生源寺眞一のレビュー一覧

  • 日本農業の真実

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    2011年の日本の農業についての現状報告と提言の書。著者は東大教授で、農政にも深く関わってきた人物である。

    TPPへの参加が検討されている現在、農業分野がネックになっていることは確かである。そのための食糧自給率の問題がカロリーベースであったり、減反政策や戸別保証などの政策から説明している。

    日本は歴史的に、1ha程度の農民が戦後たくさんできて、都市のサラリーマンと比べて所得が低いことなどや、兼業農家(労働時間が少ない)こと、大規模農家も10ha以上では効率が変わらないことも含めて、解説している。

    日本は、専業農家的なところと、機械化によるそれほど労働をしなくても大丈夫な兼業農家が混在し、農政が対応できなかったことが大きいと思われる。減反政策の反対で、村八分になるような家庭であったり、モンスーンアジア風土の農業について考えさせられた。

    今後の農業を考えるには必読の書だと思う。

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    2011年07月29日
  • 農学が世界を救う! 食料・生命・環境をめぐる科学の挑戦

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    「農学」という、いまいち何をしているのかイメージの湧かない学問の全体像を解説してくれる新書。

    「小さな大学」と形容されるほど幅の広い農学の輪郭を、①農業経済、②食糧科学、③生命科学、④環境科学の4つの側面から描き出す。

    各章では、著者の研究の紹介も交えながら農学の各分野の方法論や問題意識が紹介されている。
    具体的な研究内容については、特に生命科学あたりは文系の私にはやや難しかったものの、生物選択の理系高校生ならそれほど苦労なく読めそうな感じ。そして理論自体を理解できなくとも、各分野の農学の研究者が何を考え、何を目的とした研究をしているのかというイメージを形成するには充分な知見が得られたと思う。

    これ1冊で農学が大まかにわかる、というのは流石に言い過ぎだろうが、例えば農学に興味のある高校生が1冊目に手に取る本としては間違いなく最適解。
    こういう1冊目の本が用意されているだけで、農学徒は恵まれているなと思います。

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    2024年11月06日
  • 資本主義と倫理―分断社会をこえて

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     「分断社会を超えて」の副題に興味を惹かれて読んだが、「分断」のとらえ方が各論者ごとに違っているか、その定義がないので、全体として統一感がなかった。
     また、題名も「資本主義と倫理」となっているが、内容は経済学者が、経済学を好きなゆえに、経済学には限界もあって他の学問分野と協調して倫理も含めて再構築しないといけないけど、やっぱり経済学自体は有用だよね、という確認を遠回しにしてるだけな気もする。
     それでも、契約関係から信任関係へという岩井論文や、「幸福」に関して社会関係的資本の必要性を説く内田論文は、参考になった。

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    2022年05月19日
  • 農学が世界を救う! 食料・生命・環境をめぐる科学の挑戦

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    ●農学と一口に言っても、カバーする分野は生命科学や環境科学など多岐にわたる。本書では、サブタイトルにあるように、食料・生命・環境に焦点を当てて、農学とはどういったものかを解説している。

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    2019年05月22日
  • 日本農業の真実

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    ウルグアイ・ラウンド実質合意前夜から2010年民主党政権までの日本農政の歩みをトレースする。
    →農政の中の人が、官僚的玉虫色かつ二転三転の農政をそのまま素直にトレースしてくれるので、経緯こそ丁寧に分かるが少し取り付きにくい所がある。新書だし、もう少し見取り図的な解説が充実していてもいいのに。

    取り上げる政策は、コメの生産調整と「担い手」育成
    →「農協の大罪」では農地に焦点が当たっていたのが印象的だったが、こちらは人に焦点を当てる(農地の議論も出てくるが)。

    安全保障としては自給率もともかく、非常時の2000kcal/人・日の食料供給力が必要。これが危険水域に入っている。

    筆者は、「担い手」については大規模化・効率化も結構だが多様な(?)担い手を認めるべしとの立場か。たしか「農協の大罪」ではこきおろされていた集団営農にも肯定的。ハッキリしないと言えばハッキリしない。とにかく高齢化には危機感。

    戸別所得補償制度への評価
     結局、小規模農家には雀の涙で、選挙向けの看板と実態の使い分け(後で担い手作りの側面はほとんど消失と述べているがどっちなんだ?)。
     全国一律価格を基準にするのでやや競争促進的。

