寺町朋子のレビュー一覧

  • 忘却の効用 「忘れること」で脳は何を得るのか

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    ネタバレ

    『忘却の効用』 スコット・A・スモール 著

     このところ、名前が出てこない、用事を忘れるなど、「忘却力」がついてきました。これで大丈夫かと心配になってきたところ、ちょうど絶好の書籍に遭遇。

     まず、「忘れる」ということは、個別事象を一般化するための前提。記憶力のいい人は、「朝日のなかで見た犬」と「夕闇のなかで見た犬」を、「同じ犬」と認識できないのだそうです。「さまざまな相違を忘れること、一般化すること、抽象化すること」が「考える」ために必要。また、憤りなどの負の感情を忘れることは「赦し」にもつながり、これが「忘却が持つ利点のなかで最も尊いもの」。さらに、睡眠によって大脳皮質の記録を片づけて白紙にする作用があり、このことで新しい記憶を受けられるようになると言います(「忘れるために眠る」)。

     「忘却」があることでよい人生が送れるとわかり、これからはあまり忘れることを気にしないようにしようと、単純にも自分に言い聞かせられる一冊です。

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    2024年07月25日
  • 新薬という奇跡 成功率0.1%の探求

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    薬と無縁に生きてきた、という人はおそらくいないだろう。

    風邪かな、と思ったら早めのパブロンを飲むし、インフルエンザの季節の前になんとなくインフルエンザ予防接種を受けるし、最近はCOVIDのワクチンも接種するし。

    なんとなく当たり前のように薬を摂取したり予防接種を受けているが、実はこれは奇跡的に人類がたどり着いた偉業だったのだ!

    物理学は実験を通して理論を構築することができるし、正しいとされる理論を用いれば現象を予測だってできる。(予測が外れたら理論が間違っていたということだ)

    翻って、薬学はどうだろうか。物理学でいうNewton方程式のような聖杯はない。
    人間に使ったとしても、その人間の人種やその時の体調やひょっとしたら血液型によっては効果が異なるかもしれないし、昨日と今日で効果の効き目が違うことなんてたくさんある。
    つまり、こうしたらうまくいく!というのを事前に推定するのが極めて困難なのだ。
    これは偏に、人間の免疫細胞の働きが極めて複雑であり、まだ人間は十分に理解していない、というのが原因の一つであるが、ドラッグハンターとはこのような状況で当たるも八卦当たらぬも八卦のトライ&エラーを繰り返しているのだ。

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    2022年10月27日
  • ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪

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    安いにそれなりの理由があった。品質がウーンというレベルだったり、味が今ひとつということがある。




    しかし医薬品が「ワケアリ」だと大変だ。身体に入れるものだけに製造する側や認可する側が注意してもらいたいと思うが、生産拠点が外国となるとそうも行かなくなる。




    今回の本では、ジェネリック医薬品という正規の医薬品よりも安い価格で買えることで話題になっていたが、消費者が口にするにはリスクのある状況だった。「まさかという名の坂」があったとは。




    著者のキャサリン・イーバンは、調査ジャーナリストで偽造医薬品、銃の違法取引、CIAによる強制的な尋問を取り上げた記事で数多くの賞を獲得している。





    アメリカ食品医薬局(FDA)のコンサルタントで、海外の製造工場で長い時間を過ごしたことのある人に聞いたところ次のようなことを述べた。企業文化、さらには国の文化によって薬の製造品質に影響が出る。





    忖度が求められる文化かそれとも違う意見が出ることを歓迎するかによる。





    例えば中国は都合の悪い情報を出さない。著者が中国で情報提供者に会おうとしたとき、政府から尾行されて、携帯電話を盗聴された。




    ここにも「チャイナリスク」があったか。




    中国に派遣されるFDAの査察官のほとんどが中国語を話すことができず製造記録も読めなかった。通訳も自前ではなく、企業の営業担当者だった。




    これでは正確な調査などできるわけがない。



    ジェネリック医薬品に関して闇の部分があるとは知らなかった。易いだけで飛びつくと大変だな。




    「規制とは追いつ追われつビジネスなのです」と、アメリカ薬局方協会のグローバルヘルス・インパクトプログラムの元副委員長パトリック・ルクレイ博士が述べている。




    脱税や麻薬の取締りと同じく、無くなりそうにないなあ。

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    2022年02月13日
  • 神は、脳がつくった―――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源

