Posted by ブクログ
2020年04月18日
実在の人物を主人公にした、著者の数少ない本格歴史小説。
高杉晋作は通称で、諱(本名)は春風だとは、この著で知った。春疾風(はるはやて)の別名が春風なら、疾風迅雷に時代を駆け抜けた晋作にふさわしい名か。
尊攘派の長州藩を征討しようとする幕府軍に対する回天の戦いは、晋作の人生でのクライマックスである。
...続きを読むその行動に駆り立てた要因は、師吉田松陰の影響とともに、上海での見聞だろう(上海での晋作たちの冒険的活劇は読みどころのひとつ)。
欧米列強の植民地化に抗した太平天国軍が敗れ去ったことに焦燥の念を抱き、日本という国家を守るための軍勢を思案する。そして、封建制度の身分を撤廃して編み出されたのが、彼の代名詞ともいえる奇兵隊。
最前線で長州を、日本を救う活躍をした晋作は、長州藩世子定広ほか様々な人物に敬愛される。
さらに、彼を慕う女性が次々と。
長州一の美人との誉れが高い妻の雅、八雲、うの、望東尼、太平天国の周美玲まで。
世の難事を救うため、天から遣わされた剣鎧護法童子のような晋作。辞世の句「おもしろきこともなき世をおもしろく」の通りの、28年の濃密な生涯だった。
高杉晋作を主人公にした作品には、池宮彰一郎の歴史長編小説『高杉晋作』もあり、読み返してみようか。