服部龍二のレビュー一覧
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1945年の日本の敗戦は270万人とも310万人とも言われる膨大な日本人の死者をもたらした「失敗の歴史」であると思う。1930年代以降の日本の歴史の中のどこから過ちを犯したのかとの疑問を常々思っていたが、その答えを知る上で本書は高く評価出来ると思えた。
「広田弘毅」は、東京裁判で文民指導者として唯一絞首刑となった「悲劇の宰相」としてよく知られているが、歴史的人物としては2線級と言っては失礼だろうが現在一般的に、詳細に知られているとはいえないと思う。
しかし、本書で語られる「広田弘毅」の足跡は、激動の日本における主要人物として、重要な歴史の分岐を采配できる位置と立場にあったことがよくわかる -
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日中国交正常化を膨大な史料を基に、新書ながらドキュメンタリー風に描いた労作。
田中角栄首相、大平正芳外相の「大角コンビ」を中心にして、官僚と協力しながら国交正常化の道を拓いたことがよくわかる。
決断し責任を取って実行する田中、準備の周到さと思慮深い思考の大平。筆者はふたりをそれぞれ「決断実行型リーダーシップ」「熟慮調整型リーダーシップ」とし、優れた指導力を評価している。また知識を持ち下支えをした官僚たちの大切さも忘れない。「田中と大平の指導がなければ、いつ中国と国交正常化できたかわからない。二つのリーダーシップが共振して官僚たちを使いこなしたとき、ようやく国交は樹立されたのである」(p.217 -
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ネタバレ【54冊目】前々からちゃんと知りたいと思っていた日中国交正常化。その過程を追った本。歴史の今日的な意味・教訓を得ることに主眼を置いた構成となっており、かなり勉強になる。中国に関するニュースの見方が変わった。
メモ:日中米における台湾問題の重要性//ご迷惑スピーチ//自民党内の親中派と親台派の対立。何かを成そうとするとき、敵は外にだけいるわけではない。//田中首相と大平外相の役割分担。特に、田中の大平への任せっぷり。//日米関係を主軸とする日本外交←アメリカの影
本当に勉強になる良書!新書だから、「深く知りたい」「もっと知りたい」という欲求には応えられないという短所はあるけれど。
だけど、大体の -
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中央大学総合政策学部准教授・服部龍二による1930年代に首相・外相を務めた広田弘毅
の批判的評伝。
【構成】
序 章 二つの顔
第1章 青年期-福岡から霞ヶ関へ
第2章 中国と欧米の間-北京・ワシントン・モスクワ
第3章 外相就任と協和外交-対中国政策の理念と迷走
第4章 首相の10ヶ月半-陸軍との葛藤
第5章 「国民政府を対手とせず」-日中戦争初期の外相
第6章 帝国日本の瓦解-一重臣として
第7章 東京裁判-積極的な追随者の烙印
終 章 訣別
皆が皆ではないだろうが、本書を手に取るような人の多くは城山三郎の『落日燃ゆ』を読んだことがある人ではないだろうか?そして、小説の主人公である「 -
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ネタバレ[ 内容 ]
日露戦争後、職業外交官の道を歩み始め、欧米局長・駐ソ大使など要職を歴任した広田弘毅。
満州事変以降、混迷を深める一九三〇年代の日本で、外相・首相として、欧米との協調、中国との「提携」を模索する。
しかし、二・二六事件以降、高圧的な陸軍と妥協を重ね、また国民に広がる対中国強硬論に流され、泥沼の戦争への道を開いた。
東京裁判で唯一文官として死刑に処せられ、同情論が多い政治家・広田の実像に迫る。
[ 目次 ]
序章 二つの顔
第1章 青年期―福岡から霞ヶ関へ
第2章 中国と欧米の間―北京・ワシントン・モスクワ
第3章 外相就任と協和外交―対中国政策の理想と迷走
第4章 首相の一〇ヵ月 -
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戦時中の大平正芳は大蔵省の官僚だった
やや四角四面というか
目先の手柄よりも道理を優先するところがある
戦後、政治家に転身したものの
そういう性格が池田勇人や佐藤栄作に煙たがられ
出世レースで田中角栄に遅れを取った
その角栄に後押しされる形で上り詰めていったのだが
ロッキード事件の影響があって
傀儡の印象をも強めることになり
また総理になってからは慎重な言葉使いをマスコミにつつかれ
凡愚のイメージで揶揄されることが多かった
田中角栄の「日本列島改造論」を補完するものとして
「田園都市計画」を掲げたが
池田内閣からの流れで
インフレと歳入減に悩まされてたとはいえ
経済成長にブレーキをかけるような