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    E.フラー・トリー(1937年~)は、マギル大学医学部博士課程修了、スタンフォード大学修士課程修了(人類学)、スタンフォード大学医学部勤務を経て、スタンレー医学研究所研究部副部長。専門は精神医学。
    本書は、2017年発表の『Evolving Brains, Emerging Gods:Early Humans and the Origins of Religion』の全訳で、2018年に出版された。尚、松岡正剛の有名書評サイト「千夜千冊」の1786夜(2021年11月9日)で取り上げられている。
    本書は、進化論に基づく脳の進化が神及び宗教を作ったことを主張・説明したものであり、人類史の中で神・宗教の起こり(と変化)を論じているという点において、ユヴァル・ノア・ハラリのベストセラー『サピエンス全史』(2011年に原書発表)や社会学者・広井良典の『無と意識の人類史』(2021年)等ともオーバーラップするが、更に、著者の専門領域である人類の脳の進化の研究(ヒト族の頭蓋骨の研究、古代の遺跡の研究、ヒトや霊長類の死後脳の研究、生きているヒトや霊長類の脳画像研究、子どもの発達に関する研究)の視点が加えられており、実に興味深い内容となっている。また、欧米人の著作にしばしば見られる、冗長なエピソードや日本人の思考パターンに馴染まない部分もほとんどなく、とても読み易い。
    人類の脳の進化理論に基づく説明は、概ね以下である。
    ◆<第1段階>約200万年前に、ホモ・ハビリスとして、脳の著しい大型化や知能全般の大幅な向上を経た。
    ◆<第2段階>約180万年前以降、ホモ・エレクトスとして、自分を認識できる能力を身に付けた。
    ◆<第3段階>約20万年前以降、古代型ホモ・サピエンス(ネアンデルタール人)として、他者の考えを認識できる能力を身に付けた(=「心の理論」を持った)。
    ◆<第4段階>約10万年前以降、初期ホモ・サピエンスとして、自分自身の考えについて考える内省能力を発達させた。
    ◆<第5段階>約4万年前以降、現代ホモ・サピエンスとして、「自伝的記憶」(自分を過去だけでなく将来にも投影する能力)を持った。これにより将来の計画を立てられるようになり、また、自分の死、死んだ祖先がいる世界などを想像できるようになった。
    ◆8,000~7,000年前、農業革命(農耕の開始)に伴って、生者と死者の関係における革命(祖先崇拝)が起こり、祖先たちの一部がだんだん神に祀り上げられて、最初の神々が出現した。
    ◆2,800~2,200年前、増加した人口を抱える巨大な帝国を統治するために、体系化された神・宗教が必要になり、儒教、ヒンドゥー教、仏教、ゾロアスター教、ユダヤ教等が生まれた。この時代を哲学者ヤスパースは「枢軸時代」と呼んだ。
    そして、著者は、「脳の進化理論では、なぜ神々が現れたのかと、なぜ神々が、実際のそのときに現れたのかの両方を説明でき」、また、「並行進化に基づき、・・・神々が地球上のさまざまな場所で別々に姿を現したこと」も「どのようにして地域社会の司法的、経済的、社会的なニーズが地域社会の霊的なニーズと結びつくようになったのか」も説明できるとしている。
    神・宗教の起こり(と変化)を、脳の進化に基づく人類史の中で解き明かした、興味深い力作といえる。
    (2022年2月了)

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    2022年02月10日
  • ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪【無料お試し版】【固定レイアウト版】

