大庭みな子のレビュー一覧
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3作入ってるけど表題作の「三匹の蟹」よりも「構図のない絵」「虹と浮橋」の連作の方が好きだった。
特に1作目が好き。
エドパートを読みながら自分がなぜ子供を持ちたくないと思っていたのかを改めて思い出してしまった。子供の頃の自分の嗜虐性。いつの間にか抑えることが当たり前になって今や全然表層に浮かんでこないそれが子供を持つことで浮かび上がってくることが怖くて子供を持てないなと思っていたんだった。エドは人種的悩みを元にしてるから完全に一緒とは言い難いけど。このパートがとてもわかるし好きだった。
続くサキのパートもわかる…と思ってしまうので自分だめだ〜となった。
ネオンの赤さと最後に提示される緑と。 -
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ドラマで津田梅子の作品を観てから、津田梅子という人物についてとても興味が湧き、この本を読んだ
小さい頃に父の期待と共にアメリカへ行き、英語やアメリカの文化を身につけて帰国した梅子
帰国後はキャリアが用意されているかと思いきや、時代は変わっていた。同じく留学した捨松は結婚し、他のメンバーも結婚していった中、梅子は女子教育への使命感を常に感じており、結婚はせず私立の学校を建設する
今女性も教育を受けられるのは当たり前だが、このような先駆者がいたからこそその速度も早まったのではないかと感じた
質素な生活を好み、人のために尽くした梅子は本当にすごい人だと思う -
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老荘思想や神話の世界観などが引き合いに出されるが、あまりそういうものにとらわれないで読んだほうがいいかもしれない。隣同士の家に住む幼なじみの男女が互いの連れ合いを交通事故でなくすのだが、実は死んだ者たちが不倫関係にあったことがわかり、当の彼らもその関係を反復するように性愛の仲になってゆく。筋は単線的ではなく、喚起力の強いイメージや言葉とともに複雑に絡み合っていて、途中で挿入される入れ子の小説が全体に深い暗示を与えている。とにかく主人公の女の徹底的に冷めた感じがうっとりするほどすばらしく、女性という性の最も深いところの孤独と意地悪さを体現していると思う。
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沖方丁の「はなとゆめ」を読んでるうちに、元祖をも一度読みたいなーと思って、読み始める。全章ではないけど、有名な章を網羅し、空気を伝えつつ、響きやすい言葉を使って訳した読みやすい現代語訳でした。
改めて、千年経っても人は変わらないものだと思わせられる。美しさを愛でること。いらっとすること、いたたまれないこと、カッコ悪いと思うこと。男女の機微。男と女がわかりあえないカンジ。権力争い。どれをとっても、根本的に大差なくて、面白い。なにもかも否定せずに、明け透けに、カラッと紡いでしまう潔さ。豪気な女がいたもんだ。やっぱり枕草子はいくつになっても面白いのがすごい。 -
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『淋しいアメリカ人』という昔江角マキ子を嫁いびりした作家の本を思い出す。「三匹の蟹」の主人公が参加したがらない「ホーム・パーティ」というのはその象徴的な場かもしれない。「淋しいアメリカ人」は「淋しい日本人」を呼ぶ。ただしこの著者に限っては、異邦に身を置く日本人としての淋しさのうえに「誰にも本当のことを言えない」母としての、「イマジネーションがありすぎる」妻としての、「どうにもならないで男にすがりつくしかない」女としての淋しさが重なっているらしい。その重なりがなければここまで冷めた女性の肖像はつくれないだろう。それにしても「首のない鹿」の色彩のイメージはすさまじすぎる。
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ネタバレ「徒然草」に続いて、古典随筆の名作「枕草子」を読んだ。もちろん、現代語訳。。
徒然草と同じく、「島は」「虫は」「滝は」など、私には面白さが理解できない段は多くあったけれど、ここに出てくる固有名詞を見ると、その当時の貴族社会の狭さを感じることが出来た。
枕草子で面白かったのは、例えば「八十二段 頭の中将、藤原斉信さま」
清少納言と頭の中将のやり取りは、正に知能と知能のぶつかり合い。漢詩や和歌の知識を使って、ちょっとしたひねりも加えてのやり取りは興味深い。清少納言の知識の深さ、聡明さが感じられる。
紫式部は、清少納言のことを「偉そうに賢さをアピールする嫌な女」と言っているけど。。
偉いと -
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あの頃(1980年代)の雰囲気が漂う小説ですね、女性たちが「妻」であることに憤懣や、やるせなさを思いながら、思い切っての飛翔は怖いとグラグラふにゃふにゃしている。つまり「妻たちの思秋期」や「翔ぶのが怖い」という言葉が流行りましたね。
そのことを上品に(おぼろげに)かつ果敢に表したファンタジー小説かと。神話の天智天皇、天武天、皇額田女王の世界に題材をとりながら、隣家の男兄弟と兄を失い家付き娘となって婿を迎えた女性とのご近所での恋愛模様。それは神話の世界にもあるし、『嵐が丘』にもあるし、古典的なみやびの世界でもあるので「谷崎潤一郎賞」というのもむべなるかな。 -
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枕草子は平安中期に中宮定子へと仕える清少納言によって書かれたものです。日本最古の随筆であり、方丈記や徒然草と並んで三大随筆として有名です。"春はあけぼの"の始まりで知られることも多い枕草子は風流で女性らしく、およそ300段あまりの章段から構成されています。
色彩の美しさや音の流れがとても洗礼されており、遠い昔のことながら当時の様子をありありと思い浮かべることができました。「かわいらしいもの」や「ばつのわるいもの」のように「~もの」として清少納言が徒然に書いた段では私も思わず笑って頷くようなものがあったり、才気溢れる彼女と宮廷の男性とのやり取りは面白かったりと楽しん