寺尾紗穂のレビュー一覧

  • あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々

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    第一次大戦から第二次大戦の間、日本が植民地支配していたパラオの状況を、中島敦らのテキストを手掛かりにしながら、現地での聞き取りの様子も交えて描き出していく。素朴な紀行文のような体裁を取っているのでとても読みやすいが、その一方で、様々な立場への目配りとそれを踏まえた下調べが周到に行われていることもうかがわせる文章になっている。現地のパラオ人、チャモロ人、内地からの移民、沖縄や朝鮮半島からやって来た人、軍人、役人、研究者、文人、労働者、慰安婦、それらの人々の様々な思いをできるだけそのまますくいあげようとする著者の姿勢に共感する。

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    2019年02月11日
  • 原発労働者

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    ここに収録されているのは、たくさんの原発労働者の中のほんの数人の語りでしかない。だけど個人の、生の体験からしか捉えられないものがある。

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    2018年12月29日
  • 原発労働者

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    著者の寺尾紗穂(1981年~)は、元シュガー・ベイブのベーシスト・寺尾次郎を父に持つ、シンガーソングライター、エッセイスト。東京都立大夜間部卒業後、東大大学院に進み、修士論文が『評伝川島芳子 - 男装のエトランゼ』として文春新書より刊行され(2008年)、また、様々なウェブや新聞等でエッセイを連載する異色のキャリアを持つ。
    著者が本書を執筆したのは、学生時代にたまたま山谷の夏祭りに行ったことをきっかけに、自ら主宰する音楽イベントでホームレスの自立支援をサポートするようになり、更に、原発の現場の労働者の少なからぬ人々が山谷や釜ヶ崎のようなドヤ街から流れてきたことを知ったことによるのだという。

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    2017年09月09日
  • 原発労働者

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    原発を有する我がまちの市有地に、3号炉の建設作業員さんの飯場があり訪ねたことがある。といっても彼らと接触したわけではなくて、その飯場横の倉庫で仕事をしつつ傍目から見ていたに過ぎんが、昼間から麻雀牌の音が響いていた。その近くの港には、いかにも場末の雰囲気漂う気に入りの居酒屋があり、かつては流れの作業員と地元漁師が酒の勢いで絶えず喧嘩していたという。これまでは「ひとごと」であったそんな諸々も、紗穂さんのこの本で「わがこと」に近づいたやに感じる。今でも廃炉と再稼働炉の工事で3千人近い下請けが入っている我がまちの原発。原発労働者と打ち解けて話せれば学ぶことは多いだろうけど、現職でありのままを語ってはく

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    2016年05月20日
  • 原発労働者

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    原発の話題は昨今少なくなりましたが、それ故に人々の記憶から薄れている今、このような書籍の存在は大きいのではないでしょうか。

    一般的な、原子力について賛否両論を唱えたものとは違って、その現場で作業にあたっていた人々の声を纏めたドキュメンタリーはリアルさと報道では知りえない事実が伺えます。

    原発に無関心の方にも、お勧めできる一冊。

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    2015年09月05日
  • 原発労働者

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    東日本大震災以前の「平時における」原発というのは、どのような労働環境で、どんな作業によって運営されているのか、という視点から、原発内の工事請負業者や、中央操作室のオペレーターなどからの証言をまとめた本。ある程度予想はしていたけれど、ここまで労働者の健康や、安全を犠牲にしなければ立ち行かないプラントなのかと恐ろしくなった。「いくら自動化しても、どうしても高線量の現場に人間が入らないと設置できない部品があり、そういう時は被ばく量測定用メーターは外して作業する」、「ボヤが発生しても水をかけたり消火剤を噴霧すると記録に残るので、燃えるものを遠ざけて自然鎮火を待つ」、「被ばく管理区域にはトイレがなく、ど

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    2015年08月06日
  • 彗星の孤独

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    ネタバレ

    ようやく。『高橋源一郎の飛ぶ教室』で紹介されて、リストに入ってた本。すらすら読んでしまえるタイプの本ではなかった。むしろ、考えながらゆっくり読むべき本だったように思う。
    寺尾紗穂さんの曲は、テレビ番組のテーマに使われてる一曲しか知らないので、時々、YouTubeで音源を拾ってきて、流しながら読んだ。
    元ミュージシャンで後に翻訳家になったお父さんのことは、源一郎さんの番組で聞いてたし、あの時、紹介されたのもそのお父さんとのことを書いた部分だったような気がする。
    だが、それが出てきたのは、ほぼ最後。それまでは、彼女が各連載で綴ってきたことをまとめたものがメイン。その中には、彼女の曲風とは真逆の(?