    減反が農村にもたらした亀裂
    4割休耕してもまだ生産過剰、そりゃ効率も悪くなる
    2004年から個々の農家が生産調整の参加/不参加を選択できる制度(減反参加農家には財政による収益補填)へ一歩踏み出す。
    2007年に元の一律減反へ戻る。農協・農林族の巻き返し。
    (財政による収益補填は、農家はOKでも、流通金額の低下を補わないので農協的にバツ)
    民主党政権で参加者メリット制にまた戻る。転作の切り離しも評価できる。
    ・・・今後、たとえ選択的な生産調整により供給数量がコントロールできても、特定品目への補助は需給双方から市場に織り込まれて、価格の低下から財政負担増につながるだろう。→生産調整からのexitが可能かも考えるべき。

    「活路を探る」
    思い切った農地集積も現実的でなさそう。著者の主張は、農地制度運用の第3者チェックなど、できる範囲でという感じ。
    著者は川下への進出というが、流通・外食なんてただでさえ過当競争の世界ですぜ。個別で見れば商品力を生かしてうまくやるところもあるだろうが、日本農業全体への処方箋たりえないと思う。
    集約的農業での高付加価値商品のように部分的には輸出もできるが、コメなんかは国際的に競争できないという立場のよう。→アジア諸国の成長で変わるかも知れんが、だいぶ先。
    最後に、EUがやっているくらいの農政のレベルはやんなきゃ、と。

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    2018年11月05日
  • 日本農業の真実

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    冒頭、TPPについて触れられていたので、TPPをどう考えるべきか勉強しておきたかった自分にとって、興味深かったのだが、結局直接それに対する結論は書かれていなかったように思う。それは残念だったが、先に読んだ「日本の農林水産業」とは別の論点を提示しており、面白かった。「日本の農林水産業」では、農地の集約化が最重要課題としていたが、本書では、集約による「コストダウンの効果が現れるのは10ヘクタール程度までの規模で」あると、具体的なサイズに言及していたのは説得力があった。また、「農業の規模については、アメリカの農場並みの規模に到達することで、日本の農業の競争力も飛躍的に向上するといった議論もある。…筆者は日本の社会にとって農村のコミュニティを引き継ぐことが大切だと考えており、広い農村にぽつんぽつんと大規模経営が散在するようなビジョンには賛成できない。」とも主張しており、農村のコミュニティとしての機能に注目しているあたりが、机上の空論ではなく、現実感があって、これまた説得力がある。

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    2021年08月08日
  • 日本農業の真実

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    ネタバレ

    歴史的な経緯を踏まえてファクトを知るのに良い本です。
    記憶に留めておきたいファクトを記しておきます。

    ・生産額自給率はカロリー自給率ほど低くない。
    ・80年代後半まで生産は拡大していた。
    ・畜産物・油脂類の消費拡大が自給率低下に繋がった。

    ・販売農家:農産物年間販売額50万円以上、又は農地面積30a以上
    ・生産物の出荷が皆無/少額の自給的農家が、総数約250万戸の36%。
    ・稲作農家総数約140万戸の73%が作付面積1ha未満。
    ・国内の稲作のコストダウン効果は10ha程度まで。

    ・最終消費された飲食費のうち農業水産業に帰属した価値は19%に過ぎない。

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    2015年11月29日
  • 日本農業の真実

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    日本の農業が抱える問題点を概観できる。10ヘクタールまでは作付面積を増やせば平均費用を減らすことができるにもかかわらず、販売水田農家の73%が1ヘクタール未満しかない。作付面積が3ヘクタール未満では、農業所得が農業外所得より低い。1時間あたりの農業収入が1000円を超えているのは、養豚、北海道の水田作と畑作のみ。これでは、農業の担い手が減り続けるのは当然だろう。

    米の価格と流通は2004年に自由化されたが、生産調整は40年間も続いている。食料確保のための政策は必要だが、生産者の創意工夫を活かし、意欲を高めることができる政策への足取りが遅い。政治が機能していないというか、選挙対策や政権争いによって混乱させられている。2007年の参院選の大敗を受けて、自民党の農林族議員は、米価を維持するために備蓄制度を利用することを主導した。これによって、生産調整に参加する農家より参加しない農家の方が有利という不公平な状況になった。

