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Posted by ブクログ
日本外交史、東アジア国際政治史の専門家が、日韓・日中間の歴史問題について、日本外交の視点からこれまでの政策過程を分析・提示している。
著者は、冒頭で「筆者が判断を下すというよりも、読者のために材料を整理して提供したい」と述べ、戦後の過程を以下のように説明している。
◆第二次大戦後、20余年をかけて、1965年の日韓国交正常化、1972年の日中国交正常化が成立し、1970年代は友好ムードが基調となっていた。
◆歴史問題が顕在化したのは、1982年に文部省が歴史教科書について「侵略」を「進出」に書き換えるよう求めたと報道されたことが発端で、これは誤報であったが、鈴木内閣の宮沢官房長官が、学校教育や教科書検定に際して、アジア近隣諸国に配慮するとの談話を発表した。それでも、中国の胡耀邦総書記と中曽根首相の信頼関係は強く、1984年国慶節は戦後日中関係最高のときと言われた。
◆1985年の中曽根首相の靖国神社公式参拝は、1978年のA級戦犯合祀後の大平、鈴木両首相の参拝にも抗議をしなかった中国、韓国から激しい反発に会い、1987年には胡耀邦総書記も失脚した。
◆1993年に宮沢内閣の河野官房長官が、従軍慰安婦の広義の強制性を認定した河野談話を発表。1995年には社会党の村山首相が、「植民地支配と侵略」に対する「痛切な反省」と「心からのお詫び」が含まれた村山談話を発表し、1990年代は歴史問題はほとんど表面化しなかった。また、村山談話は、「反省とお詫び」を表明しながらも、個人補償は行わないことを確認する、一時しのぎではない、長期的な視野に立ったものであった。
◆今世紀に入り、2001年と2005年に『新しい歴史教科書』が検定に合格し、小泉首相が2001年から2006年まで靖国神社に参拝したことによって、歴史問題が再浮上した。その後、安倍(第一次)、福田、麻生各内閣、民主党政権でも大きな改善は見られないまま、現在の安倍第二次内閣、習近平体制、朴槿恵政権となったが、現在も好転の兆しは見られない。
◆歴史問題が以前に増して混迷を深めている背景は、人権を前面に押し出す法体系が広まったこと、旧イデオロギーの崩壊過程でアイデンティティ希求が高まったこと、記憶を生のまま伝承するオーラルが大衆文化で主流となったこと、インターネットの発達で個人の権利が増大したことなどであるが、現在では特に領土問題と関連付けられることが大きな要因となっている。
そして、著者は「歴史問題は、「保守」対「反日」という二分法で解されるようである。・・・二分法は便利だが、不毛でもある。国を憂えることは、自国の歩みを問い直すことと矛盾するものではない。過去を顧みることは、関係国の一方的な主張に同化することとは異なる。・・・国の将来を真剣に考えればこそ、過去に学びながら未来を見据えるのは自然なことであろう」と結んでいる。
日韓、日中間で歴史問題がこれまでどのように扱われてきたか、戦後70年を経てなぜ今改めてクローズアップされているのかを理解、整理することができる。
(2015年2月了)
Posted by ブクログ
1980年代の歴史教科書問題以降の歴史認識問題について、日本外交の視点から政策過程を分析している。「読者のために材料を整理して提供したい」という著者の言葉のとおり、中曽根内閣の靖国神社公式参拝問題や、従軍慰安婦問題、村山談話の発表など、歴史問題のトピックスについて、著者の私見は基本的に排され、その経緯が淡々と描かれている。歴史認識問題を考えるうえでの基礎文献であるといえる。
特に、村山談話の作成過程は非常に興味深かった。村山談話は官邸主導によるものとされてきたが、外務省も少なからず役割を果たしており、村山談話は対外政策として長期的な視野に立って作成されたものだったという。その後、歴代内閣に踏襲され、「日本政治の共通言語」になってきたことを考えると、著者の指摘するように、村山談話は、「和解政策として完成度の高い談話」であったといえると思う。この村山談話と比較したときに、戦後70周年の安倍談話は果たしてどうだろうかと思う。
新書という分量の問題もあろうが、歴史認識問題の経緯について、本書だけではよくわからないことも少なからずあった。特に、近年、領土問題も絡んで、日中、日韓関係の緊張が80年代~90年代に比して高まっているのはなぜかということは今一つつかめなかった。本書は基本的に日本外交の観点から見た歴史認識問題なので、中国側、韓国側、それぞれの国内情勢も踏まえた観点から歴史認識問題を見ることも必要だろう。
Posted by ブクログ
歴史認識問題の初期から現在までの流れを、外交関係に焦点を当ててまとめている。飽くまでも外交交渉がメインであり、国内の政治過程はオマケ程度。分かりやすい筆致で書かれているため、読みやすい。
歴史認識問題が顕在化してしまう要因としては、技術革新、経済発展などが考えられるが、現在は領土ナショナリズムが歴史認識問題と結び付けられてしまう最悪な状況である。領土的野心を中国が持っているため、それなりの対応をしなければならないから、タチが悪い。
歴史認識認識問題を打開するには、理性を持って双方ともに自制するのが必要であるが、そんなんできるの?というのが専らの感想。
Posted by ブクログ
日韓関係、日中関係がもうずいぶん長い間こじれてしまっていますが、なぜこのようになってしまったのかについて、イデオロギー抜きで客観的に記述してくれているものはないのかと思っていたところ、新聞書評で今年1月に出版されたこの本が取り上げられていたので、早速読んでみることにしました。
歴史教科書問題、靖国神社公式参拝問題、従軍慰安婦問題、村山談話の経緯や日本の対応と韓国・中国の反応、近年の状況、これからの見通しと、必要な情報がコンパクトながらわかりやすくまとまっており、非常に勉強になりました。
これを読むと改めて、日本人の立場としては、これまでもかなり何度も「総理による公式な謝罪」は言っているし、歴史教科書の記述ではずいぶん譲っているし、従軍慰安婦への保障も法的に可能な範囲でできることはやってきているように思われるのですが、それがなかなか理解されていないのだなという印象を受けます。それらの対応を「自虐史観」として否定する言論が国内に現に有力にあって、それらも同時に伝わってしまっているためなのでしょう。
この本の結論にもありましたが、「相互理解」を双方の国民のコンセンサスとするのはとても一筋縄では行かず、まだまだ末永い辛抱強い努力が必要なようです。
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