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俗世を離れた山中の寺、人とともに生きる市井の寺。すべてが融け込む西国の旅へ。ここには聖なる高野山があり、「黄泉の国」と呼ばれる熊野がある。1400年の時を超え、庶民に愛される四天王寺がある――。安珍と清姫の道成寺、花と星の観心寺、西行ゆかりの弘川寺。すべての名刹で紡がれてきた「物語」を感じよう。
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Posted by ブクログ
本巻に限らず、シリーズ全体を通じていえることですが、「民間信仰」に対する著者の敬意のこもった目線が印象的です。
第六巻では、和歌山・大阪・兵庫など関西の寺がとりあげられています。 高野山をおとずれた著者は、空海がこの地に道場を開く前から、山岳信仰の聖地であったことに注目し、仏教が在来の神と融和し、それをとり込みながら信仰のかたちがつくられてきたことに触れています。これまでも著者がさまざまな機会に語ってきた、...続きを読む日本の仏教に見られる「寛容」さですが、空海という人物には、たしかにさまざまな信仰のありかたを包み込んで総合するような広さを感じます。 また融通念仏宗の総本山である大念仏寺では、開祖である了忍の像を、すばらしい美声で声明をとなえるシンガーにたとえるなど、著者らしい表現が見られて、おもしろく読みました。
文春文庫の浅田次郎が選んだ短編集に「見上げれば 星は天に満ちて」というのがあって、そこに載っている井上靖の「補陀落渡海記」はかつて和歌山県の補陀落山寺で行われていた観音菩薩信仰の一つの儀式をモチーフにした物語で、とてもインパクトがあるお話だった。 百寺巡礼の旅は四たび関西に戻って、熊野は青岸渡寺の項...続きを読むに補陀落山寺も登場し、しばしそこに描かれた高僧の心の葛藤を思い起こす。 しかし同じ関西とは言っても高野山から熊野から、京都や奈良へもよう行かん身にはとても遠いよねぇ。 相変わらず四方八方に広がる話。道成寺の名は聞いててもそれ以上は知らない安珍・清姫の絵解きの楽しみ。 鶴林寺の太子像の凛々しさに驚き、そこかしこに顔を出す役行者の大らかさに癒される。 大念佛寺や四天王寺の懐の深さにはさすが大阪というところを感じ、西国三十三所の観音様が勢揃いする粉河寺や四国八十八箇所のお砂を集めた観心寺に至ってはサービス精神もここまでと微笑ましく。
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