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    ジェネリックが悪ではない

    このような内容を読むとジェネリック医薬品を使いたいという人がいなくなるかもしれない。インドや中国のメーカーがとんでもない物を製造していることは分かったが、日本のメーカーはどうなのだろうか。流石にこれほど出鱈目なことは無いと思うが、低コスト化の為に管理が杜撰になっているようなことが無いとは言えない。結局はメーカーの良心の問題なのだろうか。

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    2021年12月28日
  • ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪【無料お試し版】【固定レイアウト版】

    購入済み

    医療科学を深く考える

    ジェネリック医薬品は、本来の薬と同じ効果を発揮しながら値段が安いという特徴があり人気ですが、医療科学の情報を元に100%信じてよいかというとそうではなく、デメリットもあるということをこの作品を通して知ることができます。

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    2021年11月06日
  • 信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実

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    たかが信頼、されど信頼。
    信頼をキーワードに、子育てから恋愛までさまざまな心理学実験を行い、結果をまとめた本。
    人を裏切らない人はおらず、裏切るかどうかすべてはその人が何を求めどんな状況に置かれているのかによるらしい。
    人間関係を築く時、相手と、自分は関係に何を求めているのかを認識して付き合う付き合わないを決めることが大切だと学んだ。
    また、人にすると、信頼されにくいジェスチャーも出てくる。こちらも気をつけたいと思った。

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    2021年10月10日
  • 神は、脳がつくった―――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源

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    宗教は人類の脳が発達したことによって生まれたことを進化論や脳科学によって説明している。心の理論や自伝的記憶を獲得したことで自分自身の死を意識したことや、来世を創造して祖先を崇拝するようになったことが信仰心を生み、社会の発達によって信仰の対象が階層化され、神々が出現したと説明する。

    ホモ・ハビリスは、いずれも知能の源とされる前頭葉の外側部と頭頂葉がひときわ発達させ、賢くなった(トバイアス)(p40)。ホモ・エレクトスは自己認識能力を発達させた。20万年前の古代型ホモ・サピエンスは、他者が考えていることに気づく能力(心の理論)を獲得した。10万年前に、自分について考えている自分について考える内省能力を身に付けた。4万年前に、自分を過去や将来に投影する自伝的記憶を手に入れた(p188,294)。

    人間の子どもは、2歳頃に自分について考える能力を獲得し、4歳頃に他の人々の考えについて考える能力を獲得し、6歳頃に自分が他者からどう思われるかについて考える能力を獲得する(p119)。ネコやイヌ、サルは鏡像認知ができないが、ゾウやイルカ、一部のクジラ、大型類人猿は鏡像認知ができる(p60)。

    神々への信仰を持つためには、心の理論の獲得は欠かせないことが複数の研究者によって認められている。心の理論を獲得すれば、神も人間が何を考えているのかを想像できるはずだと思い込む(p92)。ただし、周期的に起こる自然現象を理解するためには、過去や現在のことを将来に関する考えに組み入れる認知能力が必要(p121)。

    言語の概念には話し手だけでなく、聞き手も考慮することや、抽象的観念を伝えられることが含まれると考えると、自己認識や他者の考え方に対する認識があることが言語の前提条件と言える(p115)。ヒトの話し言葉は、新しく進化した大脳皮質の領域によって制御されている。ひとつ目の前頭葉にあるブローカ野は音声言語を司り、口や舌、咽頭の筋肉を制御する領域の隣にある。ふたつ目の側頭葉上部にあるウェルニッケ野は話し言葉の理解を司り、聴覚に関連する領域の一部である。自己認識、他者の考えに対する認識、自分の考えについて考える能力の発達に関与する領域と重なっているように見える(p117)。

    現代ホモ・サピエンスは、過去の出来事を感覚と感情の両面で蘇らせることができる自伝的記憶を手に入れたことで、将来を把握することもできるようになったが(p154)、自分自身の死も意識するようになった(p165)。また、祖先が訪れる夢を見ることによって、人が死ぬと魂や霊魂が体を離れて、死者の国で生き続けるという考えに導かれた(p172)。これは、死者の霊魂に協力を求めたり、死者の霊魂をなだめたりする試みにつながった。