    この本を読んで改めて感じたのは、農業の問題を考えると、農政だけでなく政治そのものの問題まで考えなければならないということ。うんざりしてしまう。

    ・農産物全体の生産量を示すラスパイレス指数は、1980年代後半までは上昇していた。人口はほぼ同じペースで増加しているので、食料自給率が低下し続けているのは、1人当たりの消費量が増えたため。1990年代以降は生産量も減少している。
    ・1955〜2005年の50年間に、肉類は9倍、牛乳・乳製品は7.6倍、果実は3.5倍、魚介類は1.3倍に増加し、米は0.55倍、イモ類は0.45倍に減少した。
    ・1960〜2009年に、養豚農家は100分の1以下になったが、1経営あたり頭数は600倍になった。酪農農家は20分の1近くになったが、1経営あたり頭数は30倍に増えている。
    ・1時間あたりの農業収入が1000円を超えているのは、養豚、北海道の水田作と畑作のみ。
    ・食料供給力を確保することを目的に、カロリー供給力が最大となる農業生産を行った場合の試算結果は、イモ類を増やして畜産物などを減らす場合に、1日1人当たり1890〜2030カロリーとなる。
    ・2007〜08年の食料価格高騰の中で、最大時には12か国が米や小麦の輸出を禁止した。
    ・自給的農家を除く水田作農家の作付け面積は、73%が1ヘクタール未満で、0.5ヘクタール未満は42%。作付面積が3ヘクタール未満では、農業所得が農業外所得より低い。
    ・稲の作付け面積と平均費用との関係を調べると、生産量あたりの費用が低下するのは10ヘクタールまで。
    ・米の消費量は1962年をピークに減少し始め、1967〜68年に連続豊作となって在庫が積みあがったため、1969年から生産調整が始まった。現在は、水田の4割に当たる100万ヘクタール以上が生産調整の対象となっている。
    ・1980年代末には自主流通米が全体の5割を超え、ヤミ米も消費量の2割以上に達した。1995年に食糧法を施行して食管法を廃止し、政府が管理する米は備蓄米とミニマムアクセス米のみとなった。2004年に食糧法を改正して、米の流通と価格を完全自由化した。生産調整は、減反面積の配分から米の生産目標の配分に変更し、産地ごとの目標に対して消費者の需要を反映させた。道府県で4ヘクタール以上、北海道で10ヘクタール以上の経営者に対して、米価が下落した場合の補填措置を手厚くした。

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    2018年10月31日
  • 日本農業の真実

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    日本農業の現状を再確認するための本。食料自給率など不安にさせるようよう誘導させる解釈が多い中、この本はかなりフラットな視点から語られていたと思う。今まで農業は大きく保護され、消費者重視ではなく生産者重視であった。農家の自助力をこれから大きく鍛えていくことがかなりの命題となってくるはずである。

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    2013年04月01日
  • 日本農業の真実

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    ネタバレ

    作付面積が大きくなるにしたがい費用は低下していくものの、一部の例外を除いて、日本でコストダウン効果が出てくるのは、現時点では10ヘクタールまで。規模の拡大に伴う圃場の遠距離化と田植の可能な期間が20日間と短いことから、人手と作業機械に大きな制約があるためだ。したがって、価格という点で米国とは大きな差が生じているのが現実。また、高齢化、低年収など、担い手問題は喫緊の課題となっている。加えて農政が未来へのビジョンもないまま迷走逆走を繰り返しており農業経営者の不安を募らせている。他方、日本の農産物の輸出額は輸入額の10分の1に過ぎないが、それでも年々増加している。しかも輸出先は今後も発展が期待されるアジアの国々。日本の農業の強さと弱さを見極めたうえで、正しく現実を認識し、最善の手立てを講じることが、今後の農業・農政に求められている。主張に偏りがなく自然に素直に読めた。また、日本の農業と農政の歩みを振り返る中で、ガットウルグアイラウンドなんて言葉も出てきたが、当時、迷走農政に翻弄され右往左往していたことなども懐かしく思い起こした。

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    2012年06月25日
  • 日本農業の真実

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    TPPが話題になり農業界に興味が。どちらかに結論を出すというよりは、現在置かれている日本農業界の実態を丁寧に語っていくという姿勢で好印象でした。使われている資料も数字を詳しく見せてくれるので紳士的。総じて説得力のある内容でした。

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    2012年07月01日
  • 日本農業の真実

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    174 9/8-10/5
    農業は難しい。長年の政策の失敗は日本の農業を停滞させてきたと思ってはいたが、進歩している部分もあってホッとしている。
    がんばれ!農家たち!

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    2011年10月05日
  • 日本農業の真実

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    日本の農と食の直面している現実を、戦後の、特に過去10数年の農政の歩みを中心に冷静に分析している。食料自給率、高齢化が進む中での農業の担い手問題、コメの生産調整の重く暗い歴史とこれから…。日本の農業の抱える課題は山積みで特効薬はないけれど、混迷する農政のあり方を正し、透明性のある直接支払い型の農業支援、生産物の付加価値を高め生産者が下流の価格形成にも関与する取り組みなどを示している。

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    2011年06月03日