リービ英雄のレビュー一覧
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英語に訳された万葉集を音読してみる。リズムがある、思った以上に心地よい。ただ、どうも解説的にならざるを得ないところもあるようで、原文より長くなるのは仕方がないだろう。リービ英雄さんの翻訳する際の苦労を述べた解説が秀逸だ。その歌ばかりでなく、万葉集全体、日本語の歌というものまで、深い理解をしたうえで翻訳しているのが分かる。その解説から浮かび上がってくるのは、まずは直截的な比喩の力強さだ。畳みかけるような柿本人麻呂の比喩は圧倒的な迫力で迫ってくる。自然現象と心の動きを結び付けて不可視なものを可視にする比喩は、唯一無二の詩歌の武器ではないか。枕詞、地名の力も見逃せない。万葉集によって、日本中の自然に
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ネタバレ著者≒エドワードは、2000年9月11日にアメリカに向かっていた。しかし搭乗中の航空機で、機長がワールドトレードセンターへの攻撃を知らせる。
The United has been a Victim.
アメリカは被害者になりました
カナダで足止めされた著者は、時間的にも存在的にも、宙に浮いたような数日間を送る。ホテルに設置されたテレビは、ニューヨークの惨状と嘆き悲しむ人々のすがたを伝える。
Please Search my brother.
あにきをさがしてください
著者は、歴史的テロ事件について、英語と日本語の二つの言語で受け止める。二つの異なった衝撃を受け、二重の感想を持ち、主に日 -
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非常に丁寧に、万葉集が英訳されている。さらに、底の深い知識に裏づけされた解説がそれぞれに付与してあり、感心した。万葉集を現代にも通用する「新しいもの」と捉えながらも、当時の世相から生み出された表現をしっかりと汲んでいる。英語の勉強にもなると同時に、難解な上代古語がむしろ英語を通してすんなりと理解できるだろう。高校生の時に読みたかった!
こういった試みが成功していることは、日本人として嬉しく思う。アニメ・オタクばかりが「日本」として輸出される昨今だが、脈々と続く日本の文化を正しく外国に伝えるという、この作者のような活動がもっと増える事を願う。 -
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ネタバレ母の死、母の不在に胸を痛めながら、友人の車ブルーバードでチベットの寺や高原を走る、筆者と思しき「かれ」の話。マニ車やタルチョ、オムマニペメフムの真言など、去年行ったネパールで出会ったチベット仏教の風景が重なった。五体投地しながら這うように進む修行者も朱色の法衣の僧侶も、きっとネパールと似たような風景なんだろう。チベットの聖地ラーサは、神ラーの土地という意味なのか。
チベットの風景には墓がない。生者が死者をおぶって山の上で鳥葬にする。その山道を、あの世とこの世を結ぶ天路と見た筆者だけれど、彼のチベットの旅全てが母の追想であり追悼であり、母の不在を前に私はどうすればいいのか、という問いかけの旅でも -
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ネットでHeveneseのラストトークを見ていて、本書に言及があったので購入。令和の語源である万葉集をほとんど知らなかったので、とても興味深く読んだ。8人の著者の、改元をきっかけに書かれた万葉集に関するエッセイ集。
鈴木大拙は「日本人の霊性」の中で万葉集を「稚拙」だとか「幼稚だ」とか、あまり良い評価をしていなかった。しかしながら本書から万葉集の他の歌集との違いがわかり、納得した。
曰く、万葉集には中近東的な雰囲気がある、とか、万葉集は文字ではなく大和言葉の響きを口にうたうための歌集である、とかなどと言うように書かれていた。また万葉集には代作という表現があるとの事。これについては日本人が原作を -
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万葉集を英語にしようという’無謀な’試みの本。
無謀な、というのは著者も感じており、7世紀の日本語独特の表現や感性を現代英語にすることの限界を幾度となく論じており、それを通して原文の美しさを伝えている。
英語はどうしてもストレートになりがち、説明がちで、「久方の 天より雪の 流れ来るかも」を「Is this snow come streaming from distant heavens?」と疑問形にしたり(p69)、「不尽の嶺を 高み恐み」を「Because of Mt. Fuji’s lofty heights」としたり(p43)、そうしたところから古文の、そして和歌の美しさを改めて感じさ -
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文学や編集に携わる8名の手による万葉集エッセイ集、といえばよいか。
出だしから中西進氏による『旧約聖書』と『万葉集』のリンクが展開され、度肝を抜かれる。良き文学とはほかの文学と共鳴するものとはいうが、まさかそんなところと響き合うとは。しかも万葉集の第一人者の一人中西進氏からそんな。おみそれしました。
川合康三氏の「山上憶良と中国の詩」、高橋睦郎氏の「いや重く謎」あたりは若干硬めの印象を受けるかもしれないが、基本的には一流の文化人たちによる平易な万葉集エッセイである。いや平易と言ったが完全に万葉集知りませーん何書いてあるんですかーな人には向かないかもしれない。ちょっとは齧った人向け。だが、ちょっ -
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文学作品をまともに読むなんて、相当久しぶりでした。
先輩に誘われて参加している読書会という名の飲み会で、課題図書になっていたのに、会には間に合わず。そんで、ようやく読み終えました。
アメリカ人が日本語で書いた小説ということで話題になったそうです。
日本人でも使わないような語彙も繰り出していて、日本文学が「開国」を迫られた、みたいな。
しかし、ことはそう単純ではないようで、主人公=作者はアジアでの生活が長いユダヤ系アメリカ人だと。日本人の血は入っていないけど、生粋?のヤンキーでもない。
こういうのを「ディアスポラ」とかいうんでしたかね?
とにかく、どこに行っても居場所がない感じに溢れた小説です。 -
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
「万葉集にたどりついたとき、古い日本語というよりも、とても新しい文学に出会ったという不思議な感じがした」英語を母語としながら、日本語作家として現代文学をリードする作家の感性が、英語という鏡に古代日本語の新しい姿を映し出す。
全米図書賞を受賞した名訳から選りすぐった約五〇首の対訳に、作家独自のエッセイを付す。
[ 目次 ]
序 天皇というアイデンティティ
1 ちいさな「くに」の雄大な想像力
2 イメージの醍醐味、それは「映像」に近い
3 世界第二の都市の、おおらかな「文明」
4 太子の嘆き。日本語の根元的な感情は伝わるのか
5 枕詞は、翻訳ができるのか
6 柿本人麿、世界の古代文