安田洋祐のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
RADICAL MARKETS エリック ポズナー 東洋経済
『選挙制度の抜本的な改革案』
間接民主主義の基本である「選挙」が
一人一票という二択的な選択による現状で
利権者に都合のいい多くの矛盾が生み出されている
そこで考えられたのが
二次的投票システム「クアドラティック・ボーディング(Quadratic Voting)である
これは『RADICAL MARKETS』2018年エリック・ボスナーとグレン・ワイルによって世に出たシステムである
この制度において
有権者はそれぞれ99ポイントを持ち
投票では一票につき2乗のポイントを消費する
つまり一人に1票を投票する場合は1ポイントを消費するが
同一対象に複数票を投じることもできる
例えば最高の9票を投じるならば
その二乗9×9で81のポイントが消費される
しかし99ポイントしかないので全部を一人に投票できない
最大でも9票止まりとなり
残り18ポイントについては棄権するか
別の候補を選ぶことになる
ポイントを無駄にしないためには最低でも四人を選ぶことになる
最大では99人に投票できる
このデジタル投票システムによって
透明化による不正な行為を減らすことができる
現状の比例代表などの極端な政党政治を抑えることができる
投票の結果が具体的に見えるので個々の参加意識が向上する
このシステムの導入は
既得権益を得ている者達によって邪魔されることだろうが
すでに台湾で導入が始まっているらしい
最初この題名を見たときには
市場経済の中で脱私有財産を目指すなど
あり得ないと思ったが
この本によって世の中の広さを痛感させられた -
Posted by ブクログ
日本語版のタイトルのインパクトである。 英語版を直訳するなら「雇用の新しい地理学」だろうか。しかし日本語のタイトルは極めて本書の要旨を抑えていると思う。
年収を得るには雇用が必要だ。経済が活発な地域では、平均的な収入は高く、また雇用も多い。経済が活発であるとは、そこに産業があるということだ。かつて産業とは製造業だった。今でも製造業が重要であることにはかわりはないが、その形は大きく変わってきている。本書でまず理解すべき点の1つ目は「製造業」と「イノベーション産業」の違いである。アメリカ国内での製造業は、その多くが海外に拠点を移しているせいで没落している。日本も例外ではない。日本のメーカーでもあっても製造拠点は中国へ、また中国の人件費が上がってきた昨今では東南アジアなどのさらに人件費が低いが良質な労働力のある国へ移っていく。一方、アメリカではどういった産業が発達しているか?周知のとおり、インターネットやソフトウェア、それに関わるビジネスをおこなう企業が成長している。こういった産業をイノベーション産業と呼んでいる。
製造業とイノベーション産業の地理的な違いはなんだろうか?製造業は伝統的に、市場や生産投入物への距離が重要だった。つまり、売り先が近いほうがいいし、一方で原料が近くで手に入るほうがいい。こういった地理的要因が製造業が成長する位置を規定していた部分が大きい。
しかし、イノベーション産業はそういった物理的制限が少ない。ソフトウェアの輸送コストはただみたいなものだ。ではなぜ、サンフランシスコ近辺(ベイエリア)やシリコンバレー、またシアトルなどがイノベーション産業の集積地となっているのだろうか?
それは「アイデア」がイノベーション産業の源泉であり、アイデアは人とコミュニケーションすることで生まれるからだという。伝統的製造業が中心だった頃は生産プロセスが差別化の肝だった。しかし、今重要なのはどのような製品やサービスを生み出すかというアイデアが最も肝になっている。そういった生産性と創造性が重要な産業が地理的な拠点を選ぶときに、3つの恩恵があるところを選ぶという。それは
1.厚みのある労働市場(高度な技能を持った働き手が大勢いる)
2.多くの専門のサービス業者の存在
3.知識の伝播
である。
労働市場の厚みとは、文字通り、高度技能者が多くいる労働者のマーケットが存在することだ。同じような技能を持ってる人が10人いる市場と1000人いる市場では、労働者と企業のどちらの立場から見てもよいマッチングの結果が得られるのは後者だ。そして、厚みのある労働市場があれば、さらにイノベーション産業と高度技能労働者の両方を惹きつけることができる。
専門サービス業者の存在は、産業が育つために重要だ。イノベーション産業が成長するには、資金調達や法律関係など様々なサービスを利用することが必要になる。一見、イノベーション産業は製造業よりもかんたんに海外移転ができそうだが、「イノベーションは適切なエコシステムに身を置くことが重要」であると著者は説く。シリコンバレーのベンチャーキャピタル業界では、20分ルールというものがあり、オフィスから車で20分の距離に拠点がない会社には投資しないという。学術研究でも、ベンチャーキャピタルと新興企業の地理的な距離が広がると、投資される確率が急激に落ち込むという。ベンチャーキャピタルはただの投資家ではなく、エンジニアなどアイデアを生み出す起業家にビジネスとしての方向づけを行う役割もある。そのためにも地理的な近さが緊密なコミュニケーションに役立っているのだろう。たとえば、シリコンバレーには会社の法人化のための手数料の代わりに、その会社の株式を受け取る法律事務所があるという。多くの会社と同様の契約を行えば、一つの会社が大当たりすれば、割に合うというビジネスモデルである。多くのイノベーション・スタートアップがある場所だからできるビジネスモデルであるが、一方で何千ドルもする手数料をすぐに払えない若いスタートアップ会社からしてもニーズがある。