    先住民族の宗教的信仰や儀式、社会的慣習では祖先たちが重要視される(p199)。来世に対する信念が、祖先崇拝を促した。いくつもの集団が一緒になって定住するようになると、競合する霊魂の中で序列を作り始め、高い地位を授けられた霊魂が神となった(p228)。

    自己認識、他者認識、内省能力の発達に重要な役割を果たす内側前頭前野よりも、立案、推論、問題解決、精神的柔軟性の維持の中枢である外側前頭前野は遅く発達し、20代前半になって完全に成熟する(p233)。著者は、外側前頭前野の発達と農業の開始や宗教の発展は結びついていると考える(p235)。

    メソポタミアの宗教における第一段階である6500~5200年前のウルク時代は、自然や生命、死に結びつくものだったが、次第に神々の人間化が進んだ。5200~4350年前の王朝時代は、各都市国家に君臨する支配者や王が神々の力を奪い、神々も世俗の権限を引き受けるようになった(p246)。

    さまざまな民族が入り混じった数百万人の国民を抱える帝国では、体系化された統治が必要だったように、宗教も体系化される必要があった。儒教、ヒンドゥー教、仏教、ゾロアスター教、ユダヤ教は、2800~2200年前に始まった。これらの宗教には、死の問題に答えを与えたり、心理的・社会的恩恵が得られたり、政治的統治体制とともに発展するなどの共通点がある(p285-287)。

    人類の心の進化を脳の発達とともに論じている点は説得力を感じる。宗教の社会的機能は社会規模の拡大によって事後的に与えられたと整理している点も腑に落ちやすい。

    <神々の起源を説明する理論>
    宗教の起源は社会構造や社会制度にある(デュルケーム、ニコラス・ウェイド、バーバラ・キング、デイヴィッド・スローン・ウイルソン)
    宗教は社会秩序が途絶えないようにするために発明された(ジェシー・ベリング、アラ・ノレンザヤン、ドミニク・ジョンソン、カレン・アームストロング、ロバート・ベラー、パトリック・マクナマラ)
    宗教は慰めを求める欲求を満たすのに役立つ(ロバート・ハイランド、デイヴィッド・リンデン、ライオネル・タイガー、マイケル・マガイア、パスカル・ボイヤー)
    宗教は擬人主義が体系化されたもの(スチュアート・ガスリー、マイケル・シャーマー、パスカル・ボイヤー、ダニエル・デネット)
    神々は集団が生き残る可能性を高める(ニコラス・ウェイド、ディーン・ヘイマー、マシュー・アルパー)
    神々は進化の副産物である(パスカル・ボイヤー、スコット・アラン、リチャード・ドーキンス)

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    2021年07月14日
  • 神は、脳がつくった―――200万年の人類史と脳科学で解読する神と宗教の起源

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    著者は宗教学を専攻していた。著者の経歴は非常に特徴的である。

    「大学に入ってからは宗教学を専攻し、神々が目に見える姿で人の前に現れるときのさまざまな形について学んだ。それから人類学を専攻した大学院生のときに、似ても似つかない文化で驚くほどよく似た神が祀られていることを知った。医師および精神医学者になってからは、脳の研究に携わりながら、脳のどこに神々がいるのだろうかと問い続けてきた」

    神が人間の産物であるとするならば、それがどのように生み落とされたのかを探求するのは無駄ではあるまい。神々がどのようにして人間の中に生まれたのかというのを語るにはうってつけのキャリアかもしれない。著者は宗教学と脳神経科学を学び、「神々がどこから来たのかについて、本書では、人間の脳からだと主張する」からだ。著者の主張は、具体的には脳が次のような五段階の認知的発展を遂げたからだという。著者はそれぞれに脳の特定の部署の発達を要因として見ている。

    ・脳の著しい大型化や知能全般の大幅な向上 - 200万年前 (ホモ・ハビリス)
    ・自分を認識できる能力 - 180万年前 (ホモ・エレクトス)
    ・他者の考えを認識できる能力 (心の理論を持つこと) -20万年前 (古代型ホモ・サピエンス)
    ・自分自身の考えについてじっくり考える内省能力 - 10万年前
    ・自伝的記憶(自分を過去だけでなく将来にも投影する能力) - 4万年前 (現代ホモ・サピエンス)

