あらすじ
万能の天才科学者ライプニッツが問うた、「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか」という古来の難問を、哲学、宗教、科学の広い領域の学者に取材し突き詰める。二一世紀に蘇る知のルネサンス
なぜ「何もない」のではなく、「何かがある」のか? 万能の天才科学者、ライプニッツが提起したこの「存在の謎」は、人間が生まれて以降に投げかけられた最も深遠な問いだ。善のイデアから神、数学、情報、量子ゆらぎまでの、何が事物をあらしめるのか。「まったくの無」というものはあるのか、あるいはありえないのかを、著者は広大な知的世界を探偵のように尋ね歩き、有望な答えを持っていそうな著名な哲学者/物理学者/神学者/文学者との対話を重ね、謎の核心に迫っていく。
先端科学の成果が加味されはじめていま最も刺激的な科学哲学上のテーマを、ジャーナリスティックで明快な文章にのせて綴る。ニューヨークタイムズ・ベストセラーともなった、考えることの楽しみを存分に味わわせる1冊。/掲出の書影は底本のものです
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Posted by ブクログ
「世界はなぜあるのか」、つまり「なぜまったく何もないのではなく、何かがあるのか」という哲学、物理学、そして神学に関わる問いについて、過去の哲学者や科学者を引き合いにだしながら、その道の専門家と思われる人へのインタビューを重ねた本。変わった印象を与える本だ。
著者の知識は広い。選んだテーマからして当然、哲学関連の知識もある。古くはタレス、ソクラテス、アリストテレスから始まり、デカルト、カント、スピノザ、ライプニッツ、ヘーゲル、フィヒテ、シェリング、キルケゴール、ショーペンハウアー、ハイデガー、フッサール、ベルクソン、サルトル、ノージック、ネーゲル、ジョン・サール、ダニエル・デネット、チャーマーズ、ウィリアム・ジェームズ、などなじみの顔が揃う。また数学および論理学の偉人でも、アルキメデス、パルメニデスから始まり、ラッセル、ウィトゲンシュタイン、カントール、カルナップ、クワイン、ゲーデル、クリプキの名前が並ぶ。そして、物理学からもアインシュタイン、ボーア、シュレディンガー、ハイゼンベルグ、ワインバーグ、フリードマン、エベレット3世、ファインマン、ホーキング、ペンローズ、ヴィレンキン、サスキンド、ブライアン・グリーン、と錚々たる名前。神学の方面からも問いを巡らし、カール・バルト、トマス・アクィナス、アンセルムス。
世界の起源についての科学的知識はこの数十年の間に飛躍的に拡がった。インフレーション宇宙や真空のゆらぎ、などはほぼ業界のコンセンサスとしてひとつのパラダイムを構築しているように思える。その結果、多宇宙論といった人間の認知限界を超えているのではと思われる考えについても一定の賛同が得られている。一世紀前と現在の違いは、この物理学で蓄積された知識だろう。存在や生成のメカニズムがかつてないほどの確度で明らかになっており、認知の限界が100年前と比べて格段に深化されている。そして、その結果いくばくかの人間原理にも囚われることになる。
ウィトゲンシュタインが言う「神秘的なのは、世界における物事のあり方ではなく、世界が存在するというそのことである」とし、「世界は私の世界である」であり「私は私の世界である」と言ったところから、実のところ進めていないようにも思う。また、ハイデガーが「無はあまりにも現実的で、存在の世界を壊滅の脅威にさらす、「無効かする力」みたいなものだった。だからこそ、「なぜまったく何もなにのではなく、何かがあるのか?」という問いは、「最も深く」、「最も遠大」で、「最も根源的な問い」だと明言した」
本書の多くは、専門家へのインタビューで構成されるが、それはどこか搔痒感がわく。本を読み進めても、核心へ近付いているという感覚が持てない。
実際に著者がインタビューをしたのは以下の面々である。
アドルフ・グリュンバウム、哲学者
リチャード・スウィンバーン、宗教哲学者
デイビッド・ドイッチュ、多宇宙論
アンドレイ・リンデ、物理学者
アレックス・ヴィレンキン、量子宇宙論
スティーブン・ワインバーグ、量子論
ロジャー・ペンローズ、宇宙物理学者
ジョン・レスリー、哲学者
デレク・バーフィット、哲学者
ジョン・アップダイク、作家
彼らと話をするために、ニューヨーク、オックスフォード、パリを巡る。
「なぜ何もないのではなく、何かがあるのか?」という問いはつかまえどころがない、あるいはまったく支離滅裂だと思う人にはこう申し上げる ― 知の進歩は往々にして、まさにそのような問いを、初めて発した者には予見できないやり方で洗練させることによってなされてきたのだ」というのが著者のモティベーションである。そうであるなら、その道は半ばである。本書にて、その答えを求めるべきではない。まずは、そういった問いに慣れ親しみ、楽しむことだ。そして、人間だけが今のところそうすることができる存在であるのだから。
面白いかどうか、理解できたのかどうか、と問われると微妙、だけれども、この問いを興味を持って問い続けることは必要なことのように思える。そういう意味で言って面白かったよ。
Posted by ブクログ
科学のカテゴリに入れたが、ある意味哲学書でもある。
人にとっても最も根源的で最も難解な問いである、「世界は
なぜあるのか」について、様々な哲学者や科学者、作家に
インタビューを行い、著者自分なりの答を導き出そうという
本だ。著者なりの結論は一応書いてあるのだが、その結論
よりも、そこに至るまでの様々な立場の人間の意見とそれに
対する著者の反応の過程こそが面白い本だと思う。
私は世界を創造した「人格神」といったものが存在している
とは思えないのだが、この宇宙を生み出した何かが存在して
いるのなら、人間が自分の都合でそれを神と呼んでも差し
支えないとは思っている。人は信仰がなければ生きていけ
ないものだとつねづね思っているしね。
著者が本当に書きたかったのは自分なりの答の後に書いて
いたことではなかったかと、ちょっと思ったり。
Posted by ブクログ
なぜ「何もない」ではなく「何かがある」のか?
という哲学の究極の問いを様々な知識人(神学者やノーベル物理学賞受賞者、数学者などなど)にインタビューしながら考察する一冊となっている。
それぞれにそれぞれの考え方があってとても面白いです。
神の存在を仮定するしか無いと考える人から、量子論的揺らぎによる神を必要としない偶然の創造、多宇宙説によって必然的に生まれる、プラトン主義的な考えなどなど。
無から有の創造はどのように起こったのか?また、何故それが起こったのか?
あるいは、そもそも無なんてものは存在せず、無限の過去から未来永劫存在するのか?では、それは何故無ではなく有なの?
自然界が真に機能的で美しいものであるなら、もっとも単純(シンプル)な無が選ばれるのが本筋じゃないのか?
そもそも無とはなんだろう?あなたには想像出来ますか?
そして行き着く先は私とはなんだろう?と死についてである。
哲学を簡素にまとめた一冊だと思います。
ただ堅苦しいのではなく、様々な知識や楽しい挿話が詰め込まれていて面白かったです。
ひとつのテーマでこの分量を書けるのはすごいですねw