知識の伝播とは、これだけインターネットによるコミュニケーションが標準化した現在でもなお、むしろ今だからこそ、対面のコミュニケーションが重要視されているということである。創造的な人同士が対面でコミュニケーションすることで新たなアイデアが生まれる、ということが認識されているのである。例えばWeWorkのようなコワーキングスペースの需要はこういうところになるのだろう。本書の中には「わが社には最新鋭のテレビ会議システムがあり、いつもそれを使ってインド側と会議をしていますが、直接顔を合わせて話をするのと同じようにいきません。一ヶ所に集まってホワイトボードの前で議論を戦わせる経験は何者にも代えがたい」。今これを書いているのはコロナ騒動の真っ最中なので、いささか的はずれな感じもするが、これは心理だと思う。
「年収は住むところで決まる」というが、これは高技能労働者だけではなく、一般的な労働者にも当てはまる。コーヒーショップの店員、レストランのウェイター、美容師など地域でサービスなどに従事する労働者の生産性には、大きな地域差はないはずだが、サンフランシスコのウェイターと、中西部の田舎のウェイターには収入に大きな差がある。これは、大きな収入を得ている高技能労働者が利用するがゆえのスピルオーバー効果だが、この差はどんどん開いていく一方である。
最後に、本書は経済学で言う人的資本、つまり教育の重要性について議論する。イノベーション産業の成長が、それぞれの地域、ひいては国家全体にとって便益生み出すことが議論された。政府が税控除などの形で補助金を出すのはそういう側面があるからだ。これは教育でも同様で、教育を受けた高技能労働者がもたらす社会的便益に対して、教育を受ける本人が支払う私的費用が大きすぎる。また教育を受けた移民が起業する確率は高く、それもまた国家に恩恵をもたらす。こういった研究結果から、政策として高技能の移民を受け入れを拡大するのか、落ち込むアメリカ人の教育を強化するのか。こういった政策判断が求めらえるという。これは日本にとっても他人事ではなく、むしろ切羽詰まった問題と言えよう。 -
Posted by ブクログ
題名からは、煽りの入った挑発で話題をとるような本かと思っていたが、そのなものとは全く異なるまともな経済学の本である。
イノベーション産業は、従来の自動車などの産業よりも乗数効果が大きく、レストランや美容室などの地場産業への賃金上昇などの波及効果が大きいとか、イノベーション産業ほは高学歴社員を必要とするとか、実際に会って議論することが大事とか、現在の状況を示し、それらが一部の都市に集中していることの理由と説明する。
今後の繁栄は、相互につながる高学歴層が大勢いる都市がリードするイノベーションに依るというものだ。その都市に住めば、生活産業など非イノベーション産業の人でも、賃金は上がっていくのだ。それが本書の題名の由来である。もっとも都市間格差は広がってしまうのだけど、現実をよく説明していると思う。
本書を読むと、良いとか悪いとかではなく、現状をよく説明していてとても納得がいく。政治家に読んでもらい、今後の政策を考えてほしいと思う。 -
Posted by ブクログ
ここ1年で読んだ本の中で一番のアタリだったかもしれない。
本書の大筋はイノベーション産業が「都市」を活性化させるというもの。
ひとつのイノベーションがあれば、その街のイノベーション産業に関わる業種はもちろんそれ以外の例えばサービス業(医者・弁護士からウエイターや新聞配達員まで)の年収もUPする。
なので、イノベーション産業を活性化させることこそが都市を発展させる手段なのだ。
そして、インターネットで物理的な距離が縮まっているように見える今日だがやはりイノベーションが起こるのは知識人たちが物理的に近い距離、立ち話したり飲んだりできる距離にいることが大事だそう。実際、ネットで繋がるのも顔を実際合わせた人たちが多いそうだ。
これを読んで、私も大阪を関西を発展させたいと願った。
東京1点集中が激しい日本だが、関西もイノベーションハブを作り発展させたい。
関西の人たちを繋ぎ、良い相乗効果をたっぷり起こし、想像以上の未来を創っていきたいと思った。
今の私にできることは、
①自分自身が多くの人と繋がること
②自分がつながった人たちを繋げていくこと
この2点だと思う。
もっともっとできることはあるだろうけど、今の私にできることはココだと思う。
少しずつ、頑張っていきたい。 -
Posted by ブクログ
刺激的なタイトルにひかれ、手に取った一冊。非常に興味深く読みました。
確かに当然だと思える内容かもしれませんが、近年の格差拡大の原因が大きく変わってきていること状況が見え、またこの格差もこれまでの常識とは異なるものが生まれている状況も垣間見られました。それだけ、最近の産業の影響は大きいものだと感じます。
著者は「アメリカがどう変わりつつあるかは、日本の未来を見通すうえで大いに参考になる」と述べていますので、確かに近い将来の姿として意識することは必要。
一方で、アメリカが、ヨーロッパはじめ他国とは異なる歴史的な特徴があることを指摘しているため、どの程度同じ現象が日本で見られるのかが個人的には分からない部分です。
アメリカのように国土も広く各州に大きな権限がある国家と日本とはどうしても状況は違うような気がしてしまいます。
いずれにしても日本ではまだまだ企業誘致を進めていますが、ただその企業を誘致するだけでなく、雇用やその影響なども考慮したうえで進めなければ、将来にわたった発展した都市にはなりえないでしょう。
一朝一夕でできるものではありませんが、将来を考えながら、進めていく必要性を痛感します。
<目次>
1. なぜ「ものづくり」だけではだめなのか
2. イノベーション産業の「乗数効果」
3. 給料は学歴より住所で決まる
4. 「引き寄せ」のパワー
5. 移住と生活コスト
6. 「貧困の罠」と地域再生の条件
7. 新たなる「人的資本の世紀」