    神々が心の理論を持つと想定すると、社会にとっていくつかのメリットが生じる可能性がある。まず、神々が人の心を読めるという信念につながると、それはある種の社会秩序につながる。
    また、内省的能力は、言語の発達にもつながり、両者はそろって発達した可能性がある。なぜなら、自らの考えを持たなければコミュニケーションとしての言葉を持つことは想像しがたいし、逆に言葉の存在が明確な内省の対象となる自己を構築することを手助けしただろう。
    そして、その結果として自伝的記憶が死の認識につながった。それは宗教誕生の萌芽となるものだ。

    脳の発達とそれに伴う認知の発展は、農業革命につながり、定住社会が始まった。そのため、死者の遺体を埋葬した場所の近くでずっと生活をするようになり、祖先崇拝が重要となった。そして、おそらくは1万年前から7千年前までのある時点で一部の祖先が、概念的に神々と見なされるようになったのではないか。すでに6,500年前には多くの神々がいることが残された文書から明らかになっている。この時期、世界中の各地で似たような形で宗教が生まれている。平行進化で神々が生まれたのは、それがある種の必然であったことの証左でもある。

    宗教は、死の問題に対して答えを与え、現実的にも宗教によって統べられる集団に所属することで、心の支えや社会的な保護を受ける機会を与えた。その後、政治的統治体制と結びつき、強化し、信者の経済的、政治的、軍事的な成功によって決まった。そして、宗教は発展した。

    本書の図8-1がすべてを表している。

    最後の章で、デュルケーム、ニコラス・ウェイド、デイビッド・リンデン、ダニエル・デネット、ジュリアン・ジェインズ、リチャード・ドーキンス、スコット・アラン、パスカル・ボイヤーなどが取り上げられるが、いずれも断片的で、もう少し落ち着いた理論的構築が欲しかったか。
    デネットの『解明される宗教』でも読んでみようかな。

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    2019年12月07日
  • 新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求

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    ネタバレ

    新薬の開発はますます困難になってきており、ファイザーのようなメガファーマもこの頃では創薬からは手を引いて他社が作った薬の導入に専念したいと考えている。ここまで薬剤はどのようにして見つけられ(作られ)てきたのか、わかりやすい歴史的背景と豊富なエピソードで描かれた良書。

    ・薬剤の創造は当初は自然にある物質をそのまま使っていた。アヘンからモルヒネが合成され、さらにその誘導体としてヘロインが作り出された(日本におけるアンフェタミンのように当初は依存性のない薬として市販されていた)。ペルーのキナの木の皮からはキニーネが合成された。

    ・次に純粋に工業的に製造される時代が始まり、エーテルが麻酔薬として用いられるようになった。高価な塗料(巻き貝から作るティリアン・パープルやカイガラムシから作る深紅)の染料を作ろうとする中で、化学物質の構造を少し変えるだけで劇的な変化が起こることが知られるようになり、合成化学による創薬の時代が始まった。サリチル酸はすぐれた抗炎症作用を有するものの、胃痛や耳鳴り、吐き気などの副作用が強く使いにくい薬であったが、これにアセチル基を付与することでアスピリンが合成された。

    ・さらに、受容体仮説が提唱され、分子レベルで標的を定めた薬剤合成の時代が始まり、サルバルサンが作られた。

    ・そしてペニシリンが発見され、土壌由来の医薬品、特に抗生物質が大きなトレンドになった。当初はペニシリンは極めて貴重であったため、患者の尿は一滴残らず回収され、ペニシリンはリサイクルされていた。

    ・その後、分子生物学の発展により、大腸菌でインスリンが合成された。

    ・ピル、壊血病とビタミンC、セレンディップな抗精神病薬の発見

    ・グッドマンとギルマンはもともと大学の同僚であったが、ギルマンの方は息子をアルフレッド・グッドマン・ギルマンと名付け、この息子はGタンパク受容体に関する研究で1994にノーベル生理学賞を受けた。

