庭田よう子のレビュー一覧
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資産を世代を超えて継承し、代々社会において尊敬される一員であるのはそれ自体簡単な事務ではない。阻害要因の一つに、子弟のモチベーションを勉励することが難しいことがある。一生食うに困らないことがわかってしまうと、無気力な子弟をビジネスに精励させることは一工夫要ることなのである。本書にも、「どんなに栄えた家族であっても、必ずジャズかなにかに入れ込んだ叔父かなにかが出現して、財産を使い尽くすようになる」といったことが書かれている。日本に伝わる洒落歌「売り家と唐様で書く三代目」と同趣旨の格言である。構造的に発生する困りごとというものは、万国共通で発生するようなのである。
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【騒ぎが収まれば、民間スパイが手玉に取るのはターゲットだけではないことが明白になる。顧客も手玉に取られるのだ】(文中より引用)
フュージョンGPSやブラック・キューブなど、近年顕著になりつつある民間"諜報"会社の活動を追った作品。著者は、ピューリッツァー賞の受賞経験も持つバリー・マイヤー。訳者は、ノンフィクションの翻訳に定評のある庭田よう子。原題は、『Spooked: The trump Dossier, Black Cube, and the Rise of Private Spies』。
トランプ元大統領のいわゆる「ロシア疑惑」を軸に展開するため、相応の背景知識がな -
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【受託者の役割が封建国家に応じて登場したように、ウェルス・マネジメントは、世界の最富裕層が創造して住まう超国家的な空間の副産物なのである】(文中より引用)
オフショア国家や現代の金融技術を駆使しながら、富裕層の金庫番を務めるウェルス・マネジャー。これまであまり光が当てられてこなかった彼/彼女らの世界の内側に入り込み、どのように資産の防衛がなされているかを詳述した作品です。著者は、本書のためにウェルス・マネジャーの資格まで取得したブルック・ハリントン。訳者は、優れたノンフィクションを多数訳している庭田よう子。原題は、『Capital Without Borders: Wealth Manage -
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富裕層の税・相続を一手に引き受けるウェルスマナジャーの実態を解説した書籍。このために著者はウェルスマネジャー研修プログラムSTEP(Socierty of Trust and Estate Practitioners) を2年間受講し、世界標準資格まで得ている。内容は超資産家の知られざる脱税の手口(合法なので租税回避と言うべきだが、庶民から見れば明らかに脱税)となぜそれが可能かを記す。要は金持ちは国際法の隙間を縫ってオフショアと呼ばれる小国(ケイマン島、ヴァージン諸島、マン島、ジャージー島等)の法律を捻じ曲げて、インチキを合法にしてしまうということだ。インチキの内容は信託・財団などをつかった租
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日本でもたまに話題になるグリーンウォッシュ、いわゆる「やっていないのにやってるふり」です。
ところがアメリカではそれどころではありません。それが儲かる仕組みとして成り立っているそうです。しかも、「意識高い系」の会社が、SDGsやESGがうまくいかなければいかないほど儲かるという悪夢のような構造になっています。
SDGsやESGに対する何か底知れぬ違和感について、少しだけ分かった気がしました。
あと、日本の資本主義はこのレベルに達しておらず、滅ぼす対象の「民主主義」もそもそも怪しいので、ただただ世界から取り残されていくだけ、と寂しい状況らしい。やっぱり、戦って勝ち取ったのと、敗戦で与えられ -
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アンドリーセン・ホロウィッツのマネージング・パートナーであり、自身もスタートアップ所属経験があるスコット・クポール氏によるVC実務に関する諸々。著者が語るように、スタートアップ創業者がバッターボックスに立てるのは数える程なのに対して、VCはバッティングセンターの如く幾度となく打席に立てるという情報非対象性が存在する(あくまで資金調達という面については)。VCがどういう力学とフローでスタートップを見ているかという視点と実務の観点で起業家にぜひおすすめ(著者は最後に「こんな本読むなんて趣味なく暇なんだね」という「たけしの挑戦状」バリのジョークを飛ばしているが、仕事する時間は確保するとしても寝る間は
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富裕層の資産管理をしている人はどういう人かについて書かれている本。
著者自身は学者でしかないのだけれど、実際に資産管理をしている人の信用を得るために資格を取ってインタビューしていたりととっても実学的な内容。
興味深かったのは、富裕層の資産管理に最も重要なのは運用成績なんかよりも依頼者のとの信頼関係で、資産防衛の相手は国が一番なんだけれど、家族や友人も多くの場合対象になって、だからこそ金庫番は家族以上の信頼がおける人が望まれるみたい。ひたすら金儲けに走るんじゃなくて信用が重視される状況を中世の騎士の関係になぞられて話がなされるさまは、時代が変わっても基本は変わらないのだなぁって思わされた。
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ネタバレvcの本
vcスタートアップに関する各種重要論点が触れられており、理解を深めるのに役立つ良著。
なかなか骨太で読むのに疲れるが、なんとが読み返して糧にする価値のある本。
メモ
・ファンダーマーケットフィット
・創業者のリーダーシップ。企業のミッションについて人材を惹きつけられる説得力のあるストーリーを生み出せるのか。
・確固とした意見を持ちながらそれにあまり拘らない創業者が好まれると言われる。
・採用せずにはいられないようにするには、10倍優れているか10倍安価である必要がある。ビタミンでなく、アスピリンに出資したいと考える。
・アーリーステージで評価されるのはチーム、製品、市場の三つ
・ベ -
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論文であるが、社会学的にインタビューを積み重ねたもので読みやすい。ウルトラハイネットワースにサービスを提供する表題のプロフェッショナルがどう活動しているのか。オフショアにて信託、財団、法人を無数に形成し、財産の匿名性、オンショア法律からの超越性を享受するUHNW。主な目的は財産の増大ではなく、隠匿、保守であるという。先進国住人は、税金特に相続税。エマージングは政府や誘拐などからの秘匿。またそのニーズに応えるように、英領ジャージー島のように、先進国側なのだが、その怪しいタックスヘイブンが成長している。
具体的なマクロ数字はなく、左寄りではあるが、実態はわかる。