前から心理学や人間の精神みたいなものには興味があった。割と人文学的な本を良く読んでいたように思う。本書は、そういった「こころ」を科学の視点で説明している。
(冒頭では、心理学的、あるいは精神病理学的な問題ではなく、神経科学からみた「こころ」の働きを扱う、とある。)
同じこころ・精神といったものを扱
...続きを読むっていても、学問によって捉え方が全く違うんだなと面白く読めた。この本では、「こころ」を生物の生きていく上での"機能"として捉えている。「こころ」の働きには煩わされたり、苦しんだりすることもあるが、それらは進化の過程で獲得した、意味あるものなんだろう。
以下のようなことが、何となくわかる。
- 曖昧で形にできない「こころ」をどうやって科学的に捉え、研究されているのか。
- 「こころ」がどんな要素で成り立っているのか。
- 人体でどのように「こころ」が作られているのか。
- 「こころ」は何のために必要で、どんな役割を果たしているのか。
夏目漱石の『こころ』を読みたくなった。
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・脳の「機能局在」と呼ばれる概念が興味深かった。大脳皮質、大脳辺縁系、扁桃体、海馬、、、脳の部位によって役割が決まっている。各部位がどのように働くのか、ある精神の働きがどの部位にどのような経路で伝わるのかが説明される。何となくわかった気になれる。
・曖昧な「感情」を科学の視点で(客観的・定量的に)扱うための「情動」という概念。
・情動がどこに端を発するのかの二つの論争。
悲しいから泣くのか、それとも、泣くから悲しいのか。
- 感情は全身の状態を脳が認知することによって引き起こされる(末梢起源説)
- 脳が情動をつくりだし、それが全身の状態に影響を与える(中枢起源説)
感情や情動は、脳だけが支配しているものではない。
・情動を評価するための動物実験。
具体的な実験手法がある。実験用のマウスはこんな目に遭わされているのか、とちょっとかわいそうにも・・・。
・脳手術を受けた患者ヘンリー・グスタフ・モレゾンの症例。
テレビか何かで見た記憶がある。手術の副作用で、新しい陳述記憶を作ることができなくなった。父の死を知って悲しむけれども、それを記憶できないので話を聞く度に驚き、悲しんでしまう。
検査に協力的だったために、神経科学の発展に大きく寄与した。
・同性愛者の異性愛者への”治療”
患者の脳に電気刺激を加えることで、人工的に”快感”を与える。報酬系のくだりでそんな話が出てくる。
昔はこういうことも治療と考えられていた。自分が感じる快・不快も、脳内の電気信号でできているのかと思うと不思議な気分になる。
スイッチを押すだけで気持ちよくなれたらいいなと思うけど、それが麻薬や覚醒剤なんだろうな。