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    2019年01月13日
  • 世界はなぜ「ある」のか? 実存をめぐる科学・哲学的探索

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    「世界はなぜあるのか」、つまり「なぜまったく何もないのではなく、何かがあるのか」という哲学、物理学、そして神学に関わる問いについて、過去の哲学者や科学者を引き合いにだしながら、その道の専門家と思われる人へのインタビューを重ねた本。変わった印象を与える本だ。

    著者の知識は広い。選んだテーマからして当然、哲学関連の知識もある。古くはタレス、ソクラテス、アリストテレスから始まり、デカルト、カント、スピノザ、ライプニッツ、ヘーゲル、フィヒテ、シェリング、キルケゴール、ショーペンハウアー、ハイデガー、フッサール、ベルクソン、サルトル、ノージック、ネーゲル、ジョン・サール、ダニエル・デネット、チャーマーズ、ウィリアム・ジェームズ、などなじみの顔が揃う。また数学および論理学の偉人でも、アルキメデス、パルメニデスから始まり、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、カントール、カルナップ、クワイン、ゲーデル、クリプキの名前が並ぶ。そして、物理学からもアインシュタイン、ボーア、シュレディンガー、ハイゼンベルグ、ワインバーグ、フリードマン、エベレット3世、ファインマン、ホーキング、ペンローズ、ヴィレンキン、サスキンド、ブライアン・グリーン、と錚々たる名前。神学の方面からも問いを巡らし、カール・バルト、トマス・アクィナス、アンセルムス。

    世界の起源についての科学的知識はこの数十年の間に飛躍的に拡がった。インフレーション宇宙や真空のゆらぎ、などはほぼ業界のコンセンサスとしてひとつのパラダイムを構築しているように思える。その結果、多宇宙論といった人間の認知限界を超えているのではと思われる考えについても一定の賛同が得られている。一世紀前と現在の違いは、この物理学で蓄積された知識だろう。存在や生成のメカニズムがかつてないほどの確度で明らかになっており、認知の限界が100年前と比べて格段に深化されている。そして、その結果いくばくかの人間原理にも囚われることになる。

    ウィトゲンシュタインが言う「神秘的なのは、世界における物事のあり方ではなく、世界が存在するというそのことである」とし、「世界は私の世界である」であり「私は私の世界である」と言ったところから、実のところ進めていないようにも思う。また、ハイデガーが「無はあまりにも現実的で、存在の世界を壊滅の脅威にさらす、「無効かする力」みたいなものだった。だからこそ、「なぜまったく何もなにのではなく、何かがあるのか?」という問いは、「最も深く」、「最も遠大」で、「最も根源的な問い」だと明言した」

    本書の多くは、専門家へのインタビューで構成されるが、それはどこか搔痒感がわく。本を読み進めても、核心へ近付いているという感覚が持てない。

    実際に著者がインタビューをしたのは以下の面々である。

    アドルフ・グリュンバウム、哲学者
    リチャード・スウィンバーン、宗教哲学者
    デイビッド・ドイッチュ、多宇宙論
    アンドレイ・リンデ、物理学者
    アレックス・ヴィレンキン、量子宇宙論
    スティーブン・ワインバーグ、量子論
    ロジャー・ペンローズ、宇宙物理学者
    ジョン・レスリー、哲学者
    デレク・バーフィット、哲学者
    ジョン・アップダイク、作家

    彼らと話をするために、ニューヨーク、オックスフォード、パリを巡る。

    「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いはつかまえどころがない、あるいはまったく支離滅裂だと思う人にはこう申し上げる ― 知の進歩は往々にして、まさにそのような問いを、初めて発した者には予見できないやり方で洗練させることによってなされてきたのだ」というのが著者のモティベーションである。そうであるなら、その道は半ばである。本書にて、その答えを求めるべきではない。まずは、そういった問いに慣れ親しみ、楽しむことだ。そして、人間だけが今のところそうすることができる存在であるのだから。

