【感想・ネタバレ】あのころのパラオをさがして 日本統治下の南洋を生きた人々のレビュー

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Posted by ブクログ 2018年01月26日

2年前に「南洋と私」を読み、とても良かったので、今回この本を読むのはとても楽しみだった。

"国境を越えて友情をはぐくまなければ、戦争の本当の愚かさなどわからないのかもしれない。味方が死んだ、家族が死んだ、あの国に攻撃された、そうした次元で戦争をとらえる限り、戦争は人によっては「必要悪」で...続きを読むあり、あるいは二度と降りかかってほしくない天災のようなものにとどまってしまうのではないか。国籍や民族という違いを超えて人と人が信頼しあえたとき、初めて人は戦争について「私たちは何をしているのか」という、根本的な問いに辿り着けるのではないか。" 146ページ


"他者との会話の中から、その感覚を共有していくこと、思考と感覚の両輪で事実を捉えていくこと。難しいけれど、私が戦争とそこに生きた人々を描くために論文ではなくノンフィクション・エッセイのような形を選んだのは、論文では表現しにくい感覚の部分を常に自分に引き寄せておきたいからかもしれない。" 160ページ


なんかものすごく好きなのだ。この好きさは何なのか。
対象との接し方、中島敦の絡ませ方、筆者の思い、文章そのもの…
思考力も感覚もとても優れた人なのだと思うが、まるで一緒に取材して回ってるような気安さ、親近感が感じられて、共感しやすい。というかほぼ同意してしまう。
よくぞこの2作を書いてくださったと感謝する。音楽活動の方は全然知らないが、お忙しいだろうけど、次の「ノンフィクション・エッセイ」楽しみだ。

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Posted by ブクログ 2017年10月09日

第二次世界大戦のパラオを今追いかける。誠実さがそのまましんどさになる。論文にもならずノンフィクションにもなにか中途半端なぎしぎしとした言葉と堂々巡り。ともかく読ませる力はある。

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Posted by ブクログ 2019年02月11日

第一次大戦から第二次大戦の間、日本が植民地支配していたパラオの状況を、中島敦らのテキストを手掛かりにしながら、現地での聞き取りの様子も交えて描き出していく。素朴な紀行文のような体裁を取っているのでとても読みやすいが、その一方で、様々な立場への目配りとそれを踏まえた下調べが周到に行われていることもうか...続きを読むがわせる文章になっている。現地のパラオ人、チャモロ人、内地からの移民、沖縄や朝鮮半島からやって来た人、軍人、役人、研究者、文人、労働者、慰安婦、それらの人々の様々な思いをできるだけそのまますくいあげようとする著者の姿勢に共感する。

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Posted by ブクログ 2020年11月28日

中島敦の「南洋通信」を読んで戦前戦中の南洋に興味を持ったという点は著者と私とで入り口が同じなのかもしれない。ただ、著者は、中島敦が帰国した後の戦時下のパラオについても現地を訪れ今も残る日本語話者に丹念に取材している。パラオではペリリュー島だけではなくアメリカ軍の侵攻で島民が避難しジャングルの中で飢え...続きを読むを経験したこと、爆撃などで島民も含めて犠牲者が出たこと、日本軍が島民虐殺を(本気度はともかく)計画したことなど、殆ど知らないかったことを知ることができた。それにもかかわらず、パラオの原住民と日本からの移民は農地を巡る争いがあまりなく比較的うまく共存できていたこと、日本統治前に発展した社会的制度がなかったために日本統治が公学校教育などを通じて受け入れられやすかったことが、現在まで続く親日的な心象や日本文化の残り香(現地にはパラオ語と日本語がまざった歌謡曲などもあるそうだ)がある。エッセイ風よりももう少しまとまった記述も読みたい気がしたが、それでも学ぶことの多い一冊だった

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