リービ英雄のレビュー一覧

  • 星条旗の聞こえない部屋

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    作者リービ英雄が自分を重ねて描いていると思われる17歳の主人公ベン・アイザックが、自分を囲う領事館の壁を越え、言葉の所有権を手放そうとしない「日本人」の壁を越えて、「しんじゅく」の街で日本語を獲得していく経験を、生き生きと、かつ細やかに綴った爽やかな印象の一冊。そのような経験をしてこそ、もう一つの言葉を手に入れることができるのだろう。それと対照的に、一つの言葉のなかに閉じ籠もる日本人の姿も興味深いが、吉本隆明を読んでいると思われる「ますむら」の描写がもう少し掘り下げられていれば、いっそう面白かったろう。今は失なわれた新宿の姿もここにはある。

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    2011年01月30日
  • 千々にくだけて

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    授業で見た9.11ドキュメンタリー映画を思い出した。「百十階の窓からOLが飛び降りている」。言葉と国と民族と、そして戦争。

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    2009年10月04日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    ゴー・ホーム。国って何だろう、と思ってしまいました。日本という国は目に見えない・実在しない観念上のもので、でもわたしたちは「日本人」として保障され縛られて生きている。ヘレン・ケラーが「ウォーター」という言葉を知ったように日本語を知った主人公。鏡に映った自分を見て「外人だ」と思ってしまう主人公。じゃあ、「日本」はどこにあるんだろう。

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    2009年10月04日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    日本人じゃないけど日本語で書くリービさん。ただそれだけのこと。
    なのに、「日本語が普通」なんて偉そうに思ってしまう自分もいる。

    ヘレン・ケラーの「ウォーター」がはじめて分かった時のように日本語が分かったり
    鏡を見て「あ、日本人じゃない」と日本語で思ってしまう主人公のアメリカ人青年。
    なんとなく、分かる気がしなくもない。

    舞台が60年代でなく、今の時代だったらこの話はどう変わるのだろう。

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    2009年10月04日
  • 英語でよむ万葉集

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    アメリカ出身の日本文学作家、「渡来人」リービ英雄が独自の英訳を添え、日本最古の詩のアンソロジーを語る。地名が示していく都の変遷=時間の変遷、イメージの力、枕詞という呪文を翻訳すること、天才人麿、など九章、二百余頁。
    「英語で読む」という題ではあるが、実際には「外部の視座から読む」というのが本著の基本態度。その謙虚な探究心によって見出された万葉の新鮮さは、穏やかな驚きをともなって、千二百年後の現代を生きる日本人に届いて来る。
    散文家であるリービの英訳は音・韻律の越境を意識したものではないし、翻訳可能性についての判断もやや楽観に傾くが、人類学的普遍性とでもいうべきものを万葉の歌に求める、という姿勢

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    2009年10月04日
  • 天路

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    自己の生育歴に照らしながら、新宿の暮らしから、チベットの旅へ、祈りと遊牧の暮らし、わからない文字や、言葉と格闘しながら、天空の路を友人とめざす。
    不在という言葉が何回も出てきた。
    人は生まれてどこへいくのか。
    不思議な感覚の本。

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    2023年02月19日
  • 千々にくだけて

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    表題を含む短編4作。9.11を日本に住居を構え日本語の作家として活躍する著者の目で語る自伝的作品として非常に稀有な内容。そこに秘められた想い、感じ方の表現は繊細であるため、恐らく一般的な日本人である自分には理解が出来なかった部分が相当にあると感じた。

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    2022年05月08日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    日本人の血を一滴も持たない作者、リービ英雄が母語を離れ日本語で書いた小説。(リービ英雄は「万葉集」を英訳したことでも有名。)しかも「あとがき」によると、スタンフォード大学にいる時に書いたものだそう。

    日本語以外を母語とする作家によって書かれた日本語の小説といえば、近年では第139回芥川賞を受賞した楊逸なんかが思い起こされる。その時に、私はいくらかの驚きと違和感をもってその事実をうけとめた気がする。こうした違和感は、私が(自身の読書経験を通して)無意識のうちに、「日本の小説は日本語を母語とする作家によって書かれるもの」という先入観を抱いていたという事実を暴露するものであった。

    母語以外で

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    2013年08月05日
  • 千々にくだけて

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    千々にくだけてについて。
    主人公エドワードはヘビースモーカーのために、バンクーバー経由でニューヨークに帰ることにする。バンクーバー経由のほうが20分早く地上に降りることができるから。ニューヨークへ戻る岐路、少しずつ少しずつアメリカ人へと間隔をシフトしていた彼はバンクーバーの空港で足留めされる。アメリカが被害者になった。9.11だった。中途半端な場所で日本人でもない、アメリカ人でもない中途半端な存在になる。彼自身がつながることができたのは辛うじて電話線だけだ。電話の向こうにいるのはアメリカ人である母と妹。それから東京にいる静江。エドワードはどちらにもなりきれないままアイデンティティーは日本だと思