    面白いかどうか、理解できたのかどうか、と問われると微妙、だけれども、この問いを興味を持って問い続けることは必要なことのように思える。そういう意味で言って面白かったよ。

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    2014年10月26日
  • 忘却の効用 「忘れること」で脳は何を得るのか

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    脳には元々記憶を忘れる仕組みがあり、「正常な」忘却は必要最低限の情報を格納して対象を一般化して認識するためにも必要な機能であることが分かる。一方「病的な」忘却には、アルツハイマー病などの認知症と、老化が原因となる2つのタイプがあり、fMRIを使った診断では異常をきたす脳領域が異なる。
    恐怖やその記憶は扁桃体の神経細胞で形成されて貯蔵されるが、扁桃体はこの恐怖記憶を弱めるブレーキ機能も持っていて、適度に忘れることができるという。
    著者はコロンビア大学でアルツハイマー病と老化を専門としている。イスラエルで従軍経験のある著者は、第3章でPTSD(心的外傷後ストレス障害)を論じている。

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    2026年02月16日
  • 忘却の効用 「忘れること」で脳は何を得るのか

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    症例および原因箇所の説明、
    忘れることは人の心のバランスをとる、感覚的に知っていたことを文章として再確認した感じでした

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    2025年08月23日
  • 忘却の効用 「忘れること」で脳は何を得るのか

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    ゆる言語学ラジオで知った本。2章まで読んだ。
    私たちは普段、忘れることを悪いことだと思いがちだけど、この本は忘却がいかに大切かを教えてくれる。もしすべての記憶が鮮明に残っていたら、物事を一般化して理解することができず、複雑な世界をシンプルに整理することも難しくなるらしい…。あと、辛い思い出も忘れられなくなるのも辛そう。
    忘れることで、私たちは新しい経験を柔軟に受け入れ、世界をより広い視野で見ることができるのかもしれない。
    忘却は単なる欠落ではなく、むしろ心の整理整頓に欠かせない機能だと感じた。

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    2025年07月04日
  • 忘却の効用 「忘れること」で脳は何を得るのか

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    自分がよく物忘れをするので、その特性のメリットはないかと購入。
    あわよくば忘れないようにする工夫があればと思い読んでみました。

    本の内容としては、「記憶に関与する脳の構造(海馬や前頭前皮質など)がどのようにつなぎ合わされて記憶をし、また忘れていくのか?」ということをメインに書かれていました。

    この本によると、正常な忘却はむしろ喜ばしいことで、恐怖などの体験を上手く忘れることによって心の安定を保っているとのこと。自分がよく物忘れをするというのはあくまで主観的な部分もありますが、確かに比較的心は穏やかさを保てているように感じました。(身内に対して以外かもですが(笑))
    また、アルツハイマー病やPTSDなどの病的な忘却が起こっている場合には、認知行動療法や海馬の機能を回復させるような薬物療法が必要になるといったように、病気に対してのコメントも述べられています。

    他に面白い内容としては、「睡眠は記憶のためではなく忘却のためにある」というものがありました。
    睡眠によって必要な情報と不必要な情報の篩い分けを行い、不必要な情報を忘却することによって脳の容量を守り、結果的に必要な情報だけが残っていくとのこと。
    この話を聞いて、「人は同じ情報を何度か思い出そうとすることで、その情報は重要なのだと脳が判断し、記憶に残りやすくなる」というのも理屈がわかる気がします。

    脳の構造の話がメインになっていくので、内容としてはちょっと難しめでしたが、興味のある方は読んでみてください!

