服部龍二のレビュー一覧
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日本における国際政治学の泰斗・高坂正堯の本格的評伝。高坂の主要著作、歴代首相のブレーンとしての活動を中心に生涯を辿り、戦後日本の知的潮流、政治とアカデミズムとの関係を明らかにしている。
高坂の主要著作を体系的に総覧しており、高坂の思想・学問の全体像や変遷を理解するのに適している。『国際政治』で説かれる「各国家は力の体系であり、利益の体系であり、そして価値の体系である」との指摘をはじめ、高坂の考えは、現代においても古びておらず、示唆に富んでいると感じた。
高坂は、理想主義やマルクス主義の全盛期に「現実主義」の立場から論壇に参画し、その後冷戦終結を契機として論壇の主流となる「現実主義」の先駆者とな -
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1972年の日中国交正常化交渉についての新書。日本側のメインプレイヤーだった田中角栄と大平正芳に加えて、橋本恕アジア局中国課長、栗山尚一条約局条約課長といった当時の外務省官僚たちのオーラルヒストリーを通じて語られている。懐かしの「プロジェクトX」のような内容で、いささかジャーナリスティック的な叙述であるが、抜群に面白かった。
日中国交正常化前夜
1971年7月15日の「ニクソン・ショック」により、アメリカは対中政策を大きく転換させた。日本への通告はニクソンの会見のわずか20分前であり、完全に蚊帳の外に置かれることになった。当時のアメリカ大使だった牛島信彦の回顧によると、当時の繊維貿易摩擦によ -
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現実主義者・高坂正堯の若き頃からの秀才ぶり、父・正顕からの伝統をひく京都学派としての顔。そして東大のこれまた若き秀才・坂本義和との対話が面白い。理想主義者・坂本の高坂評は「空襲を経験していないため、戦争の苦労を知らない高坂」とのこと。高坂の坂本や丸山眞男への丁寧な態度は頭が下がるところ。そして晩年62歳で癌のため死去した際の弟・節三や母との別れのシーンが感動的だった。そして多くの弟子たちに愛された様子も。私には若き日の佐藤栄作首相のブレーンとしての活躍が御用学者に見えたものの、この人は主張すべきことをしっかり主張していた信念の人だった。文明史家としてのこの人の情熱を感じ、伝説的な巨人であった素
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「大統領的首相」を標榜して昭和の最後に約5年間首相を務めた中曽根康弘の評伝。中曽根へのインタビューや中曽根の著書・日記をベースとしつつも、同時代の他の政治家による中曽根に対する評価を記した史料等も用いながら、中曽根を現代日本政治史の中に位置付け、その半生をできる限り客観的に描いている。
中曽根の半生をたどることは、まさに戦後の日本政治史をたどることであると感じた。パフォーマンス重視や風見鶏という批判は、一面では当たっていると感じたが、傍流の小派閥の長として、首相にまでのぼりつめようと思ったら、ある程度は仕方のないことだったのだろうとは思う。
中曽根が政治家として優れている点として、野党時代や不 -
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城山三郎の『落日燃ゆ』により「悲劇の宰相」として知られる広田弘毅について、歴史学的手法により、その実像を客観的に描いている。
広田は決して好戦的な外交官・政治家ではなかったが、軍部に抵抗する姿勢が弱く、部下の掌握もできず、ポピュリズムにも流されがちであったことがわかる。本書で描かれる広田からは外交官・政治家として「こうしたい」という強い意思が感じられなかった。東京裁判での死刑は重すぎたかもしれないが、戦争拡大において、やはり広田の責任は免れえないと思う。
本書で指摘されているが、外交に携わる者は、国家が重要な岐路に立つときほど、うつろうやすい世論やポピュリズムとは距離を保たなければならないと感 -
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1980年代の歴史教科書問題以降の歴史認識問題について、日本外交の視点から政策過程を分析している。「読者のために材料を整理して提供したい」という著者の言葉のとおり、中曽根内閣の靖国神社公式参拝問題や、従軍慰安婦問題、村山談話の発表など、歴史問題のトピックスについて、著者の私見は基本的に排され、その経緯が淡々と描かれている。歴史認識問題を考えるうえでの基礎文献であるといえる。
特に、村山談話の作成過程は非常に興味深かった。村山談話は官邸主導によるものとされてきたが、外務省も少なからず役割を果たしており、村山談話は対外政策として長期的な視野に立って作成されたものだったという。その後、歴代内閣に踏襲 -
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歴史認識問題の初期から現在までの流れを、外交関係に焦点を当ててまとめている。飽くまでも外交交渉がメインであり、国内の政治過程はオマケ程度。分かりやすい筆致で書かれているため、読みやすい。
歴史認識問題が顕在化してしまう要因としては、技術革新、経済発展などが考えられるが、現在は領土ナショナリズムが歴史認識問題と結び付けられてしまう最悪な状況である。領土的野心を中国が持っているため、それなりの対応をしなければならないから、タチが悪い。
歴史認識認識問題を打開するには、理性を持って双方ともに自制するのが必要であるが、そんなんできるの?というのが専らの感想。 -
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日韓関係、日中関係がもうずいぶん長い間こじれてしまっていますが、なぜこのようになってしまったのかについて、イデオロギー抜きで客観的に記述してくれているものはないのかと思っていたところ、新聞書評で今年1月に出版されたこの本が取り上げられていたので、早速読んでみることにしました。
歴史教科書問題、靖国神社公式参拝問題、従軍慰安婦問題、村山談話の経緯や日本の対応と韓国・中国の反応、近年の状況、これからの見通しと、必要な情報がコンパクトながらわかりやすくまとまっており、非常に勉強になりました。
これを読むと改めて、日本人の立場としては、これまでもかなり何度も「総理による公式な謝罪」は言っているし、歴史