が他のニューロンの軸索から情報を受ける部分はシナプスと呼ばれる。軸索の末端からは神経伝達物質という化学物質が分泌され、他のニューロンの樹状突起にある受容体という分子に結合することによってその神経を興奮させたり、抑制したりするわけだ。1つのニューロンは数万ものシナプスを介して情報を受けている。
まずは食事である。オレキシン作動性ニューロンは血糖値の影響を受けることは前に説明した。あまりに空腹になると、オレキシン作動性ニューロンの活動が高まり、眠りにくくなってしまう。かといって、寝る前に食べる習慣がついてしまうと、「食餌同期性リズム」が発動するようになり、その時間の覚醒レベルが上がってかえって眠れなくなる。そこで、食事は適切な量を、就寝の4〜5時間前くらいに摂るようにすることが、より眠りをとるためのコツになる。
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実は、もともと体温、とくに脳を含めた深部の体温と睡眠には強い関係がある。睡眠に入るとき、深部体温は少し下がった状態になっているのだ。ヒトが眠りにつく前、一時的に手足の温度が上がるが、これは手や足の血管を拡張させて、体温を外に放散させることによって深部体温を下げているのだ。こうして脳の温度が少し下がることによって睡眠が開始するのである。…
逆に体温があまり高い状態だと、入眠しにくいこともわかっている。つまり眠る直前にあまり熱いお風呂に入るのは避けたほうがよいかもしれない、ということだ。しかし、手足が冷えていると、血管が収縮してしまい、深部体温の放散が難しくなる。あまり体温を上げず、しかし、暖かくして眠ることが大切だ。
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眠気を払いたいときは、体温の話を逆に考えて、手足を冷やすとよい。カフェインを含むお茶やコーヒーなども効果があるが、早く眠気を解消したいときはホットで飲むほうが望ましい。アイスコーヒーなどは、消化管粘膜の血管が冷たさで収縮してしまうため吸収が遅れるからだ。 -
Posted by ブクログ
前から心理学や人間の精神みたいなものには興味があった。割と人文学的な本を良く読んでいたように思う。本書は、そういった「こころ」を科学の視点で説明している。
(冒頭では、心理学的、あるいは精神病理学的な問題ではなく、神経科学からみた「こころ」の働きを扱う、とある。)
同じこころ・精神といったものを扱っていても、学問によって捉え方が全く違うんだなと面白く読めた。この本では、「こころ」を生物の生きていく上での"機能"として捉えている。「こころ」の働きには煩わされたり、苦しんだりすることもあるが、それらは進化の過程で獲得した、意味あるものなんだろう。
以下のようなことが、何となくわかる。
- 曖昧で形にできない「こころ」をどうやって科学的に捉え、研究されているのか。
- 「こころ」がどんな要素で成り立っているのか。
- 人体でどのように「こころ」が作られているのか。
- 「こころ」は何のために必要で、どんな役割を果たしているのか。
夏目漱石の『こころ』を読みたくなった。
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・脳の「機能局在」と呼ばれる概念が興味深かった。大脳皮質、大脳辺縁系、扁桃体、海馬、、、脳の部位によって役割が決まっている。各部位がどのように働くのか、ある精神の働きがどの部位にどのような経路で伝わるのかが説明される。何となくわかった気になれる。
・曖昧な「感情」を科学の視点で(客観的・定量的に)扱うための「情動」という概念。
・情動がどこに端を発するのかの二つの論争。
悲しいから泣くのか、それとも、泣くから悲しいのか。
- 感情は全身の状態を脳が認知することによって引き起こされる(末梢起源説)
- 脳が情動をつくりだし、それが全身の状態に影響を与える(中枢起源説)
感情や情動は、脳だけが支配しているものではない。
・情動を評価するための動物実験。
具体的な実験手法がある。実験用のマウスはこんな目に遭わされているのか、とちょっとかわいそうにも・・・。
・脳手術を受けた患者ヘンリー・グスタフ・モレゾンの症例。
テレビか何かで見た記憶がある。手術の副作用で、新しい陳述記憶を作ることができなくなった。父の死を知って悲しむけれども、それを記憶できないので話を聞く度に驚き、悲しんでしまう。
検査に協力的だったために、神経科学の発展に大きく寄与した。
・同性愛者の異性愛者への”治療”
患者の脳に電気刺激を加えることで、人工的に”快感”を与える。報酬系のくだりでそんな話が出てくる。
昔はこういうことも治療と考えられていた。自分が感じる快・不快も、脳内の電気信号でできているのかと思うと不思議な気分になる。
スイッチを押すだけで気持ちよくなれたらいいなと思うけど、それが麻薬や覚醒剤なんだろうな。