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    2024年09月08日
  • 信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実

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    "信頼はなぜ裏切られるのか"というタイトルだが、日本語訳の問題なのか信頼が裏切られる仕組みを解き明かした本ではなかった。
    英語タイトル"The Truth About Trust…略"をGoogle翻訳すると"信頼についての真実"っぽいので、どのように裏切られるかについて書かれていないのは致し方ないだろうと感じた。
    訳者もあとがきにて、英語タイトルについて言及していたので何か思うところがあったのかと推測する。

    文章は読みにくく感じた。ちょこちょこと説明のために入れている内容が私にはとても読みにくく、著者の感想なのかな?という内容もあって、正直どうでも良い内容が、途中で入ってくるので読みにくく感じた点が私の評価を下げた…

    ただ、中身の内容としては信頼に関する実験の説明や信頼のメリット、デメリット、勘違いや信頼の仕組みなどが書かれていて面白かった。

    この本の要約に関しては、
    訳者のあとがきが秀逸で、以下の通りにまとめられており、最後の振り返りとしても生きる内容なので、訳者後書も読むことを私は勧めます。

    ①誰かを信頼する際には、「あの人は信頼できるか」ではなく「あの人は、現時点で信頼できるか」と問うべきである。
    ②評判で人の信頼を予測できるとは限らない。
    ③信頼は誠実さだけで決まるわけではない。
     ※相手が信頼すべき能力があるかも重要
    ④赤ちゃんや幼い子供でも他者の信頼度をチェックしている。
    ⑤信頼関係ができていると、パートナーの振る舞いは実際以上によく見える。
    ⑥一時的にでも権力や金を持つ(持ったと感じている)とその人の信頼度は下がる。
    ⑦人の信頼度は表情だけでは読み取れない。
     ※行動の組み合わせで信頼度を読み取れそう
    ⑧人は他者の信頼の裏切りには厳しい目を向けるが、自分の信頼の裏切りには甘い。

    これらは各テーマでの要約になっておりよくまとめられている。
    ⑦に関しては私自身は半信半疑であり、この本から10年ほどたって他の研究から明確には言えないのではと今時点の私は考える。
    ⑦以外は同意でき、私の直感からもある程度信頼できそうだと感じた。

    この本は面白い本であることは認めているが、要所要所での考え方や推察が私にとっては確信を持てなかったことから評価は高くしないようにしたが、テーマである信頼というのはとても面白く、10年経ったいまではどうなっているかが気になるところでした。

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    2023年08月15日
  • 新薬の狩人たち 成功率0.1%の探求

    Posted by ブクログ

    低分子から、中分子、遺伝子・再生、と新規モダリティの探索が進められている話を最近気にしているが、そもそも「低分子」の前はどうであったのかを知りたくなり、読みました。事前の期待以上に、知りたかったことをレビューできてよかったです。

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    2022年05月03日
  • ジェネリック医薬品の不都合な真実 世界的ムーブメントが引き起こした功罪【無料お試し版】【固定レイアウト版】

     

    購入済み

    ジェネリック

    ジェネリック医薬品は、公衆衛生上の大きなイノベーションと言われており、高価な先発医薬品を手に入れられなかった人々を救うとともに、医療費増大に悩む国の希望の光となっている。
    しかし、それは、ジェネリック医薬品メーカーが高い倫理観をもって、先発医薬品と変わらない薬効・安全性の薬を製造している、という信頼を前提とした話。

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    2021年09月26日
  • 信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実

    Posted by ブクログ

    脳科学の部分は面白くて、これからの人生で何かを選択する時、少し冷静に短期的な利益か長期的な利益か考えられそう

    脳の仕組みを知れて楽しかった


    でも説明がくどいというか長くて最後は飽きてしまった。。。

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    2021年03月29日
  • 信頼はなぜ裏切られるのか 無意識の科学が明かす真実

    Posted by ブクログ

    題名が気になり興味をそそられたのでこの本を手に取ってみた。
    内容としては、なぜ人は信頼が必要なのか?人は信頼を見抜くことができるのか?など信頼に関するさまざまな疑問が載っている。
    感想としては洋書にありがちな話しの長い展開、訳者との相性が悪かったためか自分にとっては読みにくく感じた。
    なぜ?信頼は裏切られるのか、どういう場合、裏切りやすくなるのか、気になる人は手に取って読んでみても損はないと思う。

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    2021年03月21日