山田和子のレビュー一覧

  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    さすが古典SF作家の短編集と思わせる一冊!
    作品の多彩さもそうなのですが、最近のSFの傑作たちに通じるアイディアも随所に見られ、普遍的なSFの血脈を感じました。

    もっとも印象的だった短編は表題作の「無伴奏ソナタ」
    音楽を愛した天才が、国家から音楽をはじめ多くのものを奪われていく姿を描いた短編。

    国に逆らうと分かっていながらも音楽を創ろうとする主人公の静かな熱意と過酷な人生に思いをはせるとともに、ラストシーンの素晴らしさが強く印象に残ります。文章が主人公から距離をとった冷静な語り口なのですが、その分深く静かな感動がゆっくりと押し寄せてきました。

    SF作品でありながらもホラーの雰囲気を感じる作品も多く、その不気味さも相まって面白い作品も多かったです。
    「王の食肉」は人間を食べる外来生物とその生物に仕えた〈羊飼い〉と呼ばれる人間の物語。ぱっと読んだ雰囲気ではB級ホラーっぽいあらすじになるのですが、そこを描写の気味悪さで引っ張ります。そしてラストの展開でまったく味わいのちがう作品に変わり、アイディアとテーマの見せ方の巧さを感じました。

    「ブルーな遺伝子を身につけて」もSFにホラーの雰囲気をまとった作品。化学戦争で地球から逃れた人類。それから数百年。宇宙飛行士たちが再び訪れた地球には、生き残った人類が生活していたが……

    地球で生き残った人類とともに生活しているアメーバ状の謎の生物。その正体が分かったときの不気味な感じと衝撃の一方で、どこか説得力もある奇妙さもあり印象に残りました。

    他にもSFだけでなく怪奇小説の雰囲気の強い作品も多数収録されていて、著者の多彩な一面を垣間見ることのできる短編集でした。

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    2022年10月18日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    手紙のやり取りを通して物語を進めていく実験的手法は面白いが、英語でないと判らないらしい文章の面白さが伝わらず残念。相手への奇想天外な手紙送出方法や、赤と青をイメージする書き出し、PSの使い方、時間SFにおいて納得できるストーリー、良い面はたくさんあるのだが、今一つキャラクターの気持ちに入り込めなかった。SFアニメ化して連続ものでやると、手紙の現れ方がビジュアライズされて面白いかも。二人の美少女のタイムトラベルバトルとして京アニで作れないかな?地味な手紙のやり取りはバイオレットエバーガーデンで克服済みだし・・・

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    2022年09月04日
  • こうしてあなたたちは時間戦争に負ける

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    2021-10-31
    なかなか凝った構成と美しい文章。百合ではあるのだけど、むしろふたつの魂の交流の詩。
    最後の最後でタイトルの意味が明らかになった時の爽快感たるや。人を選ぶと思うけど、刺さる人には奥底まで刺さる美編

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    2021年11月01日
  • シミュラクラ〔新訳版〕

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    ディックにしては珍しい(?)群像劇。登場人物が20人を超える多さで、かつ場面の転換も多いので、途中でどういう展開かよくわからなくなることがしばしば。
    世界設定がワルシャワを中心とする共産主義体制とヨーロッパ・アメリカ合衆国(USEA)に二極化された社会であったり、タイムトラベル装置でナチスのゲーリング元帥を呼び出す展開、模造人間(シミュラクラ)や火星生物の登場、…などなど、おもしろそうな要素で溢れているにも関わらず、これらがうまく物語に溶け込んでいない印象(結局、ゲーリングはなんで召喚したのか?笑)。 
    最後は尻すぼみ、というか投げっぱなしで終わったし、これまで読んできたディックの長篇小説の中でもとりわけ場当たり感の強い作品でした。

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    2018年10月28日
  • 時は乱れて

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    物語の大きな構造の真相は早めにわかる。その上でその理由や背景を押し知るべく登場人物の描写を読み取るのに力が入るのだが、いざ終盤で全てが明かされても、何か物足りなかったかなぁ

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    2015年02月03日
  • 無伴奏ソナタ〔新訳版〕

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    完全に表紙とタイトルの響きに惹かれて購入し、読んだ。
    筆者と作品について何も知らず、
    勝手に現代的なゴリゴリのリアルでハードなSF
    を書く人なのではと想像していたのだが、
    多少グロく、幻想的で、ちょっと日常を踏み外した
    ところにある「世にも奇妙な物語」的と受け止める。
    確かに表題作は本のタイトルに選ばれるのも当然だが、
    この中で一番は《大衆》の物語であり、
    《支配者》の物語であると思う。

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    2014年09月30日