オフショア国家や現代の金融技術を駆使しながら、富裕層の金庫番を務めるウェルス・マネジャー。これまであまり光が当てられてこなかった彼/彼女らの世...続きを読む界の内側に入り込み、どのように資産の防衛がなされているかを詳述した作品です。著者は、本書のためにウェルス・マネジャーの資格まで取得したブルック・ハリントン。訳者は、優れたノンフィクションを多数訳している庭田よう子。原題は、『Capital Without Borders: Wealth Managers and the One Percent』。
富裕層の税・相続を一手に引き受けるウェルスマナジャーの実態を解説した書籍。このために著者はウェルスマネジャー研修プログラムSTEP(Socierty of Trust and Estate Practitioners) を2年間受講し、世界標準資格まで得ている。内容は超資産家の知られざる脱税の手口(...続きを読む合法なので租税回避と言うべきだが、庶民から見れば明らかに脱税)となぜそれが可能かを記す。要は金持ちは国際法の隙間を縫ってオフショアと呼ばれる小国(ケイマン島、ヴァージン諸島、マン島、ジャージー島等)の法律を捻じ曲げて、インチキを合法にしてしまうということだ。インチキの内容は信託・財団などをつかった租税回避・債務回避・相続対応等である。特に信託は受益者の名前を開示する必要がなく、だれが財をもっているかをわからなくするとんでもない仕組みだ。庶民が知ってもどうすることもできないが、金持ちであれば財産を放蕩息子の3代目でつぶさないようにする恰好の方法である。今や超富裕層は国家の縛りをうけず、自身も財産も自由に海外に移動できる時代であり、自分に都合の良い法律がある国に適宜移住(書類上で)すれば良い。これを取り締まる試みはウェルスマネジャーの固い守りのため失敗の連続であり、著者の提言は、富豪対策にはウェルスマネジャーを味方にする方策を考えるべきというものである。
金持ちだけが得する恐ろしい仕組みをわかりやすく表にだしたセンセーショナルな本であり、もっと話題になって然るべきである。