寺尾紗穂のレビュー一覧
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著者の寺尾紗穂(1981年~)は、元シュガー・ベイブのベーシスト・寺尾次郎を父に持つ、シンガーソングライター、エッセイスト。東京都立大夜間部卒業後、東大大学院に進み、修士論文が『評伝川島芳子 - 男装のエトランゼ』として文春新書より刊行され(2008年)、また、様々なウェブや新聞等でエッセイを連載する異色のキャリアを持つ。
著者が本書を執筆したのは、学生時代にたまたま山谷の夏祭りに行ったことをきっかけに、自ら主宰する音楽イベントでホームレスの自立支援をサポートするようになり、更に、原発の現場の労働者の少なからぬ人々が山谷や釜ヶ崎のようなドヤ街から流れてきたことを知ったことによるのだという。
本 -
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原発を有する我がまちの市有地に、3号炉の建設作業員さんの飯場があり訪ねたことがある。といっても彼らと接触したわけではなくて、その飯場横の倉庫で仕事をしつつ傍目から見ていたに過ぎんが、昼間から麻雀牌の音が響いていた。その近くの港には、いかにも場末の雰囲気漂う気に入りの居酒屋があり、かつては流れの作業員と地元漁師が酒の勢いで絶えず喧嘩していたという。これまでは「ひとごと」であったそんな諸々も、紗穂さんのこの本で「わがこと」に近づいたやに感じる。今でも廃炉と再稼働炉の工事で3千人近い下請けが入っている我がまちの原発。原発労働者と打ち解けて話せれば学ぶことは多いだろうけど、現職でありのままを語ってはく
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東日本大震災以前の「平時における」原発というのは、どのような労働環境で、どんな作業によって運営されているのか、という視点から、原発内の工事請負業者や、中央操作室のオペレーターなどからの証言をまとめた本。ある程度予想はしていたけれど、ここまで労働者の健康や、安全を犠牲にしなければ立ち行かないプラントなのかと恐ろしくなった。「いくら自動化しても、どうしても高線量の現場に人間が入らないと設置できない部品があり、そういう時は被ばく量測定用メーターは外して作業する」、「ボヤが発生しても水をかけたり消火剤を噴霧すると記録に残るので、燃えるものを遠ざけて自然鎮火を待つ」、「被ばく管理区域にはトイレがなく、ど
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ネタバレようやく。『高橋源一郎の飛ぶ教室』で紹介されて、リストに入ってた本。すらすら読んでしまえるタイプの本ではなかった。むしろ、考えながらゆっくり読むべき本だったように思う。
寺尾紗穂さんの曲は、テレビ番組のテーマに使われてる一曲しか知らないので、時々、YouTubeで音源を拾ってきて、流しながら読んだ。
元ミュージシャンで後に翻訳家になったお父さんのことは、源一郎さんの番組で聞いてたし、あの時、紹介されたのもそのお父さんとのことを書いた部分だったような気がする。
だが、それが出てきたのは、ほぼ最後。それまでは、彼女が各連載で綴ってきたことをまとめたものがメイン。その中には、彼女の曲風とは真逆の(? -
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中島敦の「南洋通信」を読んで戦前戦中の南洋に興味を持ったという点は著者と私とで入り口が同じなのかもしれない。ただ、著者は、中島敦が帰国した後の戦時下のパラオについても現地を訪れ今も残る日本語話者に丹念に取材している。パラオではペリリュー島だけではなくアメリカ軍の侵攻で島民が避難しジャングルの中で飢えを経験したこと、爆撃などで島民も含めて犠牲者が出たこと、日本軍が島民虐殺を(本気度はともかく)計画したことなど、殆ど知らないかったことを知ることができた。それにもかかわらず、パラオの原住民と日本からの移民は農地を巡る争いがあまりなく比較的うまく共存できていたこと、日本統治前に発展した社会的制度がなか
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ネタバレ[ 内容 ]
日中のはざまで妖しく乱舞し、無器用にもがき、遂には刑場の露と消えた「男装の王女」川島芳子。
「武士道精神が消えたから、日本は滅びた」という最後の指摘は何を意味する。
[ 目次 ]
1 誕生から幼少時代(義和団事件と二人の父 日本での幼少時代)
2 復辟と養父(川島家と芳子 「ジャンダーク」と「支那」 孤児として 恋愛騒動と断髪 断髪男装の背景)
3 マス・メディアの中の川島芳子(『男装の麗人』と満洲-小説、映画、舞台 男装の意味するもの-新聞記事を中心に)
4 詩歌と裁判(皇后脱出から定国軍まで 「親善」への憂い 逮捕と裁判 芳子の「武士道精神」そこに読み取られたもの)
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こないだの特番でで川島芳子、李香蘭、テン・ピンルーの特集が
あって、以前から気になってた李香蘭見たさに見始めました。
川島芳子のことは全然知らなかったけど「男装の麗人」の一言で
オスカル好きとしては興味津々。
日本と中国の間で時代の波に翻弄されて散っていった人です。
時代的に広田さんとかぶる頃で興味深く読ませていただきました。
川島さんと同じくらい個人的には著者も気になる存在。
彼女は東大の大学院卒で、卒論も修士論文も川島芳子を取り上げ、
修士論文がこの本の元だそう。しかもシンガーソングライターとして
メジャーデビューされてます。
なんたる才女。