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    2013年07月30日
  • 千々にくだけて

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    9.11同時多発テロのとき、たまたまニューヨークに向かっていた作者は、中継地のカナダ・バンクーバーに足止めされたまま1週間ほどをすごすはめになる。その間の心象風景を坦々と静かな筆致で綴った作品。

    誰彼が発した、あるいは作者の心に浮かんだ英語のフレーズが頻繁に出てきて、その英語と日本語の差異を感じる著者のかすかな心の動きが何度も綴られている。あまりに非日常的な状況のなかで、おそらく著者が日常的に感じている言葉をめぐるかすかな違和感。カバージャケットに記されている英語は「broken, broken into thousands of pieces」。つまり「千々にくだけて」。崩落する世界貿易セ

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    2012年10月04日
  • 千々にくだけて

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    「勿論、ドイツの言葉も歴史、文化も愛している。でもドイツには住めない。余りにも長く離れ過ぎた。」と、悲しそうな顔で、先生は在外独人教育の為、ボリビアへと去った。一方の私は生来のデラシネ気質故か、子供の頃から、国家とか宗教、アイデンティティが一体何を意味するのか理解できなかった。本を読み、頭では理解したつもりだが、未だに皮膚感覚としては分らない。越境作家と呼ばれる著者なら、何かを教えてくれるかと手に取る。誰でもない者として、どこでもない場所を彷徨歩く浮遊感は小説として素晴らしい。但、ここにも答えはなかった。


    『S大学を途中で退学して、翻訳家になって、両親の反対を押し切り、東京に定住した。定

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    2012年07月23日
  • 英語でよむ万葉集

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    ネタバレ

    万葉集は、つまみ読みしかしていないのだけれど。
    この方のすごいところは、母語が英語であるのに、万葉集を読みこなし、理解していらっしゃる。
    その解釈に、唸る時がある。
    山上憶良の歌の解説などは、最高だと思う。

    英語に訳された万葉の歌を、もう一度、大和の言葉で読み返す。

    よきかな。

    ちょっと、難しいのは、事実です。

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    2011年05月19日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    日本人の血を一滴も持たない作者、リービ英雄が母語を離れ日本語で書いた小説。(リービ英雄は「万葉集」を英訳したことでも有名。)しかも「あとがき」によると、スタンフォード大学にいる時に書いたものだそう。

    日本語以外を母語とする作家によって書かれた日本語の小説といえば、近年では第139回芥川賞を受賞した楊逸なんかが思い起こされる。その時に、私はいくらかの驚きと違和感をもってその事実をうけとめた気がする。こうした違和感は、私が(自身の読書経験を通して)無意識のうちに、「日本の小説は日本語を母語とする作家によって書かれるもの」という先入観を抱いていたという事実を暴露するものであった。

    母語以外で

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    2010年09月14日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    万葉集で興味をもったひと。
    ひとを先に知っているので変な感じだった。こころの内側にもぐりこんでいるようだ。ドスたんのあとだからかなあ。ちょっと内側すぎる。近い近ーい!!
    細い、白い、階段を駆け下りる。不安だなあ。しかしすごいひとだ〜。窓いっぱいに星条旗がはためいているイン横浜っていうのはすごいイメージだ。

    安藤さんかっこいい。異文化に取り込まれていくときの高揚感と、やっぱりだめだという孤独も。

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    2009年10月04日
  • 英語でよむ万葉集

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    暇つぶしに・・と買ってみた本。万葉集自体読む機会がない(しかも古語)うえ、英語・・ということで、無謀だと思いましたが、読んでみると解説が丁寧で、日本語で読む味わいと、英語で読む斬新さを楽しむことができました。でも古語を英語に直すのは難しいのでわないかとも思いました。まぁ、こんな表現でも合うね・・というカンジで読みました。

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    2009年10月04日
  • 星条旗の聞こえない部屋

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    7点

    半分ポーランドの系で半分ユダヤ系で幼いころは中国住んでいて英語を話す主人公が帰る家」に選んだのはアメリカでもイスラエルでもなく日本でした。「帰る家」のない主人公が「家」にしようと決めた日本での言葉の壁・文化の壁や父親との壁を乗り越えようとする主人公に思わずエールを送りたくなるような作品です。

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    2009年10月04日