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    2025年10月28日
  • あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々

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    著者の芯にあるのは戦争の波に翻弄された個々の人々の人生を聞いて感じたい、残したいという意志。
    聞き取りが中心の「日本人が移民だったころ」よりはややエッセイ色が強く、また著者が大きく影響を受けた中島敦の足跡を辿るというサブテーマもあるので重くて暗いばかりにはならない。

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    2024年04月29日
  • 彗星の孤独

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    とても細やかで解像度の高い眼差しの記録。グロスに宿る真実性もあれば、一人一人の言葉に表出するリアリティだってあるということ。

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    2022年02月19日
  • あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々

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    中島敦の「南洋通信」を読んで戦前戦中の南洋に興味を持ったという点は著者と私とで入り口が同じなのかもしれない。ただ、著者は、中島敦が帰国した後の戦時下のパラオについても現地を訪れ今も残る日本語話者に丹念に取材している。パラオではペリリュー島だけではなくアメリカ軍の侵攻で島民が避難しジャングルの中で飢えを経験したこと、爆撃などで島民も含めて犠牲者が出たこと、日本軍が島民虐殺を(本気度はともかく)計画したことなど、殆ど知らないかったことを知ることができた。それにもかかわらず、パラオの原住民と日本からの移民は農地を巡る争いがあまりなく比較的うまく共存できていたこと、日本統治前に発展した社会的制度がなか

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    2020年11月28日
  • 原発労働者

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    なかなか読むのが進まない本だった。
    自分の思いを少し強調しているような気がした。その部分で少し引っかかりを感じる。
    原発の労働現場は過酷なんだと思う。放射線がどれだけ体に悪いのかがハッキリしていないのだと思う。

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    2017年07月11日
  • 評伝 川島芳子 男装のエトランゼ

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    ネタバレ

    [ 内容 ]
    日中のはざまで妖しく乱舞し、無器用にもがき、遂には刑場の露と消えた「男装の王女」川島芳子。
    「武士道精神が消えたから、日本は滅びた」という最後の指摘は何を意味する。

    [ 目次 ]
    1 誕生から幼少時代(義和団事件と二人の父 日本での幼少時代)
    2 復辟と養父(川島家と芳子 「ジャンダーク」と「支那」 孤児として 恋愛騒動と断髪 断髪男装の背景)
    3 マス・メディアの中の川島芳子(『男装の麗人』と満洲-小説、映画、舞台 男装の意味するもの-新聞記事を中心に)
    4 詩歌と裁判(皇后脱出から定国軍まで 「親善」への憂い 逮捕と裁判 芳子の「武士道精神」そこに読み取られたもの)

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    2011年04月16日
  • 評伝 川島芳子 男装のエトランゼ

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    こないだの特番でで川島芳子、李香蘭、テン・ピンルーの特集が
    あって、以前から気になってた李香蘭見たさに見始めました。
    川島芳子のことは全然知らなかったけど「男装の麗人」の一言で
    オスカル好きとしては興味津々。
    日本と中国の間で時代の波に翻弄されて散っていった人です。
    時代的に広田さんとかぶる頃で興味深く読ませていただきました。

    川島さんと同じくらい個人的には著者も気になる存在。
    彼女は東大の大学院卒で、卒論も修士論文も川島芳子を取り上げ、
    修士論文がこの本の元だそう。しかもシンガーソングライターとして
    メジャーデビューされてます。
    なんたる才女。

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    2009年10月07日
  • 評伝 川島芳子 男装のエトランゼ

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    《読んだ時期:2008年4月》
    気になる女性・川島芳子。男装の麗人と言われた彼女はどのような生き方をしたのかを知りたくて読みました。
    なんだか自分の中で噛み砕くのが難しくて、読むのに珍しく時間を要した。
    川島芳子は中国人でも日本人でもなく、亜細亜人だったと思えた。激動の時代の渦に巻き込まれるかのような人生を、彼女なりにまっとうしたのではないだろうか。
    本位な結果が出なくても、生き方に川島芳子という人の信念が感じられた。

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    2009年10月04日