庭田よう子のレビュー一覧
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【騒ぎが収まれば、民間スパイが手玉に取るのはターゲットだけではないことが明白になる。顧客も手玉に取られるのだ】(文中より引用)
フュージョンGPSやブラック・キューブなど、近年顕著になりつつある民間"諜報"会社の活動を追った作品。著者は、ピューリッツァー賞の受賞経験も持つバリー・マイヤー。訳者は、ノンフィクションの翻訳に定評のある庭田よう子。原題は、『Spooked: The trump Dossier, Black Cube, and the Rise of Private Spies』。
トランプ元大統領のいわゆる「ロシア疑惑」を軸に展開するため、相応の背景知識がないとかなり読みづらいとは思うのですが、公と私の境目が溶け、そこにジャーナリズムが独特な関与の仕方をしていることを知る上で大変参考になる一冊でした。それにしても、厄介な時代に生きているもんだなぁということを痛感しました。
日本ではまだまだ注目が集まっていない分野ではありますが☆5つ -
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【受託者の役割が封建国家に応じて登場したように、ウェルス・マネジメントは、世界の最富裕層が創造して住まう超国家的な空間の副産物なのである】(文中より引用)
オフショア国家や現代の金融技術を駆使しながら、富裕層の金庫番を務めるウェルス・マネジャー。これまであまり光が当てられてこなかった彼/彼女らの世界の内側に入り込み、どのように資産の防衛がなされているかを詳述した作品です。著者は、本書のためにウェルス・マネジャーの資格まで取得したブルック・ハリントン。訳者は、優れたノンフィクションを多数訳している庭田よう子。原題は、『Capital Without Borders: Wealth Managers and the One Percent』。
税を課す側・課される側の地球規模でのいたちごっこを描いた意欲作。中世の倫理観と現代の金融技術で武装した者たちが繰り広げる未知のドラマが広がっていました。殊更にウェルス・マネジャーばかりを批難するものではなく、研究所としてのバランス感覚も見事だったと思います。
期せずして読んだら思いのほか素晴らしかった☆5つ -
Posted by ブクログ
富裕層の税・相続を一手に引き受けるウェルスマナジャーの実態を解説した書籍。このために著者はウェルスマネジャー研修プログラムSTEP(Socierty of Trust and Estate Practitioners) を2年間受講し、世界標準資格まで得ている。内容は超資産家の知られざる脱税の手口(合法なので租税回避と言うべきだが、庶民から見れば明らかに脱税)となぜそれが可能かを記す。要は金持ちは国際法の隙間を縫ってオフショアと呼ばれる小国(ケイマン島、ヴァージン諸島、マン島、ジャージー島等)の法律を捻じ曲げて、インチキを合法にしてしまうということだ。インチキの内容は信託・財団などをつかった租税回避・債務回避・相続対応等である。特に信託は受益者の名前を開示する必要がなく、だれが財をもっているかをわからなくするとんでもない仕組みだ。庶民が知ってもどうすることもできないが、金持ちであれば財産を放蕩息子の3代目でつぶさないようにする恰好の方法である。今や超富裕層は国家の縛りをうけず、自身も財産も自由に海外に移動できる時代であり、自分に都合の良い法律がある国に適宜移住(書類上で)すれば良い。これを取り締まる試みはウェルスマネジャーの固い守りのため失敗の連続であり、著者の提言は、富豪対策にはウェルスマネジャーを味方にする方策を考えるべきというものである。
金持ちだけが得する恐ろしい仕組みをわかりやすく表にだしたセンセーショナルな本であり、もっと話題になって然るべきである。 -
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火星を探査の対象としてではなく、そこに人類が入植する対象として見たた時、必要とされる事柄について技術的だけではなく社会的な面からの考察をまとめた一冊。
”火星にどのように行くか”という問題についてはロケット工学だったりの本で詳しく述べられていますが、本書の軸足はそれ以後に置かれています。人類が探査の拠点として火星に到達後、いかにその地に長期的に入植し、生活を成立させるために何が必要かという視点に立った時、それらを全て地球から運び込むというのは現実的ではないので、酸素やエネルギー、食糧をいかに自給するか、という技術的な問題は容易に浮かびます。
本書ではそのような側面だけではなく、火星における人間社会の統治制度や、経済の運営、人種や性別などの人口政策など社会的な側面の考察に結構な紙幅をさいています。
ようやく火星の無人探査が佳境に入り、有人探査が視野に入ってきたという現状からすると、技術的側面の考察は興味深く読めましたが、社会的側面の問題については、火星で数万人以上が生活をするステージが前提だけに、かなり遠い未来の話、という印象でした。
ただ、地球と異なり”国”という単位が存在しない世界で、数多くの人間が暮らす段階において、”火星=独立国”と言えるのか、その辺りの議論はいずれ必要になるだろうし、そのケーススタディとしては興味深い内容でした。
”なぜ火星を目指すのか”という火星探査の意義についての考察は、非常に考えさせられました。著者曰く”地球という限られた惑星に人類が閉じ込められている限り、資源が不足していると信じる者たちや、人口が多すぎると信じる者たちによって人類は危機に晒される。戦争の根本原因である有限な資源という信念体系を火星を目指すことで崩すことができる”という考え方、トランプ大統領がイランに仕掛けた攻撃を目の当りにした今、非常に説得力を感じました。 -
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ネタバレ著者は、火星協会の創設者にして会長、長いキャリアを持つ宇宙工学者であり、原子力工学の博士号や熱核融合研究の分野の経験もあるエンジニア。
本書は、火星移住を実現させるためのあらゆることについて科学的に検討され、またどのような社会になるか考察された一冊である。
火星のどこに入植すべきか、移動手段、都市の設計、電力その他資源をどのように生み出すか、どうやって収益を上げるか、など様々な課題について、数式や化学式も使って科学的に実現可能であることを示している。
この科学的な検討の部分については、自分も含めて一般的な読者にはその妥当性の判断は難しいが、叙述の科学的・論理的な進め方から納得できるものである。
一方で後半に書かれている火星の社会構造の検討については、残念ながら質が低いものとなっており、著者の熱意とは逆に、科学的には可能だが、実際に行うべきではないのではないかという疑念まで持ってしまった。
著者は、火星の社会では、労働力が不足することから、様々な技術開発、発明が必要であり、そのためには火星の都市が自由でなければならず、そのような人々が移住するので、自由な社会が出来るという。
社会構造の議論がこうした考えをベースとしているため、この部分はアメリカ人である著者が理想としている社会を描いているように思える(アメリカの西部開拓などが理想のよう)。
著者の前提とは異なり、中国でもトップクラスの技術開発や発明は行われている。また著者の議論では人口を増やす(=多くの子供を産む)ための社会構造が検討されているが、同性愛者は火星には住んではいけないのか。都市国家のような火星都市間でなぜまったく争いが起こらないと言えるのか。
前半の科学技術の議論は信用でき、火星移住計画が現実化する可能性はあると思える一方、火星の社会でも国家間の争いや独裁的な人物の出現など地球と同様の社会が作られる可能性が高いはずで、ディストピア的な社会となることも十分あり得ると感じた。
【原題】
THE NEW WORLD ON MARS : What We Can Create on the Red Planet
【目次】
第1章 火星で何を創造できるのか?
第2章 火星の概略史
第3章 火星へ到達するには
第4章 火星で資源を生み出す
第5章 火星でリッチになる
第6章 火星の移動手段
第7章 火星の都市
第8章 火星の社会習慣
第9章 火星における自由(Liberty)
第10章 発明の原動力
第11章 火星を変える
第12章 すべての国家の大義 -
Posted by ブクログ
火星に人類の一部が移住することの可能性と課題について、現実的に考察している一冊。
火星に住むと何のメリットがあるかという疑問から始まり、合計12章仕立てで未来を見据えた移住のシナリオを検証します。
火星探査の歴史は古い、しかし火星へ人類そのものが到達し定住する未来はそう遠くないと思える内容でした。
火星へ行くこと自体は難しくありませんが、そこで衣食住を完結させたうえ文明として独自の技術や文化が発展しなくては何の意味もないのです。
入植や都市計画、食料、資源、人口、経済、社会制度、スポーツ、など…地球では既に確立されているもの全てが向こうでは課題となります。
それらを解決し更に発展させるにはどうしたらよいかを本書は提案しています。 -
Posted by ブクログ
正直面白かったのだが、それはSF小説としての感想で、これが現実味があるかというと自分は感じなかった。ただ、著者がいうように火星移住は挑戦であり、現実味云々というのは本書の言いたいところではないのは分かる。
面白かった点は、火星探査の魅力だ。生命の起源に迫れるのは確かに熱い。そして、探査や移住の途中経過から生まれる新たなアイデアは技術革新を促進させるだろうというのはワクワクする。
が、やはり課題や犠牲を過小評価していないか、、楽観すぎるだろアメリカ人、、というのが個人的には感じてしまったところ。資源は有限ではなく、無限に作り出せるものだというのもテクノロジー主義極まれりといったところで、新たな技術から生まれる課題もまたあるだろうに、、と思った。
イデアが現実を作る、なるほど明確な目標とそれを信じて全速で走ることは確かに尊い。その信念は全く否定しないし自分もそうありたいが、火星移住に関してはついていけないだろう。 -
Posted by ブクログ
日本でもたまに話題になるグリーンウォッシュ、いわゆる「やっていないのにやってるふり」です。
ところがアメリカではそれどころではありません。それが儲かる仕組みとして成り立っているそうです。しかも、「意識高い系」の会社が、SDGsやESGがうまくいかなければいかないほど儲かるという悪夢のような構造になっています。
SDGsやESGに対する何か底知れぬ違和感について、少しだけ分かった気がしました。
あと、日本の資本主義はこのレベルに達しておらず、滅ぼす対象の「民主主義」もそもそも怪しいので、ただただ世界から取り残されていくだけ、と寂しい状況らしい。やっぱり、戦って勝ち取ったのと、敗戦で与えられた違いなのか?